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第1章
第2話
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「いっ、」
さほど高くないところから落ちたようで、尻を強打し後頭部にも痛みがはしる。一瞬目の前が白くなった気がしたが、意識がはっきりするのを待ってから状況を把握する。
(なんだ、ここは)
辺りを見渡してみると、どうやら森の中にいるようだ。とりあえず立ち上がり人気を探してみるが、いるのは鳥と蝶ばかり。まして、それ以外の生き物がいるどころか、短く生えた緑の草と葉の生い茂った木々が、目の前に永遠と広がっているだけだ。
それでも森の外に出ようとしばらく歩いてみたが、景色が変わる気配は全くなかった。
しかし、静かだった森の中に、突然多くの足音が遠くから聞こえ始めた。ここで見つかってもろくなことがないと思った俺は、近くの茂みに身を潜め、音の正体が現れるのをじっと待った。
「必ずこの森にいるはずだ!見逃すな、よく探せ!」
(なにかを探しにきたのか?こんな辺鄙な森に…?)
森の奥まですっと響くような声が聞こえるともに、轟く馬の足音と騎士が多くこちらに向かってくるのが目視できる。通りすぎると思っていたそれらは、運が悪いのかただの偶然なのかか、俺の隠れている茂みの前で止まった。
「黒髪の青年だ!必ず見つけろ。それから丁重に扱え!」
「はっ!」
一番がたいが良く、煌びやかな鎧を身に纏った人間が、20人ほどの部下たちへ指示を出している。
指揮をとっているそいつをよく見るとその額には汗が滲んでおり、呼吸もわずかに不規則なようだ。大分焦っているように見える。俺は俺で久しぶりの緊張感を感じており、手汗の滲んだ右手を閉じたり開いたりして見つめた。
(日本、じゃないんだろうな…)
多分あいつはかなり動くことに慣れている。腰に長剣を携えているのも、飾りではないんだろう。今ここで動けば気配などすぐに知れてしまう。いくら俺でも、あんな奴を相手にできるかは、もう少し動きを見なければ把握できない。
騎士たちは森の奥へそれぞれ進んでいき、四方に散らばり指示通り黒髪の青年とやらを探している。
奴も同じように探し始めるのかと思えば、未だに馬から降りずにどこかをずっと見つめている。というか、明らかに俺の方を。
(気づいているのか…?)
ただ俺のいる茂みの葉を見つめているように見えるが、本当は気づかれているんだろう。それでもこちらに寄ってこないのは、……油断させようとしているわけか。
なんだとしても、俺は待つのがかなり嫌いだ。
はっ、と息をついたと同時に騎士たちが来た方向へ駆け出す。後ろを振り替えると誰も着いてきていないようだ。このまま体力の続く限り走っていれば、捕まらずに森を抜けられるだろうか。
しかし、そんな考えは一瞬で散った。
「っ、」
「黒髪の青年、大人しくしていれば傷つけはしない」
先ほど見た長剣が俺の首にあてがわれている。深く息をしてしまえば喉の皮膚は切れるだろう。自然と浅い呼吸を何度も繰り返す。
「はっ、誰がっ!」
肩は捕まれてはいたが拘束されていたわけではない。足を後ろに振り上げ、服の内側に忍び込ませてあった短剣を素早く持ち構えた。俺の動きを避けた反動で、俺を追ってきた奴が被っていたフードがはらりと落ち、燃えるような紅色の髪と………獣の耳が現れた。
「動きが良いな。お前、名前は」
「こんなところで名乗ると思うか?俺を見逃せ」
「残念だが、それは叶えられない願いだな。こっちにも事情があるんだ」
(調子狂う奴だな……)
余裕そうに口角を上げる奴の顔に腹が立ち、短剣を握り直した。しかし奴は、顎に手を当てて少し考える素振りをしたあと、剣を腰に戻し、こちらにゆっくり歩いてくる。
「俺のところに来い。匿ってやる」
「はぁ?お前俺を捕まえに来たんだろう」
「あとで話す。とりあえず連れていってから……」
「どうやって信じろと」
奴が一歩踏み出すので、俺は一歩後ろに下がる。
「仕方ないな」
そういって、奴は俺の前で片膝をついた。
「俺の名はアルゼオ・ルイゼンベルガ、聖衛騎士団第十三部隊長だ。我が王に誓い、お前に傷をつけないと約束しよう」
胸に拳をあてて名乗った奴は、その緋色の瞳と違わぬ真実を語っていた。
さほど高くないところから落ちたようで、尻を強打し後頭部にも痛みがはしる。一瞬目の前が白くなった気がしたが、意識がはっきりするのを待ってから状況を把握する。
(なんだ、ここは)
辺りを見渡してみると、どうやら森の中にいるようだ。とりあえず立ち上がり人気を探してみるが、いるのは鳥と蝶ばかり。まして、それ以外の生き物がいるどころか、短く生えた緑の草と葉の生い茂った木々が、目の前に永遠と広がっているだけだ。
それでも森の外に出ようとしばらく歩いてみたが、景色が変わる気配は全くなかった。
しかし、静かだった森の中に、突然多くの足音が遠くから聞こえ始めた。ここで見つかってもろくなことがないと思った俺は、近くの茂みに身を潜め、音の正体が現れるのをじっと待った。
「必ずこの森にいるはずだ!見逃すな、よく探せ!」
(なにかを探しにきたのか?こんな辺鄙な森に…?)
森の奥まですっと響くような声が聞こえるともに、轟く馬の足音と騎士が多くこちらに向かってくるのが目視できる。通りすぎると思っていたそれらは、運が悪いのかただの偶然なのかか、俺の隠れている茂みの前で止まった。
「黒髪の青年だ!必ず見つけろ。それから丁重に扱え!」
「はっ!」
一番がたいが良く、煌びやかな鎧を身に纏った人間が、20人ほどの部下たちへ指示を出している。
指揮をとっているそいつをよく見るとその額には汗が滲んでおり、呼吸もわずかに不規則なようだ。大分焦っているように見える。俺は俺で久しぶりの緊張感を感じており、手汗の滲んだ右手を閉じたり開いたりして見つめた。
(日本、じゃないんだろうな…)
多分あいつはかなり動くことに慣れている。腰に長剣を携えているのも、飾りではないんだろう。今ここで動けば気配などすぐに知れてしまう。いくら俺でも、あんな奴を相手にできるかは、もう少し動きを見なければ把握できない。
騎士たちは森の奥へそれぞれ進んでいき、四方に散らばり指示通り黒髪の青年とやらを探している。
奴も同じように探し始めるのかと思えば、未だに馬から降りずにどこかをずっと見つめている。というか、明らかに俺の方を。
(気づいているのか…?)
ただ俺のいる茂みの葉を見つめているように見えるが、本当は気づかれているんだろう。それでもこちらに寄ってこないのは、……油断させようとしているわけか。
なんだとしても、俺は待つのがかなり嫌いだ。
はっ、と息をついたと同時に騎士たちが来た方向へ駆け出す。後ろを振り替えると誰も着いてきていないようだ。このまま体力の続く限り走っていれば、捕まらずに森を抜けられるだろうか。
しかし、そんな考えは一瞬で散った。
「っ、」
「黒髪の青年、大人しくしていれば傷つけはしない」
先ほど見た長剣が俺の首にあてがわれている。深く息をしてしまえば喉の皮膚は切れるだろう。自然と浅い呼吸を何度も繰り返す。
「はっ、誰がっ!」
肩は捕まれてはいたが拘束されていたわけではない。足を後ろに振り上げ、服の内側に忍び込ませてあった短剣を素早く持ち構えた。俺の動きを避けた反動で、俺を追ってきた奴が被っていたフードがはらりと落ち、燃えるような紅色の髪と………獣の耳が現れた。
「動きが良いな。お前、名前は」
「こんなところで名乗ると思うか?俺を見逃せ」
「残念だが、それは叶えられない願いだな。こっちにも事情があるんだ」
(調子狂う奴だな……)
余裕そうに口角を上げる奴の顔に腹が立ち、短剣を握り直した。しかし奴は、顎に手を当てて少し考える素振りをしたあと、剣を腰に戻し、こちらにゆっくり歩いてくる。
「俺のところに来い。匿ってやる」
「はぁ?お前俺を捕まえに来たんだろう」
「あとで話す。とりあえず連れていってから……」
「どうやって信じろと」
奴が一歩踏み出すので、俺は一歩後ろに下がる。
「仕方ないな」
そういって、奴は俺の前で片膝をついた。
「俺の名はアルゼオ・ルイゼンベルガ、聖衛騎士団第十三部隊長だ。我が王に誓い、お前に傷をつけないと約束しよう」
胸に拳をあてて名乗った奴は、その緋色の瞳と違わぬ真実を語っていた。
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