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第2章
第29話
しおりを挟む温室には、鉢に植えられている小さな木や、果実の生っている背の高い木まで鮮やかに咲き並んでいる。どれも葉は緑に色づいて、室内の温度もほんのり暖かく、居心地のよい場所だと感じた。
「どうかな。ここは僕が手入れをしている温室なんだ。奥に料理を用意させているから、ゆっくり見てくれていいよ」
「確かにいいと思う」
なるほど。植物もこうしてじっくりと見てみると悪いものではない。以前は花も景色も嗜む暇がなかった。だが、こうして余裕をもっていられるのは、案外いいものだな。
「ここだよ、さあ座って。食べながらでも話はできるよね」
3人で使うのにも広すぎる白いテーブルに向い合わせで座る。俺たちから離れたところには黒い服で全身を整えた男が立っているのが、少々気になる。それと、こういった空間に似合わないようで落ち着かない。今の服装もそうだが、マナーなんてここ何年と意識したことがない。
皿の横に添えてあるナイフとフォークを握る。不格好かもしれないが、溢すことなく食べられている。2・3口すら時間をかけて口に運んでいるが、男はなかなか切り出さない。男の向こうに見える花をじっと見つめたまま、たまにマナーを気にしながら料理を食べる手は止めない。アルゼオは何を思っているだろうかと横目で見るが、いつもの眉間に皺がよっている表情が動くことはなく、結局俺はいつ始まるかわからない話にらしくもなく緊張していた。
そして、とうとう運ばれてきた料理のすべてを食べ終わった。俺よりも量が多かったはずの2人の皿はとっくに空になっていた。口元をナプキンで拭い、ひとつ息を吐いて落ち着かせる。
「それで、君はアルゼオのなんなのかな?」
突然向けられた一文を理解するのに、数秒では足りなかった。
「なぜそんなことを?俺はアルゼオにとってなんでもない。もちろん、俺にとっても」
「あっはは!そうなのかい?……それは、実におもしろいね」
それまで落ち着いた物腰の紳士のようだった男からは想像もつかぬ高笑いをした。まるで信じていた者に裏切られでもしたかのような感覚だ。
「素敵だよ。だけどその回答では、僕には少しばかり物足りないかな」
「なんの話だっ、」
俺が質問をするのも許さないように、言い切る前に小刀が飛んでくる。
(どこからだ…?)
方向がわからない。この数ヶ月の鍛練で衰えてはいないはずだ。ただ、今のナイフは確実に俺を狙っていた。
「君には見えないかな?さっきのナイフは魔法によって動かしているんだ」
「おい!アオハになんてものを向けるんだ!」
アルゼオは今日で一番激怒している。もともと機嫌が悪いこともあったが、一気に頭に血が昇ったようだ。それは俺にも向けられたことがない表情である。その顔を見て最後、ナイフの数が増え次々と飛んでくるため、アルゼオに意識を向ける余裕はなくなった。
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