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突然ですが、王子だったそうです
馬車と白金宮
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「うっ…ん~…」
心地の良い振動と馬の鳴き声で彼は目が覚めた。寝起きで霞かかった視界には、キラキラと輝く室内と、目の前で笑顔を浮かべながら外を眺める優男が映っていた。首を少し動かすと窓があり、窓の外には主婦たちが買い物をしているのが見えた。人の量から、そうとう大通りのようだ。太陽は、森を出た時よりも高くにあったことから、店を出て三十分以上経過しているものと思えわれる。
景色はゆったりと流れていき、ここから飛び降りてもらかすり傷ですみそうなくらいだ。
(行けるか?)
そう思ったが、目の前の優男の腰には、長剣があった事と、手持ちに武器がないことを思い出し、大人しくしているしかないと判断した。
(せめて、短剣でもあれば…)
「あ、起きたんだね。初めまして、えーと…ニーラ。」
先程まで、外を眺めていた優男はラモールに気が付くと、金色の瞳を薄めて笑いかけてきた。誘拐遭遇+寝起きのため、ラモールは未だに自分の置かれている状況が理解できないでいた。
「えーと…まず、ここはどこだ。あと、貴方は誰なんだ?目的は?俺をどこれて行くつもりだ。」
「ちょ、落ち着こう…まず、ボクはシラコニス。シーラと呼んで。で、ここは、王宮に続くモルキアーナだよ。何で連れて来たかは…まあ、目的地に着いたらゆっくり説明するよ。あ、君に危害を加えるつもりは無いから安心して。」
シーラと名乗る優男は、癖のない短く整えられた黒髪とシミ一つない白い肌、少し耐え目気味の金の瞳は優し気に細められている。彼から出される雰囲気は、どことなくラモール自身によく似ていた。
「あ、起きたんだ。」
御者台に座っていたフードが後ろを振り向きながら話しかけてきた。よく見ると、路地裏で出会ったフードの人物と同一人物であることに気が付いた。
「良かったよ。なかなか起きないから、薬の量を間違えたのかと思ったよ。」
「そのときは、僕の失敗として父上に僕が殺されていたよ。」
「ご安心をシーラ様。こいつは、そう簡単に死ぬような人間ではないですからね。」
どうやら、眠る前にかがされたのは睡眠導入剤だったようだ。そして、それを調合したのがフードの人物だってらしい。
「お前は、誰だ?」
「ノースだよ。今はね♪」
「今は?昔があったのかよ。」
「うん、あったよ。まあ、昔の話は後でするよ。さあ、ラモール。すぐに目的地に着くよ。」
馬車から前を確認すると、段々と大きな建物が近づいて来た。建物は白く、所々金色の飾りが太陽の光を受けて輝いていた。人はこの建物をその見た目と輝きから『白金宮』と呼んでいた。その白金宮は、
「目的地って、王宮かよ…」
この国の国王が住む王宮である。三人を乗せた馬車は、この大通りの突き当りにある王宮の門の前で止まった。ノースが門番と話をし、すぐに門が開いた。さらに進み王宮の目の前で馬車は完全に停車した。
「ラモール、目的地に到着だよ。ようこそ、白金宮へ。今から、ネモフィラント様とレモレント様に会いに行くよ。」
「ネモフィラントとレモレントって…」
「ネモフィラント・ルーズ・アン・ウェント国王陛下とレモレント・グロキニシア・アル・ウェント王妃殿下だよ。」
「両陛下かよ?!」
ネモフィラント・ルーズ・アン・ウェントと言えば、言わずも知れたこの国の王である。大陸内では貿易王とも呼ばれ、愛妻家としても有名な人でもある。そして、彼の妻で『紅の女神』とも呼ばれる白魔導士、レモレント・グロキニシア・アル・ウェント。今から、そんな国のトップに会いに行くと告げられれば、驚かない方がおかしい。
「さあ、行くよ。お二人とも君に会えるのを楽しみにしてるんだから。」
ラモールはノースに手を引かれるまま、(強制的に)王宮の扉をくぐった。
心地の良い振動と馬の鳴き声で彼は目が覚めた。寝起きで霞かかった視界には、キラキラと輝く室内と、目の前で笑顔を浮かべながら外を眺める優男が映っていた。首を少し動かすと窓があり、窓の外には主婦たちが買い物をしているのが見えた。人の量から、そうとう大通りのようだ。太陽は、森を出た時よりも高くにあったことから、店を出て三十分以上経過しているものと思えわれる。
景色はゆったりと流れていき、ここから飛び降りてもらかすり傷ですみそうなくらいだ。
(行けるか?)
そう思ったが、目の前の優男の腰には、長剣があった事と、手持ちに武器がないことを思い出し、大人しくしているしかないと判断した。
(せめて、短剣でもあれば…)
「あ、起きたんだね。初めまして、えーと…ニーラ。」
先程まで、外を眺めていた優男はラモールに気が付くと、金色の瞳を薄めて笑いかけてきた。誘拐遭遇+寝起きのため、ラモールは未だに自分の置かれている状況が理解できないでいた。
「えーと…まず、ここはどこだ。あと、貴方は誰なんだ?目的は?俺をどこれて行くつもりだ。」
「ちょ、落ち着こう…まず、ボクはシラコニス。シーラと呼んで。で、ここは、王宮に続くモルキアーナだよ。何で連れて来たかは…まあ、目的地に着いたらゆっくり説明するよ。あ、君に危害を加えるつもりは無いから安心して。」
シーラと名乗る優男は、癖のない短く整えられた黒髪とシミ一つない白い肌、少し耐え目気味の金の瞳は優し気に細められている。彼から出される雰囲気は、どことなくラモール自身によく似ていた。
「あ、起きたんだ。」
御者台に座っていたフードが後ろを振り向きながら話しかけてきた。よく見ると、路地裏で出会ったフードの人物と同一人物であることに気が付いた。
「良かったよ。なかなか起きないから、薬の量を間違えたのかと思ったよ。」
「そのときは、僕の失敗として父上に僕が殺されていたよ。」
「ご安心をシーラ様。こいつは、そう簡単に死ぬような人間ではないですからね。」
どうやら、眠る前にかがされたのは睡眠導入剤だったようだ。そして、それを調合したのがフードの人物だってらしい。
「お前は、誰だ?」
「ノースだよ。今はね♪」
「今は?昔があったのかよ。」
「うん、あったよ。まあ、昔の話は後でするよ。さあ、ラモール。すぐに目的地に着くよ。」
馬車から前を確認すると、段々と大きな建物が近づいて来た。建物は白く、所々金色の飾りが太陽の光を受けて輝いていた。人はこの建物をその見た目と輝きから『白金宮』と呼んでいた。その白金宮は、
「目的地って、王宮かよ…」
この国の国王が住む王宮である。三人を乗せた馬車は、この大通りの突き当りにある王宮の門の前で止まった。ノースが門番と話をし、すぐに門が開いた。さらに進み王宮の目の前で馬車は完全に停車した。
「ラモール、目的地に到着だよ。ようこそ、白金宮へ。今から、ネモフィラント様とレモレント様に会いに行くよ。」
「ネモフィラントとレモレントって…」
「ネモフィラント・ルーズ・アン・ウェント国王陛下とレモレント・グロキニシア・アル・ウェント王妃殿下だよ。」
「両陛下かよ?!」
ネモフィラント・ルーズ・アン・ウェントと言えば、言わずも知れたこの国の王である。大陸内では貿易王とも呼ばれ、愛妻家としても有名な人でもある。そして、彼の妻で『紅の女神』とも呼ばれる白魔導士、レモレント・グロキニシア・アル・ウェント。今から、そんな国のトップに会いに行くと告げられれば、驚かない方がおかしい。
「さあ、行くよ。お二人とも君に会えるのを楽しみにしてるんだから。」
ラモールはノースに手を引かれるまま、(強制的に)王宮の扉をくぐった。
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