16 / 16
第二章「王宮での生活は不安だらけです」
笑顔は辛い…
しおりを挟む
正午。鐘の音を合図に、王宮の門から楽器を持った鼓笛隊が愉快な音楽を奏でながら出て来た。鼓笛隊は、赤と黒の制服に同じ配色の帽子を被っていた。
その後ろには王族直属の騎士団が団服を身に着けて登場してきた。彼等は、鼓笛隊の音楽に合わせて、己の剣で剣舞を披露した。
その次に登場したのは国の魔法師団だった。火炎魔法を応用した色とりどりな花火を打ち上げたり、水魔法と重力魔法を使い大小さまざまな水球を宙に浮かすなど、様々な魔法でパレードを彩った。これだけで上がりようを見せた。
魔法師団に続いて出て来たのは屋根のないタイプの白い馬車だった。黒いビオラを扉に描かれたその馬車には、フィラを初めとして王妃レモン、王太子シーラ、王女クロメイカ、側近ノース。そして、今回の主役、ニーラが乗っていた。王族は皆、笑顔を浮かべていた。ニーラ以外。そニーラの隣に座っていたオルコがその事に気が付き、周りにばれないようにこっそり声を掛けた。
「ちょ、ニコライト殿下。もう少し笑って下さいよ…」
「いや…笑ってるつもりなんだが…。」
そう言うが、周りから見ればただの無表情にしか見えない。王宮に来た日の方が笑っていた気がする。
「いや、全然笑ってないから。ほら、シーラ殿下を見習ってよね。」
そう言って目の前で観衆に向けて笑顔で手を振っているシーラを見た。シーラはさわやか笑顔をあたりに振りまいていた。生まれ持っての顔面偏差値の高い顔に加えて、さわやかな笑顔。そんな彼を見た年頃の女性たちは顔を赤らめていた。
「…俺に花飛ばせと?」
「うん。出来るよね?」
ニコリと笑ったオルコだが、その後ろには黒い霧が発生していた。ラモールはそれと同時に周辺温度が五度くらい下がったような気がした。
「善処する…」
そう言って、精一杯の笑顔を浮かべた。その様子に満足したのか、オルコの後ろに発生していた黒い霧も、謎の寒気もなくなった。
「こんなんでいいのか?」
「もう少し笑った完璧。」
(もう表情筋が辛いんだが…)
そんなラモールの心情を知らずに、パレードは進んでいく。
その後ろには王族直属の騎士団が団服を身に着けて登場してきた。彼等は、鼓笛隊の音楽に合わせて、己の剣で剣舞を披露した。
その次に登場したのは国の魔法師団だった。火炎魔法を応用した色とりどりな花火を打ち上げたり、水魔法と重力魔法を使い大小さまざまな水球を宙に浮かすなど、様々な魔法でパレードを彩った。これだけで上がりようを見せた。
魔法師団に続いて出て来たのは屋根のないタイプの白い馬車だった。黒いビオラを扉に描かれたその馬車には、フィラを初めとして王妃レモン、王太子シーラ、王女クロメイカ、側近ノース。そして、今回の主役、ニーラが乗っていた。王族は皆、笑顔を浮かべていた。ニーラ以外。そニーラの隣に座っていたオルコがその事に気が付き、周りにばれないようにこっそり声を掛けた。
「ちょ、ニコライト殿下。もう少し笑って下さいよ…」
「いや…笑ってるつもりなんだが…。」
そう言うが、周りから見ればただの無表情にしか見えない。王宮に来た日の方が笑っていた気がする。
「いや、全然笑ってないから。ほら、シーラ殿下を見習ってよね。」
そう言って目の前で観衆に向けて笑顔で手を振っているシーラを見た。シーラはさわやか笑顔をあたりに振りまいていた。生まれ持っての顔面偏差値の高い顔に加えて、さわやかな笑顔。そんな彼を見た年頃の女性たちは顔を赤らめていた。
「…俺に花飛ばせと?」
「うん。出来るよね?」
ニコリと笑ったオルコだが、その後ろには黒い霧が発生していた。ラモールはそれと同時に周辺温度が五度くらい下がったような気がした。
「善処する…」
そう言って、精一杯の笑顔を浮かべた。その様子に満足したのか、オルコの後ろに発生していた黒い霧も、謎の寒気もなくなった。
「こんなんでいいのか?」
「もう少し笑った完璧。」
(もう表情筋が辛いんだが…)
そんなラモールの心情を知らずに、パレードは進んでいく。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
悪役令嬢、休職致します
碧井 汐桜香
ファンタジー
そのキツい目つきと高飛車な言動から悪役令嬢として中傷されるサーシャ・ツンドール公爵令嬢。王太子殿下の婚約者候補として、他の婚約者候補の妨害をするように父に言われて、実行しているのも一因だろう。
しかし、ある日突然身体が動かなくなり、母のいる領地で療養することに。
作中、主人公が精神を病む描写があります。ご注意ください。
作品内に登場する医療行為や病気、治療などは創作です。作者は医療従事者ではありません。実際の症状や治療に関する判断は、必ず医師など専門家にご相談ください。
悪役令嬢の父は売られた喧嘩は徹底的に買うことにした
まるまる⭐️
ファンタジー
【第5回ファンタジーカップにおきまして痛快大逆転賞を頂戴いたしました。応援頂き、本当にありがとうございました】「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は、今、この場を持って破棄する!!」
王立学園の卒業生達を祝うための祝賀パーティー。娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いたワシは、公衆の面前で王太子に婚約破棄される愛する娘の姿を見て愕然とした。
大事な娘を守ろうと飛び出したワシは、王太子と対峙するうちに、この婚約破棄の裏に隠れた黒幕の存在に気が付く。
おのれ。ワシの可愛いアルテミスちゃんの今までの血の滲む様な努力を台無しにしおって……。
ワシの怒りに火がついた。
ところが反撃しようとその黒幕を探るうち、その奥には陰謀と更なる黒幕の存在が……。
乗り掛かった船。ここでやめては男が廃る。売られた喧嘩は徹底的に買おうではないか!!
※※ ファンタジーカップ、折角のお祭りです。遅ればせながら参加してみます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
久しぶりに読み返しました!
続きが楽しみです!
無理のない程度でこれからも頑張ってください!!!
誤字訂正です。
×王紀→○王妃
主人公は、自分の命を諦めてたんですかね?
少なくとも、誘拐された時点で周囲は『敵』ですよね?
たとえ、王族に誘拐されても『敵』が王族だっただけで
設定は、凄く面白いですが……
出来れば、逃げるか逆襲するチャンスを狙ってる描写が欲しいです
少なくとも、わざわざ説明を後回しにしている第一王子は殴りたいと思うんですが……
主人公としては、後回しにされる意味がわからないでしょうし
感想、ありがとうございます。面白いと言っていただき嬉しかったです。
どちらかというと、主人公君は空気に流されてしまうタイプですからね。それに、ここで騒いでは、物語が進む気がしなかったので…
でも、確かに言われてみると、落ち着き過ぎですね。少々、修正しておきます。
それに、ちゃんとフードの人物に対する罰も用意してありますよ!何もしないのは、ただのお人好しですからね。