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記憶
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「私!今日この学校に転校してきたの!よろしく!」
7月…暑い静まり返った教室の中、この女は名乗りもせず笑顔でそういったのだ。
何となく分かる“関わっちゃマズいタイプ”だと・・・
担任もどことなく啞然としている、そりゃそうだ高校生なら名前ぐらい名乗るだろう普通。
「え、えー・・・福岡から転校してきた七瀬詩音さんだ、皆よろしくな。席は・・・」
担任が周囲を見渡す
まずい、都合よく俺の横の席が空いている!?
「よし、鈴木の隣が空いているな、そこに座ってくれるか。」
終わった・・・
七瀬とやらは指示を受けると小走りに俺の隣にやってくる。
「鈴木君っていうの?よろしくね!」
何なんだその満面の笑みは・・・こいつには緊張とかないんか!?
その時の俺には「あぁ・・・よろしく」と小声で返すのが精一杯。
クラスメイト達の視線も突き刺さる。
それからホームルームも終わり、俺はトイレに立った。
「おい、あの子めちゃくちゃ可愛いじゃん」
横並びの立ち小便器でそう声をかけてきたのは友達の陽斗だ
「顔だけな、中身は相当ぶっ飛んでるぞ、ホームルーム中あの女ずっと何かを口ずさみながらペン回しをしてたんだぜ?」
「でもお前・・・隣ってことは所謂世話役だろ?あんな可愛い子、最高じゃねえかよ!」
世話役?おいおい勘弁してくれ・・・
そして用を足し俺が席に戻ると、何故か七瀬と机がくっついていた。
その七瀬は相変わらず楽しそうにしている。
「俊輔君!私教科書ないからさ?一緒に授業しよ?」
なんだこいつもう名前呼び!?
「俺の名前・・・なんで・・・?」
「え?そんなのほら、これ見たらすぐだよ」
机の上にはカバンからいつの間にか取り出された教科書の数々。
こいつ、勝手に人のカバンを!?
ため息が出る、こいつ本当にヤバい奴なんじゃないか?
なんとか距離を・・・そう思うもぴたりと七瀬は身体を寄せてくる。
そしてどうにもできぬまま、授業は静かに始まる。
ノートに黒板に記述されたことをしっかりと書いている
授業はちゃんと受けるのか?よく分からん奴だ。
待て、なんで俺はこんな奴に振り回されている?らしくないじゃないか。
動揺するな、いつも通りに授業を受ければいいだけだ。
“わたしのこと わすれちゃった?”
こっそりと差し出された小さな紙にはそう書かれていた。
忘れちゃった?俺はお前のことなど知らない。
“忘れたも何も、俺は君を知らない”
だから俺も渡された手紙の上にこう書いて答えたんだ。
七瀬は手紙をやめ悲しそうな声で小さく「そっか」とだけ言って黙った。
それから先、七海は俺を避けるようになった。
気づけばこいつのことを考えながら昼休みになっていた。
パンをかじりながら空いた空席を見て考える。
俺に非があるのか?ふざけるな俺は七瀬なんて名前の奴本当に・・・
ん?待てこいつの下の名前は詩音とかいったか・・・?
気が付けば俺は走り出していた。
いや、そんな筈はない、だって俺が知っているしおんは・・・
「クソ、転校してきたばかりのクセにどこまで行ったんだ!?」
校内を走り回る、でも見当たらない。
立ち止まり、どことなく廊下の窓の外を見た。
見当たらない、いない、あいつは・・・どこに!?
その時、突然視界が消失した
両目に温かさを感じる、人の手のようだ
「誰を探してるの?そんなに慌ててどうしたの?鈴木君。」
間違いない、七瀬・・・いや、詩音だ。
「あぁ・・・探していたんだ、やっと思い出せた女の子を。」
「へぇ・・・どんな子なの?」
「昔、まだ小さい頃、小学生ぐらいだったか。公園でよく一緒に遊んでいたんだ。名前は確か胡桃沢詩音って言ったっけ。すごく元気でかわいい子だった。あの頃はまだ背も低くて勝手に下級生だと思ってたんだよな。学校も違ってたから公園でしか会えない子だった。でも俺はその子のことが好きだった、何となく胡桃沢も俺のことを好いていてくれたように思う。だからいつも公園に来ては探してた。でもそれも長くは続かなくていつしか公園のことも胡桃沢のことも忘れて気が付けば高校生になってた・・・。」
耳元で七瀬は小さく囁く
「それで?」
「ただでさえ持ってる情報も記憶も薄いのに
名字まで変わってたら思い出せねえって・・・
最初からそう言えよな。胡桃沢・・・いや・・・“詩音“」
視界が開き、パッと世界が明るくなる。
ぼやける視界には涙ぐむ詩音の姿が映る。
「遅いよ!」
そういった途端、詩音は俺に抱きついた
「ずっと、ずっと会いたかった」
公園での幼い記憶が鮮明に蘇る
「いつか“けっこん”してくれる?」
「うん!もちろん!しーちゃんとけっこんする!」
「うん、俺も会いたかった・・・帰って来てくれてありがとう詩音。」
こうして一つの片思いは両想いへと変貌を遂げ二人の物語はここから始まるーーー
7月…暑い静まり返った教室の中、この女は名乗りもせず笑顔でそういったのだ。
何となく分かる“関わっちゃマズいタイプ”だと・・・
担任もどことなく啞然としている、そりゃそうだ高校生なら名前ぐらい名乗るだろう普通。
「え、えー・・・福岡から転校してきた七瀬詩音さんだ、皆よろしくな。席は・・・」
担任が周囲を見渡す
まずい、都合よく俺の横の席が空いている!?
「よし、鈴木の隣が空いているな、そこに座ってくれるか。」
終わった・・・
七瀬とやらは指示を受けると小走りに俺の隣にやってくる。
「鈴木君っていうの?よろしくね!」
何なんだその満面の笑みは・・・こいつには緊張とかないんか!?
その時の俺には「あぁ・・・よろしく」と小声で返すのが精一杯。
クラスメイト達の視線も突き刺さる。
それからホームルームも終わり、俺はトイレに立った。
「おい、あの子めちゃくちゃ可愛いじゃん」
横並びの立ち小便器でそう声をかけてきたのは友達の陽斗だ
「顔だけな、中身は相当ぶっ飛んでるぞ、ホームルーム中あの女ずっと何かを口ずさみながらペン回しをしてたんだぜ?」
「でもお前・・・隣ってことは所謂世話役だろ?あんな可愛い子、最高じゃねえかよ!」
世話役?おいおい勘弁してくれ・・・
そして用を足し俺が席に戻ると、何故か七瀬と机がくっついていた。
その七瀬は相変わらず楽しそうにしている。
「俊輔君!私教科書ないからさ?一緒に授業しよ?」
なんだこいつもう名前呼び!?
「俺の名前・・・なんで・・・?」
「え?そんなのほら、これ見たらすぐだよ」
机の上にはカバンからいつの間にか取り出された教科書の数々。
こいつ、勝手に人のカバンを!?
ため息が出る、こいつ本当にヤバい奴なんじゃないか?
なんとか距離を・・・そう思うもぴたりと七瀬は身体を寄せてくる。
そしてどうにもできぬまま、授業は静かに始まる。
ノートに黒板に記述されたことをしっかりと書いている
授業はちゃんと受けるのか?よく分からん奴だ。
待て、なんで俺はこんな奴に振り回されている?らしくないじゃないか。
動揺するな、いつも通りに授業を受ければいいだけだ。
“わたしのこと わすれちゃった?”
こっそりと差し出された小さな紙にはそう書かれていた。
忘れちゃった?俺はお前のことなど知らない。
“忘れたも何も、俺は君を知らない”
だから俺も渡された手紙の上にこう書いて答えたんだ。
七瀬は手紙をやめ悲しそうな声で小さく「そっか」とだけ言って黙った。
それから先、七海は俺を避けるようになった。
気づけばこいつのことを考えながら昼休みになっていた。
パンをかじりながら空いた空席を見て考える。
俺に非があるのか?ふざけるな俺は七瀬なんて名前の奴本当に・・・
ん?待てこいつの下の名前は詩音とかいったか・・・?
気が付けば俺は走り出していた。
いや、そんな筈はない、だって俺が知っているしおんは・・・
「クソ、転校してきたばかりのクセにどこまで行ったんだ!?」
校内を走り回る、でも見当たらない。
立ち止まり、どことなく廊下の窓の外を見た。
見当たらない、いない、あいつは・・・どこに!?
その時、突然視界が消失した
両目に温かさを感じる、人の手のようだ
「誰を探してるの?そんなに慌ててどうしたの?鈴木君。」
間違いない、七瀬・・・いや、詩音だ。
「あぁ・・・探していたんだ、やっと思い出せた女の子を。」
「へぇ・・・どんな子なの?」
「昔、まだ小さい頃、小学生ぐらいだったか。公園でよく一緒に遊んでいたんだ。名前は確か胡桃沢詩音って言ったっけ。すごく元気でかわいい子だった。あの頃はまだ背も低くて勝手に下級生だと思ってたんだよな。学校も違ってたから公園でしか会えない子だった。でも俺はその子のことが好きだった、何となく胡桃沢も俺のことを好いていてくれたように思う。だからいつも公園に来ては探してた。でもそれも長くは続かなくていつしか公園のことも胡桃沢のことも忘れて気が付けば高校生になってた・・・。」
耳元で七瀬は小さく囁く
「それで?」
「ただでさえ持ってる情報も記憶も薄いのに
名字まで変わってたら思い出せねえって・・・
最初からそう言えよな。胡桃沢・・・いや・・・“詩音“」
視界が開き、パッと世界が明るくなる。
ぼやける視界には涙ぐむ詩音の姿が映る。
「遅いよ!」
そういった途端、詩音は俺に抱きついた
「ずっと、ずっと会いたかった」
公園での幼い記憶が鮮明に蘇る
「いつか“けっこん”してくれる?」
「うん!もちろん!しーちゃんとけっこんする!」
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