魔族転身 ~俺は人間だけど救世主になったので魔王とその娘を救います! 鑑定・剥奪・リメイクの3つのスキルで!~

とら猫の尻尾

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第一幕 2場 別離と決意

第16話 魔剣覚醒!

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 さあ、想像するんだ。世界でただ一つ、俺だけの魔剣。生涯をかけてそれを使いこなすことが目標となるほどの、唯一無二の魔剣ユーマの姿を!

 俺が瞑想に入ろうとしたとき、鎖が地面を這う音がした。
 それらはまるで蛇のように、人間の兵士のすき間を縫うように近づいてくる。
 そして、アリシアの足に絡みついた。

「くっ、何なのこれはぁー!?」

 空中にジャンプしていたバラチンの足にも絡みつき地面に叩き付けられる。
 更に何本もの鎖が迫って来ている。

 アリシアにも分からないこの術は――『召喚されし者』の仕業。
 この部隊にはミュータスさんの他にもまだいたのか!
 そいつはこの戦場のどこかで鎖を操っているのだ。

 鎖が俺の顔に向かって飛んできた。
 駄目だ、避けられない!

「させないよぉぉぉー!」

 アリシアが鎖を引き摺りながら剣で弾き飛ばした。

「バラチン、ユーマを守りなさい! 他の者もユーマを守りなさい!」
「くっ、世話の焼けるくそ人間ですなっ!」

 バラチンは足に絡んだ鎖を指先から吹き出した炎で溶かし、その炎に敵の兵士が怯んだ隙に近寄ってきた。

「バラチン、あなたは魔法を使いすぎると身体が……」
「他に手段がありますかな?」

 アリシアの足に絡みつく鎖をバラチンは指の先から吹き出す炎で溶かした。

「他の者は自分の身を守るので精一杯ゆえに、この場は我が輩にお任せあれ。これはお嬢様の命令なればこその判断ゆえ、キサマはそこで震えてうずくまっておるがいい!」 
「す、すまないバラチン」
「キサマに名を呼ばれると虫ずが走るワイ!」

 そう言ってバラチンは俺を一睨みし、次々に迫り来る鎖を焼きっていく。
 アリシアは鎖を避けながら兵士を斬っていく。

 俺は――

 彼らに命を預け、瞑想に入る。

 俺だけの魔剣――魔剣ユーマのその姿を――

「ユーマ、じゅんびかんりょー」

 肩に乗るハリィの体が青白く光輝いた。

「【リメイク】! 魔剣ユーマ、我が手に降臨せよ!」
 
 星の光を飲み込む黒い雲が空を覆いつくし、雷鳴が轟く。
 稲妻が俺らの体に直撃し、その衝撃波はアリシアとバラチンを巻き添えにして周りの兵士もろとも吹き飛んでいく。



 俺の手には、聖剣ミュータスとは色違い、漆黒の魔剣が握られていた。




 草原の草がめくりあがり、地面がむき出しになった空間、半径10メートルの円の中に俺一人が立っている。手には俺の背丈よりも長い漆黒の魔剣。皆の視線は俺一点に集まっている。 

 全方向から鎖の音が迫ってくる。
 それらは横たわる兵士の死体を飛び越え、呆然と立ち尽くす兵士の足元をすり抜け、幾重にも重なって這ってくる。

「ユーマぁぁぁ――……!!」

 アリシアの声が聞こえた。バラチンと視線が合う。少し離れたところからカルバス、そして別の黒装束の魔人とエレファンの姿も確認した。皆無事のようだ。

 俺は魔剣を握る手に力を入れる。
 
 無数の鎖は地面を這い、宙を舞い、天上から降り注ぐ。

『ユーマ、えらぶー』

 視界に浮かび上がる白い文字。
 10個の技名が洪水のようになだれ込んできた。

 魔剣ユーマを水平に構える。

「秘技、『天地抜刀・回転乱れ斬り』ィィィ――――!!」

 四方八方から迫り来る鎖を身体ごと回転しながら乱れ斬りしていく。
 足元には切られた鎖の破片が山を築いていく。

 最後の一本を斬り、俺は息を整え周囲を観察する。
 この戦場のどこかに『召喚されし者』がいる。

 どこだ? 

「アリシア! 馬車の中だ。敵の大将はそこに隠れている!」

 そう、この敵は卑怯な奴だ。
 勇者仲間であるミュータスさんに斥候に行かせて自分は本陣に居残る。
 遠隔攻撃の能力ちからが有りながら、奴は近接攻撃のみのミュータスさんを向かわせた。
 その結果、能力ちからを失った彼を、爪弾きにしていたのだ。
 だからミュータスさんたちは離れた場所で焚き火をしていた。

 許せない!

 阻む兵士達に斬り付けながら、アリシアたちが馬車の中を一つ一つ調べていく。
 今だ姿を見せない敵の大将は、鎖を地面に這わせて彼らを追っていくが、魔剣の一振りで切り裂いていく。人間側の兵士は魔剣の威力を恐れて俺には近づかない。

「ここにいましたゾウ――ぐわっ!」

 エレファンが太くて短い腕を振り、敵将の場所を知らせてきた。
 しかし、すぐに彼の身体に鎖が巻き付いてしまう。

「そこかぁぁぁ――――ッ!!」

 俺は魔剣を右手一本で持ち、馬車へ向かって走り寄る。
 右手は魔剣の重さに負けて、先端が地面に触れ、地面は大きくめくりあがっていく。
   
 エレファンに巻き付いた鎖を魔剣の一振りで切り裂き、エレファンはその場に倒れた。すぐに黒装束の魔人が駆けつけ、周りの兵士を牽制する。

 馬車の幌を魔剣で切り裂くと、中から真っ赤な鎧を着た敵将が姿を現した。
 立派な口ひげを生やした中年の男は、俺に向かって手の平を向けてきた。
 すると、5本の指の先端から鎖が現れ、向かってきた。

「おりゃあぁぁぁ――――ッ!!」
  
 その鎖を魔剣でクロス斬りして、敵将の間合いに飛び込む。

「な、何者じゃ貴様はぁぁぁー!? その能力ちからは貴様も『召喚されし者』、ワシらの仲間ではないのかぁぁぁー!?」

「俺は……あなたの仲間にはならない。絶対に……」

「このクソガキが、死ねぇぇぇー!」

 敵将は黄ばんだ歯をむき出しにして右手を突き出した。
 無駄だ。
 もうお前のその能力ちからは俺が【剥奪】している。

 何度も何度も無駄な動きを繰り返す敵将の頭上に魔剣を振り上げ――

 振り下ろした。

「お前らの大将は俺が討ち取った! この期に及んでまだ戦いたい奴はかかってこい! 1人残らず殲滅してやるぞぉぉぉ――!!」

 俺は――

 魔剣を右手で振り上げて叫んだ。

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