魔族転身 ~俺は人間だけど救世主になったので魔王とその娘を救います! 鑑定・剥奪・リメイクの3つのスキルで!~

とら猫の尻尾

文字の大きさ
19 / 56
第二幕 3場 魔王城の仲間たち

第19話 増えたベッド

しおりを挟む
 始めは皆に嘘をついていることを気にしていたアリシアも、次第に堂々とした振る舞いで皆に笑顔を振りまくようになっていった。そんな彼女の変わり様を見て俺は少し胸が痛む。でもこれも俺と皆の平和の為なのだと自分を納得させた。

 アリシアとの『婚姻の儀』も無事に終わり、一般の兵士や城内で働く魔人たちからの祝福の嵐が過ぎ去ったころにはすっかり暗くなっていた。俺たちは一先ず分かれてそれぞれの部屋に戻ることにしたのだが――

 先ほどのベッドしかなかったはずの殺風景な部屋に入ると、色とりどりの花が飾られ、アンティーク調の家具が所狭しと並べられていた。そして、ベッドが1台増えていた。

「な、何でベッドが2台に……?」

 すると背後から――

「ユーマ様とアリシアお嬢様の――愛の巣――でございますが?」
「ユーマちゃま、ごけっこんおめでとうござましゅです!」

 獣耳メイドのウォルフとフォクスが返答した。 

 通路からドタドタと足音が近づいてきて、ドアがバーンと開く。

「あぁぁぁ――ッ! やっばりぃぃぃ――!?」

 アリシアが部屋に飛び込んで来るなり騒ぎ立てる。

「アリシアお嬢様、この度はご結婚おめでとうございます」
「おめでとうございまちゅです!」

 アリシアの狼狽ぶりとは対照的な獣耳メイドの2人が深々と頭を下げる。

「ちょとあなたたち、どうしてアタシの部屋の家具が全部こっちに来ちゃっているわけ? こんな指示出した覚えはないんですけどぉぉぉー!?」

 アリシアはぶんぶん手を上下に振りながら抗議している。頬を赤く染めてはにかんだ様な表情に見えるが、これが彼女の怒り顔なんだろう。

「どうしてと言われましてもお二人は結婚なさったんですよね?」
「――うっ、ま、まあ……そう……なんだけどね?」

 アリシアは両手の指を絡ませてもじもじしている。
 そしてちらっと俺に視線を送ってきた。

「ならば、今夜は大切な『お初夜』でございますよ?」
「おしょーやでごぢゃいますです!」
「ふにゃ――ッ」

 アリシアは聞いたこともないような異音を発し、顔が破裂するのではと心配するほどに真っ赤になって固まった。
   
「私達魔族の未来のために立派なお世継ぎを産んでくださいね?」
「産んでくだちゃいませです!」

「ち、違うの! じつは――――うぷッ!?」

 アリシアが余計なことを言い始めたことを察知した俺は、慌てて背後から彼女の口を覆った。
 そして耳元で――

「この2人に俺らが偽装結婚であることを打ち明けても大丈夫なのか? もし長老会にバレたらすべての計画は台無しになるけれど……この2人は信用しても良いのだろうか?」

 するとアリシアは首を振った。
 危ないところだった。寸前のところで情報漏洩を阻止できたようだ。
 俺がホッと胸をなで下ろしていると――

「あらあら、ユーマ様ったら夜までお待ちになれないということでしょうか。せめて私どもが出て行くまでお待ちになってくださらないと……」
「お待ちくだちゃいですの!」
「…………えっ?」

 獣耳メイドの2人が僕らを見てニヤニヤ笑っている。

 何か誤解している? 確かに見ようによってはいわゆる若い男女が後ろから『だーれだ?』をしているようにも見えるかもしれないけど……俺が押さえているのは目ではなくて口だ。

 アリシアもそんな誤解を受けたことに腹が立ったのか、ぷるぷる震えだしたぞ?
 僕は危険を察して、すぐに手を離したのだが間に合わなかった――

 彼女はその場で斜め後ろにジャンプして、頭の角が俺のあごに命中!
 2歩離れた直後に、強烈な回し蹴りが俺の側頭部に命中!
 俺の体は吹っ飛んでアンティーク調の家具を押し倒していった。

「あわわっ、アタシの鏡台がぁぁぁ、チェストがぁぁぁー!」

 ふと我に返った様子のアリシアは、壊れた家具の破片を手でつなぎ合わせるような動作をしながら涙目になっているけど。彼女の中では、俺の序列は家具以下ということになっているらしい。


 *****

 おしゃれな白い丸テーブルに白い皿。その両脇にはナイフとフォークが並べられている。アリシアはすまし顔でアンティーク調の木の椅子に腰をかけ、俺はその対面に座った。

「本日は季節の野菜スープにビバビバのステーキでございます」

 獣耳メイドのウォルフとフォクスが食事をワゴンに乗せて入ってきた。
 まず、フォクスが『んー、よいしょ』とか言いながら皿の上にパンを乗せた。
 焦げ茶色の長細いパンは、木の実のような物が練り込まれていて良い香り。
 その間にウォルフが慣れた手つきで熱々のスープを深皿に取り分けた。
 最後に、金属製のドームカバーを被せられたメインディッシュがテーブルに乗せられた。

「では、どうぞお召し上がり下さい」

 ウォルフがアリシアの、フォクスが俺のドームカバーを外す。
 ふわっと湯気が立ち、厚切りのステーキが華やかにテーブルを飾った。

 ビバビバと言えば、この先の湖に生息するビーバー型の魔獣だ。昨日は散々俺の足に食らいついてきたけれど、今夜は俺が食べる側に回っている。正に弱肉強食の世界。それにしても……この二日間で本当に色んなことを経験したな……よく生き残ってこれたな。我ながら感心するよ。

 スープは野菜の出汁がよく利いていておいしい。さすがは魔族の王お抱えの料理番という感じだな。

 では、次にビバビバのステーキ。ナイフを入れると、少し筋があって硬い部分があるけれど、硬い肉は農民出身の俺にとっては返ってかみ応えがあって良いぐらいだ。茶色いソースをたっぷりつけて、まずは一口……

「……旨い!」

 思わず口から出た一言。
 うん、これは旨いぞ。噛めば噛むほど、ジューシーな肉汁が口の中に溢れて、辛めのソースと混じり合って絶妙なハーモニーを楽しめる。
 あの凶暴なビバビバが、こんなにも優しい味わいだったとは!

 俺が夢中でステーキをぱくついていると、ふと皆の視線が集まっていることに気付いた。

「……?」

 フォクスに関してはただニコニコと俺を見ていただけのようだが、ウォルフは驚いたような顔をしている。正面のアリシアに至っては、目を見開いて口を半開きにしたまま固まっていた。

「……ユーマ、ビバビバの肉が美味しいの?」
「もちろん、旨いけど……アリシアの口には合わないのか?」
「いいえ、ビバビバの肉はアタシの大好物よ……」
「そうか。俺たち好物が似ているのかな?」

 アリシアは口を半開きのまま再び固まった。
 そしてイスから立ち上がって、テーブルに両手をついた姿勢で――

「ユーマ、あなた本当に人間なのかしら?」

 突然そんなことを言い始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...