魔族転身 ~俺は人間だけど救世主になったので魔王とその娘を救います! 鑑定・剥奪・リメイクの3つのスキルで!~

とら猫の尻尾

文字の大きさ
42 / 56
第三幕 7場 カルール村の長い夜

第42話 カルール村

しおりを挟む
 カルール村は草原を農地に開拓した農村だ。
 広大な農地に家が点々と建てられている。
 
 村の中心部には教会の他、商売を営む家もある。
 それらのほとんどは村人の生活を支える程度の小さな店である。
 幼馴染みのマーレイの実家の薬屋もその一つた。

 俺は2階の窓を見上げながら馬車を進めていく。
 よく学校帰りに立ち寄ったマーレイの部屋にはもう誰も住んではいない。
 赤いトタン屋根の薬屋。
 これが見納めだと思うと……
 なんだか感傷的な気分になってきた。

『ユーマ、昔の女に未練たらたらー』

「う、うるさい! 未練なんかないぞ!」

 ハリィは俺の首にぶら下がっている間は俺の感情を共有している。

「ん!? なあにユーマ? 未練って……なあに?」

 隣のアリシアが不思議そうに訊いてきた。
 俺はさっき、うっかり声に出していたのか?
 アリシアにどう説明しようかと悩んでいると――

「あれ? ユーマじゃないか!?」
「あっ、本当だ! あいつ馬車になんか乗りやがって」
「おーい、ユーマー!」

 3人連れの男達に声をかけられてしまった。
 奴らは学校の同級生。
 俺のことを何かと理由をつけて馬鹿にしてきた連中だ。

「ねえユーマ……あの人間たち、あなたの知り合いじゃないの?」

「ああ、そうだ」

「じゃあ……なんで馬のスピードを上げているのかしら?」

「これが人間社会の礼儀なんだよ!」

 俺はそんな珍回答をアリシアに返したのだが――

「おい、馬を止めろ!」
「おまえ村を出てどこをほっつき歩いていたんだよ!」
「その隣にいる美人な女は誰なんだー!? くそったれーッ」

 3人が全力で追いかけてきた。
 お前ら随分暇なんだな。
 俺のことはほっといてくれよ。
 俺はもう魔族の一員になったんだから!

「ハーッ!」

 馬に渇を入れ、全力で奴らを振り切った。
 でこぼこ道で御者台がガタガタと揺れる。
 アリシアは俺の隣で、すこぶる機嫌が良さそうに跳ねていた。


  
「あれが俺の家だ。小さいだろう?」

 畑と果樹園の中にぽつんと建つ木造の家。
 父さんと母さんが若い頃に、この地に辿り着き、二人で建てた小さな家。
 20年経った今では傷みが激しくすき間だらけになっている。

「何と言うか……趣のある住み家でござるな……」
「あの小屋に皆で泊まるのですか?」
「や、野営みたいでフォクスは……嫌ではないですよ?」

 後ろの連中は微妙に失礼な感じで騒いでいる。
 一方、アリシアは何だか緊張した表情になっている。
 ごくりと生唾を飲み込んでいる。

「アリシア、俺の母さんはただの人間だから、緊張しなくても大丈夫だぞ?」
「あっ……アタシが緊張しているように見えた?」
「見えた」
「そ、そう……おっかしいわねー、あはははは……」

 何かを誤魔化すように髪の毛を整え始めた。
 すかさずフォクスがブラシを手渡した。
 アリシアの左胸には木製のブローチが揺れている。
 
 家のそばの立木に馬を留め、久しぶりの我が家の扉を開く。

「母さん、ただいま!」

 台所で薬の調合作業をしていた母さんが振り向く。
 驚きのあまり、すり鉢とすり棒が床に落下した。

「ユーマ……!!」

 母さんは駆け寄り、俺を抱きしめた。
 俺は仲間達の視線を気にして、ちょっと照れくさく思った。

「良く帰ってきたね。今までどこに――」

 その瞬間、母さんは俺の体を離して首元に手の平を向けた。

「そのまま、そのままじっとしているんだよッ!」

 母さんは強い口調で俺に向かって言った。
 そんなに険しい表情を初めて見た。

「ユーマに何をしているの!? 出て行きなさい!」

 母さんの手の平から緑色の光が放たれる。
 俺の首元――ハリィに向かって。

「うわー、びっくりしたー」

 ハリィは擬態を解いて、テーブルの上に飛び降りた。

「ユーマは私の息子よ! あんたたちには指一本触れさせないんだからッ!」

 そう言って俺を庇うように前に立ちはだかり、母さんは両手を広げた。
 緑色の髪はゆらりと空中に広がる。
 ナベや調理器具がカタカタと音を立てて振動し始める。
 
 何がどうなっているんだぁぁぁ?
 状況が何一つ掴めない俺は混乱していた。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...