僕の光、私の音

十六夜ノ月

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聴いてよ 2

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「っう、あ、…ぐすっ」

光が絶えず涙を流していると、
カーペットと靴下の擦れる音が聞こえた。

そして近くに紫音の匂い。

紫音は光を抱きしめて言った。
「あ、い、…おー…うあ、ああ、いえ…」

光には、それがはっきりと
「大丈夫、泣かないで」と聞こえた。





少し涙を含んだ紫音の声に、光は嬉しそうに微笑んで
「ありがとう、紫音」
と言った。



そして紫音の前でピアノを弾いた。

彼女には聴こえないだろうけど、想いだけでも。
そう思いながら演奏した。





紫音は静かに涙を流していた。
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