レベルが上がらない転生者は、魔法学校を卒業出来ない

lablabo

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第13話 破壊の女神

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 フェアリナが魔法をぶっぱなした後、ものすごい轟音と共に、白い教室の壁が破壊された。その壁に風穴を空けたのは、彼女の土属性魔法で、それはカナデとアマネの頬を掠めるように、いくつもの土の柱となって壁に突き刺さっていった。彼女にとっては、きっと落ちている小石を軽く投げるくらいの感覚だったのかもしれない。その程度の力加減だったはずなのに、カナデは冷や汗どころか、額に脂汗を浮かべてしまっていた。

「ちょっ、フェアリナ。僕らを殺す気か?」

「あう……」

 流石に悪いと思ったのか、フェアリナは申し訳なさそうに俯く。彼女が攻撃魔法を使えば、こうなることは何となくわかっていた。そして彼女の魔法値の高さを考えても、子供の遊び程度で済むはずがなかった。きっと彼女が本気を出せば、核兵器が使用されたレベルで、世界が崩壊するのかもしれない。

「ねえ、ここ魔法障壁張ってあったんだよー? 何でそれを貫くわけ? ねえ、お姉さんに教えてくれないかなー?」

 教官のアマネは顔を真っ青にしている。教室の壁が、ドーナッツのように繰り抜かれ、粉々に破壊されたこの惨状は、とても現実とは思えないものだろう。ましてや、自らが殺されかけたのだから。

「しっかし、フェアリナ。お前の魔法は本当に味方に向かってくるんだな。まるでブーメランみたいだ」

「うん……一体何でだろうね、エヘヘッ」

 唇を噛み締め、困った表情をしているフェアリナ。悪気があってのことではなく、彼女自身も悩み苦しんでいることのようだ。

 ――彼女にも悩みがあったのか。

 脳内お花畑タイプで、思うままに自由に生き、悩みなど一切なさそうだった彼女。しかし、今そんな彼女がカナデの前で、悲しげな表情を浮かべている。そんな彼女らしくない姿を、カナデは見たくはなかった。

「じゃあ、フェアリナ。世界平和のためにも、いつかその呪いを解かないといけないな。このままだと、学校でアイドルになるどころか、世界を滅ぼした女で有名になってしまうからな」

 フェアリナは目を細めながら、何度もウンウンと頷いてくれた。よっぽど嬉しかったのだろう。フェアリナは壊した壁のことも忘れて、またフフフンと鼻歌を歌い始めた。

「カナデ君、私ね。そのせいで天界でも、駄目ダメな駄女神って呼ばれていて、小さい頃からずっと悩んできたんだよ。みんな私の魔法がおかしいからって、指をさして、駄女神って馬鹿にするの。もう酷いと思わない?」

「いや……」

 ――絶対にそのせいだけではないですから!

 心当たりがないというのは罪である。まあ、彼女らしくはあるのだれども。

「何があった?」

 音に気づいたのだろう。赤い教官服を着た若い男性が1人、慌てたように教室に駆けつけてきた。

 ――やばい。

 壁に開いた穴をみれば、フェアリナがしてしまったことがばれてしまうだろう。そうなれば、彼女の魔法の才能も見破られ、カナデは彼女を守ることが出来なくなるかもしれない。

「いえ、ちょっと属性魔法が反発し合っただけなので、大丈夫ですー。すぐに私が魔法で修復します」

 そう、アマネは何事もなかったかのように、男性教官に微笑みかける。

「そうか、くれぐれも魔法の反発だけには気をつけるように」

 そう言って、男はあっさり、再び元いた通路の方に戻っていった。胸を撫で下ろすカナデ。フェアリナの壁破壊で、大事にならなくて良かった。

 ――って……。

「壁を直せるんですか?」

「そうそうー、私レベルの高等魔法使いになると、結構簡単に修復出来るんだよー、すごいでしょー?」

 金髪ツインテールを揺らし、アマネはさも自慢げに語る。

 ――それはすごい。

 この世界の建物の被害は、魔法で修復できるのか。もちろん魔法で破壊したものに限定されるなのかもしれないが、それでもこの世界に来て、カナデは魔法技術の素晴しさと便利さに、感心させられっぱなしだった。

「アマネ先生。もしかして、壁が破壊されるのは、よくあることなんですか?」

「うん、壁を壊したのは、別にリナちゃんが初めてってわけじゃないんだよー? やっぱりいるのよー、この世界にも化け物レベルの術者がねー」

 化け物レベルとは、どれくらい凄いのだろう。カナデはそれに興味が出てきた。

「そうなんですね。じゃあ、もしかして、この学校にもいるんですか? その化け物レベルの先生や生徒が」

「うん。優秀すぎて今日は来てないけど、今度紹介してあげるねー」

 ――優秀すぎて学校に来ていない?

 それはどういうことだろう。優秀な生徒ほど、授業には欠かさず出席するイメージなのに。カナデの中で、1つの疑問が残った。

 その後、カナデも魔法の練習をしてみたが、頭では理解していても、作り上げた魔法のイメージを、なかなか武器まで伝えることが出来なかった。やはり、知識と実技は別物である。それをカナデは思い知ったのだった。結局、カナデは1発も魔法を放つことが出来なかった。

 午後から始まった講義が終わり、修復された壁を横目に通路に出ると、フェアリナやユリイナと同じタイプの制服を着た女子生徒が数人、カナデたちを待ち伏せしていた。

「あっ、ニャンニャンの人だ」

 ――ニャンニャン?

 誰のことを言っているのだろう。とりあえずカナデは、彼女たちに軽く微笑んでみた。ストレートの長い赤髪の少女、黒いショートボブに紫色のメガネをかけた少女、そして背の低いややぽっちゃりめの少女。3人の視線は、完全にカナデ1人に向けられていた。

「この人がニャンニャンしちゃったんだ。カッコいいのにね……びっくり」

 ――ん、何を言っている?

「ニャンニャン先輩ー、ボルド教官とだけじゃなくてー、私ともニャンニャンしてください」

 ――だから、何故カナデがボルドとニャンニャンしたことになっているんだ?

 てか、ニャンニャンって何だ。カナデがボルドと何をするんだ? いや、そもそも新入生なのに、何故先輩呼ばわり?

「良かったねーカナデ君。もうみんなからニックネームもらってる。いいなあー」

「良くねえよ! ニャンニャンの人って、間違いなくディスってない? 馬鹿にされてるよな。しかもあの鬼軍曹とだなんて、完全玄人好みじゃないか!」

 カナデは全力で反論した。カナデの焦りが伝わったのだろう。女の子たちはひそひそと話し、やがては残念そうに溜め息をついていた。

「ええー、違うんですか? じゃあ、どうしてカナデ先輩は、ニャンニャンしてたって噂が流れてるんですか?」

 いや、どうしてでしょうね。カナデにもわかりません。

「えへっ、私とカナデ君が、一緒の宿屋に泊って、2人でニャンニャンしてたからかもー、キャハ」

「おい!」

「うそー!」

「2人はもうそういう関係なんだ」

 これは入学早々男子を敵に回すパターンだなと、カナデは溜め息を漏らすのだった。

「すごいね、カナデ先輩。まさか両刀使いだなんて」

 ――両刀……使い……?

 意味を考え、カナデは唾液を吹き出してしまう。

「って、待て、ヲイ! いつ僕がボルド先生とやったと?!」

 可笑しそうに口元を隠して笑う女子3人組。彼女たちに、カナデの学校生活は汚されてしまった。いや、彼女たちが悪いわけではない。悪いのは、変な噂を流した犯人だ。そう思いながらも、カナデは目の前の好奇の目に耐えられる自信がなかった。

 ――返してくれ。

 平和な学校生活を。

「僕はボルド先生の身体に」

 興味がない、そう言おうとした瞬間、カナデは背後に、彼の気配を感じたのだった。
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