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1.「乗り移る」
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ショウとの自転車の帰り道、こはるちゃんが学校にいたことに、違和感を感じていた。こはるちゃんは、忍者とまで言われるほど帰るのが早いで有名だからだ。
掃除当番は同じ班だけど今日は掃除なかったし、委員会もなかったはず。何かあったんだろうか。
家に帰って、そのことが少し気になりながら、自分の机に置いてあった奇妙な置き手紙を読んだ。何度も読み返したが、「乗り移る」の意味がわからない。手紙にヒントは特にないため、手紙の意味を汲み取ることは到底できないと感じた。
まぁ何てことのない、ただのいたずらの手紙だろう。緑色だし、これはメロン味かな?舐めてみよう。
口に入れた飴は、メロン味ではなかったが、少し甘くてクセになりそうな味がした。
飴を舐めているうちに、だんだん身体が浮くように軽くなる、とても気持ちの良い感覚になった。だが、この晴れやかな気分とは逆に、視界はどんどん暗くなっていく。ほどなくして、目の前が真っ暗になった。目を覚ますとそこは、誰もいない教室だった。
なんで学校にいるんだ?なんか足元風通し良すぎるぞ?え?は?
カーン!カーン!カーン!
五時を知らせる街の鐘は、ユウキに自分がスカートを履いているという、学校にいることがどうでもよくなるほどの衝撃的な羞恥を与えたようだった。しかしそれだけではなかった。身体が女になっているのだ。
焦りながらも、ユウキは自分が女の姿になった理由はなんとなく察しがついた。
あの飴だ。手紙に書いていたように、俺は女に「乗り移った」んだ。だけど誰に?鏡を見て確認するか。
トイレの鏡で確認しようと考えた時、後ろから聞き慣れた声が自分に向けてはっきりと、
「こはる!」
と呼びかけた。
振り返るとドアに手をかけたショウがいた。
頭がパンクしそうだった。なぜか一緒に帰ったはずのショウが教室に戻ってきてるし、なにより俺が「乗り移った」のがこはるちゃんだったとは…。いや、飴を舐める直前、こはるちゃんのことを考えていたような気もする。「願った者」とは、飴を舐めるときに考えていた人のことなのか。
ユウキは、自分はこはるちゃんに「乗り移った」ユウキだと説明して信じてもらえる自信がなかったので、こはるちゃんを演じてこの場を乗り切ることにした。
「なんでユウキと帰ったのに戻ってきたの?」
「何言ってんの?こはるが珍しく一緒に帰りたいって言うから、急いで戻って来たのに」
珍しく?一緒に?帰りたい?
ユウキはいくらパニックだったとはいえ、ショウの言葉が二人は付き合っていることを意味するのは簡単に理解することができた。
付き合ってるって噂は、本当だったのか…。
あからさまにテンションを下げたこはるを見てショウは戸惑って確認した。
「あれ、一緒に帰るって言ってたよね?」
「うん!早く帰ろ!」
ユウキはできる限り精一杯の明るい声色で答えた。
自分でもわかるくらい演技くさくなったのに、ショウは気付いてないようだ。よっぽどこはるちゃんのことが好きなんだろう。親友なんだから、隠さず言ってくれればよかったのに。
ショウとの二度目の帰り道。ついさっき一緒に話して帰った相手と同じ道を歩くユウキは、自分から話す話題なんて何も思い浮かばなかった。幸い、ショウから話しかけてくれるので、会話が途切れることはあってもすぐに別の話題で間が保たれた。
会話がまた途切れ、新しい話題を振るショウはこう言った。
「そろそろアイツと帰るのやめようかな」
「え?アイツ?」
「うん、ユウキ。こはるだってアイツのこと嫌いだし、俺もアイツの相手疲れたし。」
「え?」
聞き返したときには、もうショウはいなかった。代わりに、視界には物が散乱した自分の部屋の机が映った。飴の効果が切れたようだ。
掃除当番は同じ班だけど今日は掃除なかったし、委員会もなかったはず。何かあったんだろうか。
家に帰って、そのことが少し気になりながら、自分の机に置いてあった奇妙な置き手紙を読んだ。何度も読み返したが、「乗り移る」の意味がわからない。手紙にヒントは特にないため、手紙の意味を汲み取ることは到底できないと感じた。
まぁ何てことのない、ただのいたずらの手紙だろう。緑色だし、これはメロン味かな?舐めてみよう。
口に入れた飴は、メロン味ではなかったが、少し甘くてクセになりそうな味がした。
飴を舐めているうちに、だんだん身体が浮くように軽くなる、とても気持ちの良い感覚になった。だが、この晴れやかな気分とは逆に、視界はどんどん暗くなっていく。ほどなくして、目の前が真っ暗になった。目を覚ますとそこは、誰もいない教室だった。
なんで学校にいるんだ?なんか足元風通し良すぎるぞ?え?は?
カーン!カーン!カーン!
五時を知らせる街の鐘は、ユウキに自分がスカートを履いているという、学校にいることがどうでもよくなるほどの衝撃的な羞恥を与えたようだった。しかしそれだけではなかった。身体が女になっているのだ。
焦りながらも、ユウキは自分が女の姿になった理由はなんとなく察しがついた。
あの飴だ。手紙に書いていたように、俺は女に「乗り移った」んだ。だけど誰に?鏡を見て確認するか。
トイレの鏡で確認しようと考えた時、後ろから聞き慣れた声が自分に向けてはっきりと、
「こはる!」
と呼びかけた。
振り返るとドアに手をかけたショウがいた。
頭がパンクしそうだった。なぜか一緒に帰ったはずのショウが教室に戻ってきてるし、なにより俺が「乗り移った」のがこはるちゃんだったとは…。いや、飴を舐める直前、こはるちゃんのことを考えていたような気もする。「願った者」とは、飴を舐めるときに考えていた人のことなのか。
ユウキは、自分はこはるちゃんに「乗り移った」ユウキだと説明して信じてもらえる自信がなかったので、こはるちゃんを演じてこの場を乗り切ることにした。
「なんでユウキと帰ったのに戻ってきたの?」
「何言ってんの?こはるが珍しく一緒に帰りたいって言うから、急いで戻って来たのに」
珍しく?一緒に?帰りたい?
ユウキはいくらパニックだったとはいえ、ショウの言葉が二人は付き合っていることを意味するのは簡単に理解することができた。
付き合ってるって噂は、本当だったのか…。
あからさまにテンションを下げたこはるを見てショウは戸惑って確認した。
「あれ、一緒に帰るって言ってたよね?」
「うん!早く帰ろ!」
ユウキはできる限り精一杯の明るい声色で答えた。
自分でもわかるくらい演技くさくなったのに、ショウは気付いてないようだ。よっぽどこはるちゃんのことが好きなんだろう。親友なんだから、隠さず言ってくれればよかったのに。
ショウとの二度目の帰り道。ついさっき一緒に話して帰った相手と同じ道を歩くユウキは、自分から話す話題なんて何も思い浮かばなかった。幸い、ショウから話しかけてくれるので、会話が途切れることはあってもすぐに別の話題で間が保たれた。
会話がまた途切れ、新しい話題を振るショウはこう言った。
「そろそろアイツと帰るのやめようかな」
「え?アイツ?」
「うん、ユウキ。こはるだってアイツのこと嫌いだし、俺もアイツの相手疲れたし。」
「え?」
聞き返したときには、もうショウはいなかった。代わりに、視界には物が散乱した自分の部屋の机が映った。飴の効果が切れたようだ。
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