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77.期間限定シンデレラ ⑩ 文官さんと護衛騎士さん
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リリアンと、その日はもう会場に戻らず部屋に戻ることになった。
リリアンがロゼッタに「少し疲れた様子だったから、そのまま部屋に帰らせる」って言ってくれたみたい。
お手洗いに行くって出て来たのに、この場所はお手洗いとは別の場所だ。よく見つけられたなって思ってたら
「はじめっから後ろからつけてたよ」
って言われた。
「護衛騎士さんが俊哉について行ってるのは分かったけど、心配だったから」
リリアンが僕を気遣うような表情で見た。
「護衛騎士さんも私に気付いてたみたいだけど、私だから別に気にしてなかったみたい」
え?
だけど、あの時初めて気付きましたって感じだったと思ったけど‥?
って思ったらリリアンが首を振って、
「彼女は確かに私に気付いてたけど、私が近寄ってくる気がない、二人で話してる内容も聞こえない様な距離にいるって判断してスルーしてたんじゃない? だけど、私が近づいて来て「何話してるんだ? 」って気にしてるのに気づいたから、話すのを止めたんだしょうね」
って言った。
ふうん? まあ‥確かに二人で話してた話に後から人が入ってきたら「こういう話してたんだよ」って説明とかしなきゃならないから面倒‥とかはあるかも。
そういえば‥何の話してたっけ。
「何の話してたの? ちょっと彼女深刻そうだったけど。
‥恋の告白、とか? 」
リリアンがちょっと真剣な顔で僕を見る。
もう、からかって。
僕は苦笑いして、
「彼女には婚約者がいるんだよ? 」
って言った。
「へえ? 」
リリアンがちょっと首を傾げて
「うまくいってないっぽいの? 」
って聞いた。
「え? なんで? 」
今度は僕が首を傾げる。
「だって、彼女は俊哉に特別な感情を持ってるみたいだったけど」
リリアンが首を傾げたまま言った。
‥そう?
よくわからない。
「それはよくわからないけど、彼女のね、婚約者の人は凄くいい人なんだ。彼女の幼馴染さんらしくって、彼女のことをホントに好きなんだろうって思った。実際に彼は彼女にそれを伝えてたけど‥彼女はね、‥自分の容姿にコンプレックスがあるらしくって、彼の言葉が信じられないみたいなんだ」
僕が言うとリリアンは不思議そうな表情で僕を見て
「なんでそんなこと知ってんの? 」
って聞いた。
‥ですよね。
僕は苦笑いして
「その現場を見たんだ」
って言った。
リリアンが「ふうん? 」って小さく頷く。
「この国では珍しくないことよね。‥で、顔じゃなく本来の自分を見て欲しいって言った「シーヤン様」に共感した‥というか「かっけー」ってなったってわけね」
‥それ程大袈裟なものでもないと思うけど‥。まあ‥そういう感じなのかも?
僕が肩を竦めて「そうかな? 」って言うと、リリアンが二っと笑って
「つまり、Loveじゃなくrespectって訳ね」
って言った。
‥なんで楽しそう。楽しそうってか、なんだろその表情。面白がってる‥かな? (答え: 「命拾いしたわね! 護衛騎士さん! あのヤキモチ焼きの。クラシルさんに俊哉に対する横恋慕が知られたら無事じゃいられなかったかもよ☆」だ。まあ‥「面白がってる」で間違いはない)
「そんな大層なもんじゃないと思うけど‥「へ~そんなこと言う人もいるんだ以外~」位だと思うけどね」
僕が苦笑いする。
「で、彼女の方はその婚約者さんのことどう思ってるっぽいの? 嫌ってる‥わけじゃないんでしょ? 恋愛対象外って感じ? 」
そんな話をしているうちに部屋に着いた。
部屋で服を着替えてからはまた女子会だ。途中から「私がいない時に何楽しそうな話してるの」ってロゼッタが参戦してきた。
楽しそうってアンタ、人の人生を‥
僕が苦笑いしてる間にリリアンがロゼッタにさっきの話を要約して伝えた。
「ふんふん。
二人は幼馴染で幼いころからの婚約者。文官・カイルは貴族だけど長子じゃないから他家に婿入りが可能。で、一人娘で家格が上の護衛騎士・マイルスと結婚して次期侯爵を継ぐと決まってるのだが、マイルスは自分の顔に自信がなくってカイルを気の毒って思ってる‥と」
ロゼッタがそれをさらに要約して、ちらっと僕を見たから僕は「合ってる」って頷いた。
‥そういえば、カイルさんが後何か言ってたな。ああそうだ後継者‥
「あ、あと、カイルさんがマイルスさんの方が次期侯爵に相応しいのに自分が次期侯爵になるのはおこがましいし、彼女はきっとそのことで自分を‥憎んでいる‥までは言ってなかったななんて言ってたっけ‥」
「彼女はとても不満に感じているだろうって感じ? 」
ってロゼッタ。
リリアンならそこで「「悔しい! 」じゃない? 」って言うかな。流石ロゼッタ。表現力がマイルド。
「そんな感じ」
僕が頷く。
「う~ん。まあ、女性で爵位を継ぐことも出来るはずだけど‥実際にはそういないわねえ。親戚連中に有無も言わせない様な絶対的なカリスマをもってるとか、権力があるとか、あと、あれ。それこそ武功を上げてる人で、一族で問題なく一番強い人」
ロゼッタが腕を組んで「う~ん、後はなにかしらねえ‥」と首を捻った。
リリアンがぱっと表情を明るくして
「あら、じゃあ、マイルスさんだって騎士さんだし。いいじゃない? 」
弾んだ声で言った。ロゼッタは小さく首を振る。
「問題はマイルスさんがどう思ってるかでしょ。もしかして、全然爵位にこだわりなんてないかもしれない。カイルさんが勝手に「悪い」って思ってるだけってこともあるでしょ? ってか、寧ろ私はその確率の方が高いって思ってる。私は彼女の事そう知っているわけではないけど‥」
「僕もそんな気がする。マイルスさんってそういうのに拘りなさそう」
「う~ん。なんか、もどかしいわねえ。多分二人はきっとお互いの事好きよね。なのに、変なところで遠慮しちゃって」
「そうだよね」
「そうね」
きっと好きなんだろう。
だけど、マイルスさんならきっと自分の「そんな気持ち」に気付かない振りする。かっての僕と一緒。「自分なんかには、そんな考えはおこがましいから」「そんなこと口にした瞬間、‥誤解でも「そう人に思われた瞬間」きっと人は嫌な顔をするし、馬鹿にするだろう」
そんな嫌な思いするくらいなら最初からそんな風に感じない方がいい。‥そんな気持ち押し込めてしまったほうがいい。
人が‥何より自分が信じられない。
いつも傷付いてて、「傷には耐性が出来てる」って自虐めいたことを言いながらも、「人から」傷つけられるのが怖くって‥「そんな考え」持たないようにする。
カイルさんなら信じられそうって‥僕からみたら思ったけど‥そればっかりはね。
彼女自身が納得しないと無理なんだろう。
「もどかしいけど、僕ら他人にはどうしようもないってことだね」
「‥そうね」
なんか、人の話を肴に盛り上がっちゃった感じ。なんか悪いな。
その時の僕はそう思ってただけなんだ。
次の日の朝、僕を迎えに来てくれたマイルスさんに、思いつめた表情で呼び止められるまでは。
リリアンがロゼッタに「少し疲れた様子だったから、そのまま部屋に帰らせる」って言ってくれたみたい。
お手洗いに行くって出て来たのに、この場所はお手洗いとは別の場所だ。よく見つけられたなって思ってたら
「はじめっから後ろからつけてたよ」
って言われた。
「護衛騎士さんが俊哉について行ってるのは分かったけど、心配だったから」
リリアンが僕を気遣うような表情で見た。
「護衛騎士さんも私に気付いてたみたいだけど、私だから別に気にしてなかったみたい」
え?
だけど、あの時初めて気付きましたって感じだったと思ったけど‥?
って思ったらリリアンが首を振って、
「彼女は確かに私に気付いてたけど、私が近寄ってくる気がない、二人で話してる内容も聞こえない様な距離にいるって判断してスルーしてたんじゃない? だけど、私が近づいて来て「何話してるんだ? 」って気にしてるのに気づいたから、話すのを止めたんだしょうね」
って言った。
ふうん? まあ‥確かに二人で話してた話に後から人が入ってきたら「こういう話してたんだよ」って説明とかしなきゃならないから面倒‥とかはあるかも。
そういえば‥何の話してたっけ。
「何の話してたの? ちょっと彼女深刻そうだったけど。
‥恋の告白、とか? 」
リリアンがちょっと真剣な顔で僕を見る。
もう、からかって。
僕は苦笑いして、
「彼女には婚約者がいるんだよ? 」
って言った。
「へえ? 」
リリアンがちょっと首を傾げて
「うまくいってないっぽいの? 」
って聞いた。
「え? なんで? 」
今度は僕が首を傾げる。
「だって、彼女は俊哉に特別な感情を持ってるみたいだったけど」
リリアンが首を傾げたまま言った。
‥そう?
よくわからない。
「それはよくわからないけど、彼女のね、婚約者の人は凄くいい人なんだ。彼女の幼馴染さんらしくって、彼女のことをホントに好きなんだろうって思った。実際に彼は彼女にそれを伝えてたけど‥彼女はね、‥自分の容姿にコンプレックスがあるらしくって、彼の言葉が信じられないみたいなんだ」
僕が言うとリリアンは不思議そうな表情で僕を見て
「なんでそんなこと知ってんの? 」
って聞いた。
‥ですよね。
僕は苦笑いして
「その現場を見たんだ」
って言った。
リリアンが「ふうん? 」って小さく頷く。
「この国では珍しくないことよね。‥で、顔じゃなく本来の自分を見て欲しいって言った「シーヤン様」に共感した‥というか「かっけー」ってなったってわけね」
‥それ程大袈裟なものでもないと思うけど‥。まあ‥そういう感じなのかも?
僕が肩を竦めて「そうかな? 」って言うと、リリアンが二っと笑って
「つまり、Loveじゃなくrespectって訳ね」
って言った。
‥なんで楽しそう。楽しそうってか、なんだろその表情。面白がってる‥かな? (答え: 「命拾いしたわね! 護衛騎士さん! あのヤキモチ焼きの。クラシルさんに俊哉に対する横恋慕が知られたら無事じゃいられなかったかもよ☆」だ。まあ‥「面白がってる」で間違いはない)
「そんな大層なもんじゃないと思うけど‥「へ~そんなこと言う人もいるんだ以外~」位だと思うけどね」
僕が苦笑いする。
「で、彼女の方はその婚約者さんのことどう思ってるっぽいの? 嫌ってる‥わけじゃないんでしょ? 恋愛対象外って感じ? 」
そんな話をしているうちに部屋に着いた。
部屋で服を着替えてからはまた女子会だ。途中から「私がいない時に何楽しそうな話してるの」ってロゼッタが参戦してきた。
楽しそうってアンタ、人の人生を‥
僕が苦笑いしてる間にリリアンがロゼッタにさっきの話を要約して伝えた。
「ふんふん。
二人は幼馴染で幼いころからの婚約者。文官・カイルは貴族だけど長子じゃないから他家に婿入りが可能。で、一人娘で家格が上の護衛騎士・マイルスと結婚して次期侯爵を継ぐと決まってるのだが、マイルスは自分の顔に自信がなくってカイルを気の毒って思ってる‥と」
ロゼッタがそれをさらに要約して、ちらっと僕を見たから僕は「合ってる」って頷いた。
‥そういえば、カイルさんが後何か言ってたな。ああそうだ後継者‥
「あ、あと、カイルさんがマイルスさんの方が次期侯爵に相応しいのに自分が次期侯爵になるのはおこがましいし、彼女はきっとそのことで自分を‥憎んでいる‥までは言ってなかったななんて言ってたっけ‥」
「彼女はとても不満に感じているだろうって感じ? 」
ってロゼッタ。
リリアンならそこで「「悔しい! 」じゃない? 」って言うかな。流石ロゼッタ。表現力がマイルド。
「そんな感じ」
僕が頷く。
「う~ん。まあ、女性で爵位を継ぐことも出来るはずだけど‥実際にはそういないわねえ。親戚連中に有無も言わせない様な絶対的なカリスマをもってるとか、権力があるとか、あと、あれ。それこそ武功を上げてる人で、一族で問題なく一番強い人」
ロゼッタが腕を組んで「う~ん、後はなにかしらねえ‥」と首を捻った。
リリアンがぱっと表情を明るくして
「あら、じゃあ、マイルスさんだって騎士さんだし。いいじゃない? 」
弾んだ声で言った。ロゼッタは小さく首を振る。
「問題はマイルスさんがどう思ってるかでしょ。もしかして、全然爵位にこだわりなんてないかもしれない。カイルさんが勝手に「悪い」って思ってるだけってこともあるでしょ? ってか、寧ろ私はその確率の方が高いって思ってる。私は彼女の事そう知っているわけではないけど‥」
「僕もそんな気がする。マイルスさんってそういうのに拘りなさそう」
「う~ん。なんか、もどかしいわねえ。多分二人はきっとお互いの事好きよね。なのに、変なところで遠慮しちゃって」
「そうだよね」
「そうね」
きっと好きなんだろう。
だけど、マイルスさんならきっと自分の「そんな気持ち」に気付かない振りする。かっての僕と一緒。「自分なんかには、そんな考えはおこがましいから」「そんなこと口にした瞬間、‥誤解でも「そう人に思われた瞬間」きっと人は嫌な顔をするし、馬鹿にするだろう」
そんな嫌な思いするくらいなら最初からそんな風に感じない方がいい。‥そんな気持ち押し込めてしまったほうがいい。
人が‥何より自分が信じられない。
いつも傷付いてて、「傷には耐性が出来てる」って自虐めいたことを言いながらも、「人から」傷つけられるのが怖くって‥「そんな考え」持たないようにする。
カイルさんなら信じられそうって‥僕からみたら思ったけど‥そればっかりはね。
彼女自身が納得しないと無理なんだろう。
「もどかしいけど、僕ら他人にはどうしようもないってことだね」
「‥そうね」
なんか、人の話を肴に盛り上がっちゃった感じ。なんか悪いな。
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