Happy nation

文月

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六章 Happy nation

3.ケモ耳は良くって、獣が良くないって、‥その判断基準が分かりかねます。

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 さて。
 この国の人間にとって、神獣は「いるといいことがある縁起物」的な存在で、その生殖及び繁殖に学術的には多少関心を持つ学者は多少は(僕が知ってる限り、あの論文の学者一人だ)いるが、大多数の人間にとって神獣はそう関心のあるものでもない。まして、生殖‥セックスの対象ではないし、それどころか恋愛の対象ではない。
 ありがたいことに、だ。
 例えていうならば、神獣のこの世界における位置は、招き猫や稲荷神社の「狛犬」って感じなんだ。
 確かに、招き猫と子孫を作ろうとは思わない。擬人化して‥しても、なんか「恐れ多い」。ここの感覚では‥でも「そこまで」じゃなくって、「お前、招き猫に発情するとか‥もの好きだな。まあ、個人の趣味だから口出しはしないけどね」って位か。
 同じ「神聖なもの」でも、神なんかは美の化身って姿で、けっこうエロイ格好して絵画に描かれてたりする。絵画に描かれる神獣は、100%獣体だ。そのエロイ格好した神の足元で跪く構図が定番って感じ。跪くってか、鶏型だから、寄り添う‥って感じかな。神が神獣を従えてるって感じ。
 サカマキの獣体(成獣だな)を初めて見た時、鶏って僕は思ったんだけど、この世界に鶏なんて鳥はいない。つまり、神獣は「ここにいる他の鳥の大きい版」ではなく、全く別のデカい鳥なんだ。だから、誰もが姿をよく知ってるってものでもない。画家も然りだ。
 神同様、「きっとこんな感じ」って想像で凛々しく美しく神々しく描かれている。そして、それを従わせてるてのが、美しくエロイ神ってね。
 そのうち、その絵画の姿が神獣のイメージに固定されちゃって、本当の神獣と分離しちゃったわけだ。
 猫と、縁起物としての招き猫はモデルは同じ猫なのに、違うもの‥。ああいう感じかな。(違うかも)
 龍とか麒麟とか‥そういう空想上のありがたい獣‥みたいな??
 人型としての「憧れ」やら、崇拝の象徴である神と、完璧、獣扱いの神獣。
 神獣は、神と違って、実際にこの世界にいるんだけど、神殿で大事に扱われてるとか、そういうことはない。神獣が望むのであったら、結婚することも問題はない。
 招き猫は縁起ものだけど、別に猫が崇められてるわけでも無いし、猫を飼っちゃダメとかもないって感じと同じかな?? でも、まあ、神獣は猫ほどはポピュラーでもないんだけどね。
 この世界における、神獣の扱いって微妙なんだ。
 希少だし、大事な存在っていいながら、特別天然記念物的に大事にされるわけでもない。
 ああそうそう。ちょうどこんな感じ。
 種族による差別とか良くないよね。俺はそんなことしないよ? って皆に気を遣わせちゃってる「取扱がちょっと難しい隣人」って感じ。
 腫れものに触るように、皆に気を遣われる、そして、「今は人型だけど、実は獣だよね」って常に獣型を意識されちゃう。神獣は、恋愛対象としてこれ以上ない程、人気がない。
 それに加えて、高位魔法使いであり、この世界中の人間に忌諱されているサカマキの「恋愛対象としての人気」は、ゼロを振り切って、もう、堂々とマイナスだ。気すら遣われてない。

 この世界は人間の外に、動物(肉食獣と草食獣がいる)や、魔物、魔獣がいる。そして、ほんの少数神獣がいて小人数獣人がいる。
 同じく希少種でありながら、この獣人は、恋愛対象として‥結婚相手として人気株だ。
 人族の亜種として獣人がいて、動物の高等種として神獣がいるって感じ。
 つまり、獣人は「人」のくくりで、「動物」のくくりである神獣とは違う。
 獣人は寿命も、人とそう変わらない。凄いハイスペックな超人って感じかな。でも、顔は、神獣と違って、別に全員いいってわけでもない。獣の性質が色濃く出てる獣人もいる。獣っぽい顔だったとしても(時には爬虫類っぽい顔でさえも)単に個性として扱われて、「顔がなんだ、人間顔じゃない」ってあくまで「人」として扱われる。
 数が少ないとはいえ、百人に一人くらいはいる。
 神獣はいつもいつもいるわけではない。一世紀に一人程いる位‥だろうか。今世紀は多分、サカマキだけだ。神獣は長生きだから一世紀位軽く生きるから、一世紀に一人くらい産まれるってのが正しいのかな。(なら、今世紀は混血とは言え、サカマキとフミカ、二人も神獣が産まれた奇跡の年だな)‥素晴らしい、もっと記録を更新したい。(話が脱線した)
 まあ‥神獣は人型にもなるんだから、もしかしたら人間が気付いていないだけで、今までも、そして今も他にもいるのかもしれないが、それは分からない。
 高位魔法使いが今この世界にサカマキ一人しかいないってことは、賢者(カツラギ)ならわかる。だけど、神獣が全部高位魔法使いなわけではない。カツラギがサカマキの事をわかったのは、サカマキが神獣だから、ではなく、高位魔法使いだからだ。
 高位魔法使いじゃない神獣の事は勿論カツラギ‥賢者だって分からない。そもそも、賢者はこの世界のことをなんでもしってるってわけじゃない。ただの、「神による調整作業」の説明係兼便利なデータベースだ。
 神獣がこの世界に今どれ程いるかなんて、誰も分からない。その中に、サカマキの母親や兄弟ががいるかいないかってことも‥だ。
 もしかしたら、道ですれ違ってるのかもしれない。勿論、人間には分からないんだけど、神獣同士なら分かるものなのかな? 
 森で産まれて、ひっそりと人間に擬態できるようになるまで、人里離れて隠れ住んで、人間に擬態して森からあたかも「よその国からきた冒険者です」って顔して出てきたら、きっと分からないだろう。
 つまり、神獣は「その存在自体が謎が多い生き物」で、人からしたら「得体が知れない」んだ。
 その点、獣人は普通の人間同士の夫婦との間に普通に産まれる。両親とも両親どう見ても、なんてことのない人間だのに、だ。それは、先祖返りって言われている。
 百人に一人っていっても、そうそうあることでもないだろうに
「呪いだ‥! 」
 とかいう感じじゃなくって、
「お、ラッキー! 」
 って感じで周りもそれを受け入れる。
 子供たちも、親からの「自分たちと違うからって虐めるんじゃないよ」って教えが行き届いているんだろう。遠巻きに見る子ってのもいるが、虐めたりする子はいない。
 それこそ、普通の子供と同じように育つが、獣人は、能力的に何か「必ず」人族より優れたものを持っているから、獣人が産まれたら両親は、その子の突出した能力をいち早く見つけてそれをのばす訓練をする。そしたら、その子は将来高収入を得られる職業を得ることができるからね。
 やり方さえ間違えなかったら、将来を約束された子供ってことだ。
 そりゃ、両親だけじゃなく、親戚中大喜びする(らしい)。
 一族郎党の期待を背負って生まれた子。
 それだけに、その子の親は、その子の適性を見つけそれを伸ばすって作業が重要になるわけなんだけど、なかなかそれが難しいんだ。
 親が適性を見つけられない場合もあるし、伸ばし方が分からない場合もある。
 そんな時は、ほんの小さい頃から、学校に通わせる。全寮制で、授業料も安くはないのだけど、子供の能力が分かり次第、直ぐにスポンサーがついたりするから結構大丈夫だ。
 優れた人材確保の為に、スカウトが学校内をよくうろついてるらしい。青田買いって奴だね。

 国が認める職業についたら、戸籍が取得できる。
 あとは、戸籍を所持している者と結婚したらその者の戸籍に入ることが出来るし、子供が産まれても同様だ。
 一生、産まれ故郷から出ることもなく、自給自足で生活している大多数の国民には戸籍はない。戸籍があるってことは、納税の義務があるってことだ。必要がないのに、わざわざ戸籍を取って税金を払いたいって奴なんていないだろう。
 ずっと村を出ない者は、だ。
 王都に出て給金のいい職に就きたいって野望がある若者は、戸籍を取得する。
 王都に出て、直接採用試験を受けるか、ギルドでギルドカードを取って、仕事をしながらスキルアップを目指すか。
 裕福な者は採用試験に対応した学校に通ったりする。そう裕福でない者は、ギルドで働きながら、採用試験に毎年挑戦する。だけど、獣人は特別採用枠で直接、試験なしで王都で働くことが出来る。
 獣人は、色んな点において優遇されている。‥言わずもがな、神獣にそういう優遇措置はない。
 それどころか、採用が難しかったり、採用後も「何かするんじゃないか」って目でみられたりする。

 だって、獣だ。
 私たち、人間とは違う。
 って。

 同じ世界の隣人として、差別はいけない。だけど、‥信用はしきれないし、恋愛の対象なんて以ての外だ。出来れば、自分と関わらないで生きていって欲しい。

 神獣は何もしていないのに、だ。
 神獣の事、知らないんじゃなくて、周りが知ろうとしていないだけなのに、だ。

 この美しい世界は、偏見と差別に満ち溢れている。
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