Happy nation

文月

文字の大きさ
102 / 116
七章 元通り

16.初めてのモテ期

しおりを挟む
 さっき‥今の今まで「生理的に受け入れない」って嫌われてた人間が、一瞬にしてアプローチの対象になるわけがない。

 そう思っていた。
 だけど、思えば‥
 昨日まで普通に暮らして来た俺は、カツラギに「お前は、高位魔法使いなんだ」って言われた瞬間、自分自身にまで暗示が掛かる‥呪いにかかった。
 周りは、高位魔法使いだというだけで自分を嫌った。
 顔を見すらしないで‥。
 逆に
 サカマキの顔を見た者はそういなかったのだ。
 
 放送が終わり、ぽかんと座っているのは、
 色白で、華奢で、アッシュブラウンの髪と挽き茶の瞳をした‥とんでもない美少年だった。
「‥あの、大丈夫ですか? 具合でも悪いんですか? 」
 あの、「あの! 」かって、悪意しか感じられない目で、サカマキを睨んで「カツラギ様を返せ! 」って罵倒した、カツラギ信者が、サカマキに対して悪意を感じられない‥ごく普通の対応で、‥しかも、それだけではなくなんなら、すこし心配げな顔で見ている。
「サカマキさんのこと、‥許したわけではないですけど、カツラギ様の親友ですし、カツラギ様は以前よりお楽しそうですし‥カツラギ様が文句を言っておられないのに、私たちがどうこういう資格はないです」
 ‥なんか、認めてくれてる(?)し。
 なんか、ちょっと顔赤いし。
「‥サカマキに近づかないでもらおう。さっき牽制したの、聞いてなかったの。それとも、僕と一戦交えたいの」
「! まさか! 私はそんなつもりは! 」
 帰ってきたらしいアララキが、サカマキとカツラギ信者の間に立った。
 口調は静かだったが、‥目が笑っていない。
 放送室から歩いて帰ってきて、こんなに早く帰れるわけがない。きっと、サカマキの危機(?)を野生の本能‥愛のなせる業らしい‥で察知して、転移して来たのだろう。
「‥アララキ‥お主、本気でヤンデレ入っておるぞ‥。‥我は本気でサカマキが主に解禁されないか心配になってくる」
 フミカがため息をついて、アララキとカツラギ信者を離す。
「ヤンデレ? 」
 こてん、とアララキが首を傾げる。
 なんのことかわかんないな。みたいな顔をするな、あざとい。
 絶対分かってるだろうが‥
 アララキが地球にいた時より時間が経っている‥とはいえ、アララキの地球に対する適応力は結構凄いぞ‥。
 フミカは、苦虫を嚙み潰したような顔をした。
 ‥アララキは嫌いではないが、この性格‥この血が自分の身体を流れていると思ったら‥本当に‥。
 その後も、廊下を出たサカマキは、何人もの男女にモーションをかけられていた。それは、別にあからさま‥ってものでは無かったが、全部アララキによって霧散させられていた。
 ‥く‥あの、憎いばっかりだった「高位魔法使いの呪い」によってまさか、サカマキが守られていたとは‥。
 アララキが、その麗しい顔(かんばせ)に般若の形相を浮かべた。


「カツラギ様はもう、こちらには戻られないのですか? 」
 帰ると言ったカツラギたちに、カツラギ信者たちは揃って落胆し、嘆き悲しみ‥「行かないで」と懇願した。
 カツラギは、大人の時のように苦笑いすると、
「‥大人になってから考える、あっちには、まだまだ学びたいことも多いからね」
 あっちに残るか、こっちに戻ってくるか‥。それは、とりあえず今子供のうちは考えるまでもない。
 子供は親の保護下にある。
「是非‥よくお考え下さい。‥できれば、帰ってきてください。お待ちしています‥」
 カツラギは、泣きながら訴える美女の頭にふわっと手を置いて、大人びた微笑みを‥苦笑いを浮かべる。
 なんじゃその、
 やれやれ、仕方がないな。
 みたいな顔‥。
 美女が顔を上げて、涙を浮かべた目でカツラギを見上げる。
 さて、この光景‥
 大人と子供、身長差があるのにどうやって? ‥って、簡単なことだ。全員が全員、項垂れて、膝を折っているからだ。
 辺り一面から聞こえていた忍び泣きの声は、やがてむせび泣きにかわり‥一気に騒がしくなった。
「おい、カツラギ、我はもう返るぞ」
 フミカの言いたいことは分かるが‥
 サカマキと一緒じゃないと、カツラギは帰れない。
 三人で帰るには、一緒に帰るしかない。
 アララキと一緒だったら‥カツラギ一人くらいは一緒に転移位出来るかもしれないが‥きっとアララキが断るだろう。
「転移って、一緒にしようと思ったら抱き合ってしないといけないだろ? カツラギと抱き合うとか、無理」
 ってね。
 因みに、神獣のサカマキは、神獣姿になって二人をのせて、転移するんじゃなくって「空間を移動する」。その方法だったら、サカマキに乗れる分ぐらいの人数なら地球に送れる。それ位サカマキには魔力があるからね。
 それに、そのほうが、移動した先が、何故か海‥とかいう危険性が無いんだ。
 だから、アララキたちが地球に転移する時は、先に空間移動能力持ち(サカマキ程の能力はないが、空間移動能力持ちというのは、サカマキ以外にもいる。ただし、空間移動能力だけしか持っていないって感じになるけど。神獣のサカマキは色々と「でたらめ」なんだ)が移動して、自らが「目印」になるんだ。そして、転移組は、その目印を元に転移する‥っていう感じかな。
 因みに、アララキが地球に単品で現れてるときは、微かなサカマキの気配を目印に転移している。
 針に糸を通すレベルの‥精度で、アララキはサカマキの気配を手繰り寄せてるんだ。
 そう考えると、ちょっと怖いよね。(by ナツカ)
「フミカ、‥待ってる」
「我の事は‥でも、あのこと(←大人になったら雄体でしかも、アララキそっくりになること)を聞いた後では、強要できない。でも、‥ショックだから、好きな人が出来て結婚する‥ってなっても、我には紹介しないで欲しい‥」
「‥フミカ」
 無理して笑うフミカの額に、
 ナツカがちゅっと
 微かな口づけを落とす。

 ‥ロリコンめ‥。

 サカマキとアララキがドン引きしたのは、言うまでもない。

「それでは、室長。いってらっしゃいませ」
 涙をぬぐいながら、
 元カツラギの筆頭「大人なお友達」が顔を上げる。
 カツラギが、大きく頷き
「ありがとう‥。暫く留守をする。‥よろしく頼む。‥苦労を掛ける‥」
 えっらそうに(by アララキ)言った。
 涙涙のカツラギ信者が
「この課は、そう責任者が決断しないといけない、大きな案件はないのです。‥新しく提案して、なにかを始めない限りは。‥カツラギ様がここに来られてから、本当にここは変わりました」
「そうですそうです」
「‥待ってます」
 次々とカツラギを褒めたり
 崇めたり
 ‥そんないい人のように言われてるのを聞くと、一体誰の事言われてるのやら‥って思う。
 でも、‥カツラギは仕事はしっかりやるし「出来る男」だから、仕事の事については、サカマキたちにも異論はない。
「‥ありがとう」
 ただ、‥褒め過ぎだし、崇めすぎ。
 君たち、ちょっと怖いよ‥。
「私はもう、カツラギではありませんよ」
 ふっとシニカルに微笑む、「インテリショタ」に周りが一気に赤面する。
 ‥もうそろそろ慣れたらいいのに。
「新しいお名前はなんと? 」
「牧野 翔」
「翔様。‥なんかしっくりきません。アララキ様はアララキ様です」
 ‥なら‥聞くなよ‥。何故聞いた‥。
  苦笑いするアララキ。心の中ではツッコミっぱなしだ。
「‥そうですね。私も、まだ実は言われ慣れていないんです」
 ‥何なの、この人たち‥。
 と、用意の出来たサカマキが神獣姿で、フミカをくいっとくわえ、背中に乗せる。
 カツラギも
 って目で促されてるのが分かる。
 神獣姿のサカマキは、テレパシーみたいな感じで心の中に直接語り掛けることは出来るのだが、しない。
 目で結構通じるしね。
 カツラギも頷いて、サカマキによじ登る。
 でっかい鶏姿の神獣サカマキは、子供が二人乗ったくらいじゃ狭くない。
 大人でも二人位なら余裕で乗れそうな大きさなんだ。
「「「ご無事で」」」
 カツラギ信者が並んでカツラギに声を掛ける。
「「「お早いお帰りを」」」
 その声は、‥サカマキたちが見えなくなるまで、聞こえていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

撫子の華が咲く

茉莉花 香乃
BL
時は平安、とあるお屋敷で高貴な姫様に仕えていた。姫様は身分は高くとも生活は苦しかった ある日、しばらく援助もしてくれなかった姫様の父君が屋敷に来いと言う。嫌がった姫様の代わりに父君の屋敷に行くことになってしまった…… 他サイトにも公開しています

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

青い薔薇と金色の牡丹【BL】

水月 花音
BL
ある日、異世界で目覚めた主人公。 通じる言葉、使える魔法… なぜ自分はここに来たのか。訳がわからないまま、時間は過ぎていく。 最後に待ち受ける結末とは… 王子様系攻め×綺麗系受け

処理中です...