今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

文月

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今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

「自分の」人生(side ハヅキ)

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 他人に頼らず自分で生きなければいけない。
 そう思ったのは、何度目の人生からだろうか。
 否、何度かの人生は経済的に「それが当たり前」だった。結婚する前は他の家族と同様に家族を助けて、家族と協力して、そして、結婚した後は家庭を守る。もしくは、結婚しなかった場合は自分一人、自分の生活の為に生きてきた。だから、「当たり前」に「如何にして自分で生きるか」を考えなきゃならないって思った。同時に「担当さんを心配させないために」あとは‥ささやかな楽しみとして‥人生に「小さな目標」を持った。
 それが、「治療師となってイケメンと知り合っちゃおう作戦」だった。
 つまりベースが「手に職持って一人で生きる術を身に着ける」で、オマケとして「イケメンと知り合う」。
 あたしは‥多分人生に疲れはてて、自分のより良い人生を生きることを諦めてたんだ。
 あたしは「ちゃんと」自分自身でも生きていけるように「しっかりしてる」でしょ? そして、「ちゃんと」自分の楽しみ‥生きがいみたいなものを持ってるでしょ? 
 担当さんに聞かれた時に答えられる答えのための人生を送っていた。
 ‥のかもしれない。
 でも、そのおかげでオズワルドさんに会えた。 
 結果オーライならそれでいい、気もする。いや、いいってことにしよう。
 でも‥あたしは‥周りにどう思われて来たのかって考えたのは初めてだ。
 「空回りしてる」って思われたこともあるかもしれないし、「不器用だな」って思われたこともあるかもしれない。「しっかりして欲しい」って思われるのが嫌で、人に迷惑をかけるのが嫌で、そうならないことだけを考えていた。
 頼ってほしいって思われてるなんて、もっと、楽しんで生きて欲しいって思われてるなんて‥考えたことなかった。
 自分だったらって考える。
 例えば自分の大切な妹がそんな生活をしていたら、きっと「もっと人生を楽しんで」って思うだろう。例えば経済的に妹が楽しい人生を歩めていないのなら、そんな社会を恨み、何より‥妹を幸せに出来ない自分を恨むだろう。
 そう思わない自分が嫌だって思うし、同時にそう思えてる自分に満足する。 
 そう、それは自己満足なんだ。だって、自分の欠点と向き合って、それを「積極的に」改善させて、その上で自分の幸せを望むより、人をプロデュースして「自己満足で」人を幸せにする方がよっぽど簡単だから。
 少なくとも、あたしはそうだった‥気がする。今思えば。今までの転生の何度かはそういう人生を送っていた。そうすることによって、その世界での自分の役割やら居場所を確保していた。「あたしは誰かの役に立ててる」って思い込んでいた。
 その結果、(その妹なりが)姉であるあたしに対して後ろめたい気持ちや‥もしかしたら「ありがた迷惑だな」って思ってたかもしれないってことを考えられてなかったってこと。
 随分周りに気を使わせてきたんだろうなって思う。
「気付くと恥ずかしい‥」
 人を幸せにしてるって思いあがりも甚だしい、だけど、そう思わなきゃやっていけなかった。「誰もオマエなん手必要としてないよ」って思われるのだけは嫌だった。臆病だったんだ。
 「こうしなきゃ」って思い込んで「きっと(周りのためになることを)何もしなければ周りはあたしを疎ましく思うだろう」って勝手に怖がって、「結局自分を守れるのは自分だけ」「どうせ、あたしのことを理解できる人間なんていない」「誰もあたしの気持ちを分かる人なんて、分かろうとする人なんていない」って決めつけてた。
 人との間に壁を作っていた。
 不思議とさ、そうなったら相手の言葉がまともに耳に入ってこないの。神妙な顔で聞いてるんだけど、驚くほど頭に入ってこなくて、まるでスベッとしたゲル状の物質みたいに、ツルッと耳にはいって、直ぐにスルって抜けていっちゃうの。
 聞いてるんだよ? 「確かにそうだね」って相槌だって打つ。でも、後から考えたら「何の話してたっけ」って思う。
 スルって抜けていっちゃった後だから。
 水みたいに流れるなら少しは染み込む言葉もあるだろう。だけど、ゲル状の物質は一塊になって、中身も分からないまま流れていくんだ。
 大事な話ならちゃんと聞くよ? 仕事の話とか、家族の健康の話とか。でも「あの子カッコイイ」とか「気になる子とかいないの? 」とかはどうでもいいわけじゃん? 少なくとも今まではどうでもいいって思ってたよ。だけど感じ悪くならないように、「今まで生きて来た中で培った」周りに合せるスキルだとか、当事者ぶらないスキルとか使って何となく会話に交じってきた。
 「ちゃんと」周りに合せて、「ちゃんと」生きて来たと思ってたのに、まさか周りがあたしに不満を持ってたなんてなあ~。「少しは、あたしたちも頼ってくださいね」ってもどかしく思われてたなんてな~。
 いや違うか。
 心配してくれてたんだ。
 ‥それは、素直に喜んでいいことなんだ。
 でも、卑屈根性が染み込んだあたしには「素直に喜ぶ」ことすら難しい。照れくさい。
 随分不器用になったもんだ。

「嬉しい。‥ありがとう」
 目の前で「あたしとお揃いなんです」ってあたしが差し出したちっちゃなネックレスに涙を流さん勢いで喜んでるオズワルドさんを見て、「あたしの魂は汚れ切ってます」って思っちゃった。
 演技だなんて到底思えない。
 こんなキラキラした目、あたしにはきっとできない。
 喜んでくれて嬉しい。って思う気持ちと、あたしにはこんな顔絶対出来ないって。ごめんなさい。って思う気持ち。「オズワルドさんに悪いな」って思う気持ち。
 そもそも、顔面の良さから違うよね~。
 オズワルドさんは「それが絵になる」面の良さ。あたしは‥アレだ。うん、コケシ。微笑むコケシ。考えようによっては癒されるかも‥?
 でも、この世界では美少女(笑)ほんとかな。全然実感わかないや。‥どうでもいいし。
 今はオズワルドさんを存分に見つめる時間なんです♡
 う~ん。カッコイイ。
 オズワルドさんは、あたしの目の色の緑とオズワルドさんの目の色の赤を交互に眺めて目をキラキラさせている。
 ‥可愛い。
「どっちがいいですか? 」 
 あたしが聞いたら、オズワルドさんは
「ハヅキさんの目の色の‥緑を持ちたいです」 
 ってちょっと赤くなりながら言った。
 きゃー!! 聞きました?? あたしの意図が伝わってましたよ!? その上、気持悪がられませんでしたよ!?(※ ハヅキは、お互いの目の色のネックレスを持とうって提案して気持悪がられたらどうしよ‥と直前で怖くなって両方見せた)
「嬉しいです!! 」
 果たして、
 当初の目標通り、お互いの目の色の石のついたネックレス(お揃い! )を持つことに成功したのでした。
 
 オズワルドさんの言葉は不思議。
 水みたいにキラキラして‥スウ―とあたしの心に沁み込んでいく。
 あたしの乾ききった心に沁み込んでいく‥。
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