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今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです!
職場に彼女。
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彼女が出来たら‥
A.友だちに紹介したり、自慢したりしたい。
友だちの評価がいまいちだったら? そんなの、ただの負け惜しみだよ! 人の幸せを素直に祝えない奴とか‥寂しいよね~。
or
B.冷やかされるのイヤだし、絶対イヤ。
友だちだから「出来た」とは言うけど、紹介したりとかしなくない?? そもそも、顔で選んだわけじゃないのに友だちに『アイツの彼女の顔‥アレだな(笑)』とか思われるの嫌じゃない? 『よかった~先越されたけど、アレなら別にいっか』とか思われたくないじゃない? いや、そういう友だちじゃないって思ってるよ? でも、人間多かれ少なかれソウイウトコあるじゃない?
オズワルドの選択肢はB!
ただし、冷やかされるのがイヤだから、じゃない。
他の奴に取られるかも‥とかは思わないよ。ハヅキさんが他の奴に目移りするとかも思わない。でもさ、あっちから勝手に惚れられて、その結果ハヅキさんに迷惑がかかることがあるかもしれない。そういうの考えたら絶対イヤだよ。
俺の友だち(※ 数少ない友だち・ランドルフとカイト)はそういうのじゃない。だけど、今回紹介しなければいけない相手は友達じゃなく同じ職場の人間。もう、絶対心配しかない。俺なんかを相手するような「物好き」だから「誰でもいいから付き合ったんじゃない? 」「なら、アイツよりカッコイイ俺が声を掛けたらすぐ乗り換えるんじゃない? 」とか思いそうじゃない?
もう、迷惑かける未来しか寧ろみえないよ。
絶対イヤだ。
だけど、「うちはアレだから他の騎士団にして? 」とかも絶対イヤだ‥。それなら、見張れる分ウチの騎士団の方がマシだ。
ハヅキからあの話を聞いてまずそんなことを考えてモヤモヤしたオズワルドだけど、騎士団長に事情を話した時には、そんな「浮ついた心配」は消え失せた。
タダで、優秀な治療師が来てくれる。
ウチは危険な現場も多いから怪我人は多いのに貧乏だから専属の治療師もいない。そんな環境が当たり前の騎士団にそんな夢みたいな提案、あっさり承諾すると思った団長は、予想に反して渋い顔をした。
ハヅキの頼み、「治療経験を積むため」っていう理由が問題なんじゃない。修行、大いに結構だ。その為に「胸を貸す」のは騎士団として当たり前の行為だ。ボランティアってので金銭がかからないのも魅力的なんだけど‥問題は「ハヅキが貴族ってことと女ってこと」だ。やっぱり騎士団は男所帯だし、安全を保障されない(※ 勿論貞操の危機とかじゃない。普通に敵による襲撃、とかの話だ)し、清潔とも言えないし、お世辞にも上品なとこじゃないから‥貴族のお嬢様には耐えられないんじゃない? って話。
あと‥一番大きい理由が、なによりも、ハヅキが美人過ぎるから。騎士たちが気になり過ぎて仕事のならんだろ? って奴だ。
まして、ここは都市じゃない。都市の騎士と違い、田舎の、ジェントルな騎士とは言えない男どもはそもそも女に対して免疫がない。そんな男どもがハヅキを見て、普通じゃいられないだろ~なパターンは目に見えてる。のぼせ上っちゃったり、ハヅキに手当てしてもらいたくて無理に怪我をする奴が続出する未来しか見えないだろ?
確かに! 絶対それ。
『俺は浮かれててそんなことも考えられていなかった‥』
って反省するオズワルドと、『それでも! 』と食い下がるハヅキ。ここで真剣度の違いがオズワルドにも伝わった。ハヅキの真剣度に対して、俺は何て「何とな~く」しか考えてなかったのか! と。そして反省。
『俺‥恋人失格だな‥』
落ち込むオズワルド。この段階で説得戦力外決定。ハヅキは一人で団長と交渉。援軍はなくなろうと、ハヅキはあくまで真剣だ。
ハヅキの必死の説得のかいあって、「絶対団員に迷惑をかけない」「揉め事はおこさない」って約束で、最後には団長はしぶしぶ承諾してくれた。「ローブを絶対脱がない」は絶対条件だ。今日はご挨拶ってことで、ローブを脱いでいたのだ。(※ 会った瞬間、団長はたっぷり2分はフリーズした)
だけど‥とちょっと決定打に欠ける団長に、
「勿論ローブは被りますし、それでも、女がいたら気が散るとおっしゃるならば、男の格好をしていきます」
って真剣な表情で真っすぐに団長を見つめながらハヅキが言って、団長はとうとう陥落だ。熱意に負けた、って奴だ。
「負けたよ‥承諾する。だけど、ホントに揉め事だけは勘弁してくれよ」
ため息をつきながら団長が言って、途端に破顔してそれこそ天使の様な顔で微笑んだハヅキに、女に免疫のない団長(とうとう)ダウン。首を振って、項垂れそうになるのを何とか気力で持ちこたえて
「絶対だぞ。絶対脱ぐなよローブ‥」
視線だけあげて怖い顔で念を押した。
必死に睨んでるんだろうけど、そんな真っ赤な顔で言ったら効果ゼロだ。だけど、ハヅキはどこまでも真面目な顔で
「はい! 分かっています! 」
って言った。
こうしてハヅキの短期間騎士団ボランティアが決まったのだった。
『あ、団長倒れたな』
ハヅキとオズワルドが部屋を出て、ドアを閉めた途端(ドアの向こうで)聞こえたドサって音に気付いたのは耳を澄ませていたオズワルドだけだったという‥。
ハヅキのボランティア時のスタイル。
髪は一つに縛って後ろに垂らす。そんなにボリュームはないものの、隠しようのないレベルで存在感を示す胸はさらしで巻いて潰して、細すぎる腰にはタオルと布。そして、更にいつもよりも質素なローブ。念には念を入れて伊達眼鏡装備。口元は治療師だから布で隠す(マスク的な役割だ)
一般的な「ローブの若者(男)」スタイルでハヅキは現れた。
「皆。彼は少しの間我が騎士団の医療班を手伝ってくれる治療師のハヅキだ。なんでも、治療師として怪我の処置経験を増やしたいと、この度ボランティアを希望してきた。遠慮する必要はないが、失礼のない様にしてくれ。なんと、彼はこの若さで中級治療師なんだからな」
声は喋ればバレるってんで、団長が代わりに自己紹介してくれた。因みにハヅキの設定は団長の知り合いの男。普段治療師として働いているのだが、怪我の処置経験を増やしたいために自分から志願して騎士団での治療をボランティアで志願。働き始めて4年の20歳。有休をとって来ているものの、どうしても教会から要請があればそちらを優先するのは勘弁してほしい。ってことになっている。
名前は「まあ、男でも女でも行けそうな名前だからそのままでいいだろ」ってことで、そのまま。実は、打ち合わせの時、「ハンスにでもする? 」って提案があったのだが、なんせ10回の転生をずっと「ハヅキ」という名前ですごして来たハヅキはハヅキという名前以外自分のことだと思えなくて、「ハンス」って呼ばれても返事が遅れたりしたのだ。それで、自分の名前なのにそれじゃよくない‥ってことでハヅキのままと決まったわけだ。
あと、喉を傷めてるから普段の会話は勘弁してほしい。詠唱の声が高い声‥所謂女の様な声になったとしてもそっとしておいてやってくれ‥という細かい設定もその時の打ち合わせの時決まった。
『喉を傷めてって‥どういう背景でそうなったんだ? 生まれつきならいいけど‥感染する可能性のある病気によるものじゃないのか? とか心配させん? 』
ってハヅキは心配したけど、皆そういうことは気にしてないみたいだ。それどころか「大変だな。大丈夫か? 無理するなよ」って言われた(← 痛むハヅキの良心)。ええ? いいんですか? 気にしないんですか? 「男も声の高い人いるから、そんなことで揶揄う奴いねえよ」ですか? あ。そうなんですね? 人間が出来てますね!!
(そんなことを考えながら)丁寧に頭を下げるハヅキに
「失礼な態度とか取りませんよ~。団長は俺らを何だと思ってんですか」
「よろしくな」
団員たちが口々にフレンドリーな様子で言った。頭をポンポンしたりフレンドリーに肩を組んで来ようとする奴はさらっと団長(とオズワルド)が阻止だ。
その配慮は嬉しいんですが‥
「コイツはほっそいんだから馬鹿力で触るな。骨が折れたらどうすんだよ」
「そうだぞ、頭を叩いたら脳震盪起こすし肩なんて叩こうものなら骨が砕けかねんぞ」
っていう言い方は‥流石に‥苦笑いハヅキだ。
『どんだけ弱いねん!! 流石に「それはない」って思うぞ!! 』
って思ったんだけど‥騎士団の皆は
「確かに! 」
って大きく頷いた。
『納得された~!! 何故だ!? 』
更にドン引きハヅキ。
予想に反した団員の様子に
『そうか、コイツ等は一般的な奴ら(※ 比較対象都市部の騎士)よりずっとイイ奴だった‥。俺は、コイツ等を嫌な目で見過ぎてたな』
なんて思ってちょっと団員を見直し、安心したオズワルドだが、
「それより熱くないのか? ローブなんか着て。この通り、俺たちの容姿も褒められたもんじゃないから気にせず脱げよ! 」
には焦った。
『イイ奴通り過ぎて、ヤバいだろ! 人の事情に土足で踏み込んでいくな!! 放っておいてやれ!! 』
オズワルドの心の声が届いたのか、別の奴が
「放っておいてやれよ。そんなのソイツの自由だろ。ソイツは今までそのローブを着ることによって自衛してきたんだ。いうならばローブはソイツの鎧なんだろ? 俺らならイチャモン付けるような奴なんて殴り飛ばせるけど、ソイツは俺らと違ってほっそい手足してるじゃないか。俺たちの常識を押し付けるのは良くない」
って言って止めてくれた。
ほっとしたと同時に、ハヅキははっとした。
『そっか‥そうだよな。
「不細工を見たから身体の調子が悪くなった! 」とかわけわからんイチャモン付けられて何もしてないのに殴られてる男の人を今まで何人も見て来た。確かに‥今の「ハヅキ」みたいな細っちい男だったら、この人たち(マッチョで腕に自信あり)みたいに殴り飛ばせたり出来ないだろう‥だから、女より肩身が狭い想いをして過ごさなければいけない‥』
って今更ながら気付いた。
女だったら、まさか「出会いがしら殴られる」まではないから。
‥男は大変だな。
と。
この世界は自分が思っている以上に厳しい。
声に出して礼を言えない代わりに、ハヅキはぺこりと今度はもっと大きくお辞儀した。その様子はいかにも初々しく(← 騎士さんたちは皆20歳は超えた者ばかり)謙虚で礼儀正しく、皆は微笑ましいって顔をしてハヅキを温かく迎え入れた。
そういえば‥
こんなに温かく、「普通に」迎え入れられたの初めてかも。
教会でさえ仕事で認められた後ならまだしも、初めて挨拶した時は「ローブが」って顔された。仕事の腕が一番重要視されるから苛められることはなかったが、常に一段下の扱いを「自然に」受けてきた。ほんとそれこそナチュラルに「可哀そうな奴」扱いされてきた。そして、仕事に慣れてきても相手はどこか自分に対して壁を作っていて‥常に「可哀そうな奴」に対して「普通に接してやってる出来た俺」って印象がぬぐえなかった。
だけど、これでさえ「良心的な扱い」だった。
学校では一段下扱いどころか、邪魔な者って扱いを受けて来た。「見たくない者」「見たくないから目の端に入れないでおこう」って扱い。だって、邪魔な者を苛めたら自分の評価が下がるわけじゃない。だから、表立っては苛めない。なのに、目の端に入れば腹が立つ。「だから」、イライラする。イライラさせるコイツが悪い。だから、コイツが憎い‥。
学校だから、他人の評価が気になるから、‥貴族だから「そう」であって、街のゴロツキだったらそれどころじゃないかもしれない。それこそ「醜い奴は不愉快」って問答無用で殴られたりするのかもしれない。
誰も助けてくれない。殴られるのは嫌だし怖いけど、働かなきゃ食って行けないから、それでも働きに出る。
自分で自分を守る術のない「醜い」とレッテルを張られた男は、戦うのを避けるためにローブを被る。ホントはローブで隠しても隠さなくても扱いは同じなんだけど、ローブで隠さなかったら「ローブで隠せよ」って言われるから隠す。
この世界、社会的に守る者とされる女よりきっと男の方が差別は厳しい。
『きっとオズワルドさんも今まで嫌な思いをして来たのだろう』
だけど、さっき騎士団の人が言った「ほっそい手足」をしてないから、まだ自分の身を守れた。だけど、「ほっそい手足」をしていたならもっと‥
もっと怖い想いをして来ただろう。
知れば知るほど‥この世界が嫌いになる。
騎士団の皆の様子を見ながら、オズワルドは小さくため息をついた。
『ハヅキさんが怖がってない様で安心した』
受け入れられるかも心配だったけど、何よりハヅキが(オズワルド程じゃないにせよ)世間的に見て醜い騎士団員たちをみて驚かないかが心配だったのだ。
でも、ハヅキにはそんな様子は見られない。
きっと、彼女は「男として」ここで上手くやっていくだろう。問題はなさそうだ。
ホントは
「俺のなんだから触るな」
とか言いたい。
自分の彼女としてハヅキを紹介出来ないことはちょっとは寂しい。ホント言うとちょっとは自慢したい。だって、こんなに可愛い彼女なんだから‥自慢したくない方がおかしくない? それで、奴らが羨ましがる顔もちょっとは見たい。(ホントはね)。
でもさっき‥奴らの言葉を聞いてちょっと「騙して悪いな‥」って気にもなった。良心がちょっと傷んだ。
だけど‥それ以上に、怖いんだ。
『ハヅキさんに惚れられるのも、‥ハヅキさんが惚れるのも、そんな心配を俺がしてしまうのも。怖い。
ハヅキさんのこと信じてる。だから俺が心配をするってことは「おかしい」んだけど‥きっと心配してしまう。それも嫌だ。仕事に集中できないかもしれないって分かる。それは‥絶対にダメだ。
だから
ホントに紹介するのは気心知れた奴らだけでいいかな』
‥そんな風に思った。
だけど
職場に彼女。最高だな。そこに「いる」って思うだけで最高!! あの可愛い顔を俺しか知らないってのも、最高。(注 団長も知っている)
今日はちょっと仕事に集中できないかも、なオズワルドだった。
A.友だちに紹介したり、自慢したりしたい。
友だちの評価がいまいちだったら? そんなの、ただの負け惜しみだよ! 人の幸せを素直に祝えない奴とか‥寂しいよね~。
or
B.冷やかされるのイヤだし、絶対イヤ。
友だちだから「出来た」とは言うけど、紹介したりとかしなくない?? そもそも、顔で選んだわけじゃないのに友だちに『アイツの彼女の顔‥アレだな(笑)』とか思われるの嫌じゃない? 『よかった~先越されたけど、アレなら別にいっか』とか思われたくないじゃない? いや、そういう友だちじゃないって思ってるよ? でも、人間多かれ少なかれソウイウトコあるじゃない?
オズワルドの選択肢はB!
ただし、冷やかされるのがイヤだから、じゃない。
他の奴に取られるかも‥とかは思わないよ。ハヅキさんが他の奴に目移りするとかも思わない。でもさ、あっちから勝手に惚れられて、その結果ハヅキさんに迷惑がかかることがあるかもしれない。そういうの考えたら絶対イヤだよ。
俺の友だち(※ 数少ない友だち・ランドルフとカイト)はそういうのじゃない。だけど、今回紹介しなければいけない相手は友達じゃなく同じ職場の人間。もう、絶対心配しかない。俺なんかを相手するような「物好き」だから「誰でもいいから付き合ったんじゃない? 」「なら、アイツよりカッコイイ俺が声を掛けたらすぐ乗り換えるんじゃない? 」とか思いそうじゃない?
もう、迷惑かける未来しか寧ろみえないよ。
絶対イヤだ。
だけど、「うちはアレだから他の騎士団にして? 」とかも絶対イヤだ‥。それなら、見張れる分ウチの騎士団の方がマシだ。
ハヅキからあの話を聞いてまずそんなことを考えてモヤモヤしたオズワルドだけど、騎士団長に事情を話した時には、そんな「浮ついた心配」は消え失せた。
タダで、優秀な治療師が来てくれる。
ウチは危険な現場も多いから怪我人は多いのに貧乏だから専属の治療師もいない。そんな環境が当たり前の騎士団にそんな夢みたいな提案、あっさり承諾すると思った団長は、予想に反して渋い顔をした。
ハヅキの頼み、「治療経験を積むため」っていう理由が問題なんじゃない。修行、大いに結構だ。その為に「胸を貸す」のは騎士団として当たり前の行為だ。ボランティアってので金銭がかからないのも魅力的なんだけど‥問題は「ハヅキが貴族ってことと女ってこと」だ。やっぱり騎士団は男所帯だし、安全を保障されない(※ 勿論貞操の危機とかじゃない。普通に敵による襲撃、とかの話だ)し、清潔とも言えないし、お世辞にも上品なとこじゃないから‥貴族のお嬢様には耐えられないんじゃない? って話。
あと‥一番大きい理由が、なによりも、ハヅキが美人過ぎるから。騎士たちが気になり過ぎて仕事のならんだろ? って奴だ。
まして、ここは都市じゃない。都市の騎士と違い、田舎の、ジェントルな騎士とは言えない男どもはそもそも女に対して免疫がない。そんな男どもがハヅキを見て、普通じゃいられないだろ~なパターンは目に見えてる。のぼせ上っちゃったり、ハヅキに手当てしてもらいたくて無理に怪我をする奴が続出する未来しか見えないだろ?
確かに! 絶対それ。
『俺は浮かれててそんなことも考えられていなかった‥』
って反省するオズワルドと、『それでも! 』と食い下がるハヅキ。ここで真剣度の違いがオズワルドにも伝わった。ハヅキの真剣度に対して、俺は何て「何とな~く」しか考えてなかったのか! と。そして反省。
『俺‥恋人失格だな‥』
落ち込むオズワルド。この段階で説得戦力外決定。ハヅキは一人で団長と交渉。援軍はなくなろうと、ハヅキはあくまで真剣だ。
ハヅキの必死の説得のかいあって、「絶対団員に迷惑をかけない」「揉め事はおこさない」って約束で、最後には団長はしぶしぶ承諾してくれた。「ローブを絶対脱がない」は絶対条件だ。今日はご挨拶ってことで、ローブを脱いでいたのだ。(※ 会った瞬間、団長はたっぷり2分はフリーズした)
だけど‥とちょっと決定打に欠ける団長に、
「勿論ローブは被りますし、それでも、女がいたら気が散るとおっしゃるならば、男の格好をしていきます」
って真剣な表情で真っすぐに団長を見つめながらハヅキが言って、団長はとうとう陥落だ。熱意に負けた、って奴だ。
「負けたよ‥承諾する。だけど、ホントに揉め事だけは勘弁してくれよ」
ため息をつきながら団長が言って、途端に破顔してそれこそ天使の様な顔で微笑んだハヅキに、女に免疫のない団長(とうとう)ダウン。首を振って、項垂れそうになるのを何とか気力で持ちこたえて
「絶対だぞ。絶対脱ぐなよローブ‥」
視線だけあげて怖い顔で念を押した。
必死に睨んでるんだろうけど、そんな真っ赤な顔で言ったら効果ゼロだ。だけど、ハヅキはどこまでも真面目な顔で
「はい! 分かっています! 」
って言った。
こうしてハヅキの短期間騎士団ボランティアが決まったのだった。
『あ、団長倒れたな』
ハヅキとオズワルドが部屋を出て、ドアを閉めた途端(ドアの向こうで)聞こえたドサって音に気付いたのは耳を澄ませていたオズワルドだけだったという‥。
ハヅキのボランティア時のスタイル。
髪は一つに縛って後ろに垂らす。そんなにボリュームはないものの、隠しようのないレベルで存在感を示す胸はさらしで巻いて潰して、細すぎる腰にはタオルと布。そして、更にいつもよりも質素なローブ。念には念を入れて伊達眼鏡装備。口元は治療師だから布で隠す(マスク的な役割だ)
一般的な「ローブの若者(男)」スタイルでハヅキは現れた。
「皆。彼は少しの間我が騎士団の医療班を手伝ってくれる治療師のハヅキだ。なんでも、治療師として怪我の処置経験を増やしたいと、この度ボランティアを希望してきた。遠慮する必要はないが、失礼のない様にしてくれ。なんと、彼はこの若さで中級治療師なんだからな」
声は喋ればバレるってんで、団長が代わりに自己紹介してくれた。因みにハヅキの設定は団長の知り合いの男。普段治療師として働いているのだが、怪我の処置経験を増やしたいために自分から志願して騎士団での治療をボランティアで志願。働き始めて4年の20歳。有休をとって来ているものの、どうしても教会から要請があればそちらを優先するのは勘弁してほしい。ってことになっている。
名前は「まあ、男でも女でも行けそうな名前だからそのままでいいだろ」ってことで、そのまま。実は、打ち合わせの時、「ハンスにでもする? 」って提案があったのだが、なんせ10回の転生をずっと「ハヅキ」という名前ですごして来たハヅキはハヅキという名前以外自分のことだと思えなくて、「ハンス」って呼ばれても返事が遅れたりしたのだ。それで、自分の名前なのにそれじゃよくない‥ってことでハヅキのままと決まったわけだ。
あと、喉を傷めてるから普段の会話は勘弁してほしい。詠唱の声が高い声‥所謂女の様な声になったとしてもそっとしておいてやってくれ‥という細かい設定もその時の打ち合わせの時決まった。
『喉を傷めてって‥どういう背景でそうなったんだ? 生まれつきならいいけど‥感染する可能性のある病気によるものじゃないのか? とか心配させん? 』
ってハヅキは心配したけど、皆そういうことは気にしてないみたいだ。それどころか「大変だな。大丈夫か? 無理するなよ」って言われた(← 痛むハヅキの良心)。ええ? いいんですか? 気にしないんですか? 「男も声の高い人いるから、そんなことで揶揄う奴いねえよ」ですか? あ。そうなんですね? 人間が出来てますね!!
(そんなことを考えながら)丁寧に頭を下げるハヅキに
「失礼な態度とか取りませんよ~。団長は俺らを何だと思ってんですか」
「よろしくな」
団員たちが口々にフレンドリーな様子で言った。頭をポンポンしたりフレンドリーに肩を組んで来ようとする奴はさらっと団長(とオズワルド)が阻止だ。
その配慮は嬉しいんですが‥
「コイツはほっそいんだから馬鹿力で触るな。骨が折れたらどうすんだよ」
「そうだぞ、頭を叩いたら脳震盪起こすし肩なんて叩こうものなら骨が砕けかねんぞ」
っていう言い方は‥流石に‥苦笑いハヅキだ。
『どんだけ弱いねん!! 流石に「それはない」って思うぞ!! 』
って思ったんだけど‥騎士団の皆は
「確かに! 」
って大きく頷いた。
『納得された~!! 何故だ!? 』
更にドン引きハヅキ。
予想に反した団員の様子に
『そうか、コイツ等は一般的な奴ら(※ 比較対象都市部の騎士)よりずっとイイ奴だった‥。俺は、コイツ等を嫌な目で見過ぎてたな』
なんて思ってちょっと団員を見直し、安心したオズワルドだが、
「それより熱くないのか? ローブなんか着て。この通り、俺たちの容姿も褒められたもんじゃないから気にせず脱げよ! 」
には焦った。
『イイ奴通り過ぎて、ヤバいだろ! 人の事情に土足で踏み込んでいくな!! 放っておいてやれ!! 』
オズワルドの心の声が届いたのか、別の奴が
「放っておいてやれよ。そんなのソイツの自由だろ。ソイツは今までそのローブを着ることによって自衛してきたんだ。いうならばローブはソイツの鎧なんだろ? 俺らならイチャモン付けるような奴なんて殴り飛ばせるけど、ソイツは俺らと違ってほっそい手足してるじゃないか。俺たちの常識を押し付けるのは良くない」
って言って止めてくれた。
ほっとしたと同時に、ハヅキははっとした。
『そっか‥そうだよな。
「不細工を見たから身体の調子が悪くなった! 」とかわけわからんイチャモン付けられて何もしてないのに殴られてる男の人を今まで何人も見て来た。確かに‥今の「ハヅキ」みたいな細っちい男だったら、この人たち(マッチョで腕に自信あり)みたいに殴り飛ばせたり出来ないだろう‥だから、女より肩身が狭い想いをして過ごさなければいけない‥』
って今更ながら気付いた。
女だったら、まさか「出会いがしら殴られる」まではないから。
‥男は大変だな。
と。
この世界は自分が思っている以上に厳しい。
声に出して礼を言えない代わりに、ハヅキはぺこりと今度はもっと大きくお辞儀した。その様子はいかにも初々しく(← 騎士さんたちは皆20歳は超えた者ばかり)謙虚で礼儀正しく、皆は微笑ましいって顔をしてハヅキを温かく迎え入れた。
そういえば‥
こんなに温かく、「普通に」迎え入れられたの初めてかも。
教会でさえ仕事で認められた後ならまだしも、初めて挨拶した時は「ローブが」って顔された。仕事の腕が一番重要視されるから苛められることはなかったが、常に一段下の扱いを「自然に」受けてきた。ほんとそれこそナチュラルに「可哀そうな奴」扱いされてきた。そして、仕事に慣れてきても相手はどこか自分に対して壁を作っていて‥常に「可哀そうな奴」に対して「普通に接してやってる出来た俺」って印象がぬぐえなかった。
だけど、これでさえ「良心的な扱い」だった。
学校では一段下扱いどころか、邪魔な者って扱いを受けて来た。「見たくない者」「見たくないから目の端に入れないでおこう」って扱い。だって、邪魔な者を苛めたら自分の評価が下がるわけじゃない。だから、表立っては苛めない。なのに、目の端に入れば腹が立つ。「だから」、イライラする。イライラさせるコイツが悪い。だから、コイツが憎い‥。
学校だから、他人の評価が気になるから、‥貴族だから「そう」であって、街のゴロツキだったらそれどころじゃないかもしれない。それこそ「醜い奴は不愉快」って問答無用で殴られたりするのかもしれない。
誰も助けてくれない。殴られるのは嫌だし怖いけど、働かなきゃ食って行けないから、それでも働きに出る。
自分で自分を守る術のない「醜い」とレッテルを張られた男は、戦うのを避けるためにローブを被る。ホントはローブで隠しても隠さなくても扱いは同じなんだけど、ローブで隠さなかったら「ローブで隠せよ」って言われるから隠す。
この世界、社会的に守る者とされる女よりきっと男の方が差別は厳しい。
『きっとオズワルドさんも今まで嫌な思いをして来たのだろう』
だけど、さっき騎士団の人が言った「ほっそい手足」をしてないから、まだ自分の身を守れた。だけど、「ほっそい手足」をしていたならもっと‥
もっと怖い想いをして来ただろう。
知れば知るほど‥この世界が嫌いになる。
騎士団の皆の様子を見ながら、オズワルドは小さくため息をついた。
『ハヅキさんが怖がってない様で安心した』
受け入れられるかも心配だったけど、何よりハヅキが(オズワルド程じゃないにせよ)世間的に見て醜い騎士団員たちをみて驚かないかが心配だったのだ。
でも、ハヅキにはそんな様子は見られない。
きっと、彼女は「男として」ここで上手くやっていくだろう。問題はなさそうだ。
ホントは
「俺のなんだから触るな」
とか言いたい。
自分の彼女としてハヅキを紹介出来ないことはちょっとは寂しい。ホント言うとちょっとは自慢したい。だって、こんなに可愛い彼女なんだから‥自慢したくない方がおかしくない? それで、奴らが羨ましがる顔もちょっとは見たい。(ホントはね)。
でもさっき‥奴らの言葉を聞いてちょっと「騙して悪いな‥」って気にもなった。良心がちょっと傷んだ。
だけど‥それ以上に、怖いんだ。
『ハヅキさんに惚れられるのも、‥ハヅキさんが惚れるのも、そんな心配を俺がしてしまうのも。怖い。
ハヅキさんのこと信じてる。だから俺が心配をするってことは「おかしい」んだけど‥きっと心配してしまう。それも嫌だ。仕事に集中できないかもしれないって分かる。それは‥絶対にダメだ。
だから
ホントに紹介するのは気心知れた奴らだけでいいかな』
‥そんな風に思った。
だけど
職場に彼女。最高だな。そこに「いる」って思うだけで最高!! あの可愛い顔を俺しか知らないってのも、最高。(注 団長も知っている)
今日はちょっと仕事に集中できないかも、なオズワルドだった。
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命がけで守った“子犬たち”は、すくすく育ち、戦闘能力が高い、耳もふわふわなイケメンに成長した。
そして、ますます慕い方が激しくなるばかり。
……いや、育ての親としてはうれしいけど、そろそろ距離感というものを覚えてください。
(※年代、国、地名、物などは史実どうりですが、登場人物は実在してません。
魔法やモンスターなど、史実にはないものもあります)
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