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「ミリオネ・ラ・ベル・フルール公爵令嬢! 貴様との婚約を、この場を持って破棄する!」
王立学園の卒業パーティー会場。
その中央で、金髪碧眼の第一王子カイルが高らかに叫んだ。
広間に響き渡る声は、まるで演劇のクライマックスのように劇的で、そして恐ろしく空気が読めていなかった。
音楽は不自然に止まり、ダンスを踊っていた令息令嬢たちは、何事かとその場に凍りつく。
衆人環視の中、カイル王子の腕には、愛らしいピンク色の髪をした小柄な少女がしがみついていた。
男爵令嬢であり、最近「聖女」認定されたばかりのリリィだ。
彼女は怯えたように震えながら、上目遣いで王子を見上げている。
対して、その正面に立つ私――ミリオネは、手にした扇子をパチンと閉じた。
「……殿下。今、なんと仰いましたか?」
静まり返った会場に、私の冷静な声が響く。
カイル王子は鼻を鳴らし、勝ち誇ったように胸を張った。
「聞こえなかったのか? 婚約破棄だと言ったのだ! リリィに対する数々の陰湿な嫌がらせ、もはや看過できん!」
「嫌がらせ、ですか」
「とぼけるな! 教科書を破いただろう!」
「破いておりません」
「嘘をつくな! リリィが泣きながら訴えてきたのだぞ!」
「彼女の教科書は初歩的なミスが多すぎたので、赤ペンで修正を入れて差し上げただけです。破れたとしたら、彼女がその事実に耐えきれず自分で引き裂いたのでは?」
「なっ……屁理屈を!」
カイル王子が顔を真っ赤にして怒鳴る。
隣のリリィが「ひどい……ミリオネ様は、いつもそうやって私を馬鹿にして……」と涙目で訴える。
私は溜息を噛み殺した。
ああ、時間の無駄だ。
この卒業パーティーが終われば、明日からは王太子妃としての厳しい公務修行が始まる予定だった。
予算案のチェック、外交資料の暗記、そして何より、この頭の軽い王子のお守り。
想像するだけで胃に穴が空きそうな未来が待っていたのだ。
それが、婚約破棄?
「……つまり、殿下は私との結婚を白紙に戻したいと?」
「そうだ! 貴様のような冷血で可愛げのない女は、王妃にふさわしくない! これからはリリィのような、慈愛に満ちた女性こそが国母となるべきだ!」
カイル王子の声が、会場の隅々まで響き渡る。
周囲の貴族たちがざわめき始めた。
「おい、まさか本当に……」
「公爵家との婚約を、あんな理由で?」
「しかし、あのミリオネ様の気性の激しさは有名だし……」
ヒソヒソとした囁き声が聞こえてくる。
普通なら、ここで泣き崩れるか、あるいは激昂して掴みかかるのが「悪役令嬢」の役割なのだろう。
だが、私は違った。
私の脳内で、高速の計算が行われる。
婚約破棄が成立すれば、王太子妃教育は免除される。
公爵家の実家に戻ることになるが、父は放任主義だ。
つまり、自由。
毎朝五時に起きて王宮へ通う必要もなければ、カイル王子の珍妙なポエムにつきあわされるお茶会も消滅する。
さらに言えば、慰謝料も請求できる可能性がある。
(……え、最高じゃない?)
私の口角が、意思に反して上がりそうになるのを必死で堪える。
ここで笑っては不敬罪だ。
私は努めて深刻な顔を作り、震える声(演技)で問いかけた。
「……本気、なのですか? 後悔なさいませんか?」
「ふん、後悔などするものか! せいぜい惨めに泣き叫ぶがいい!」
「そうですか……わかりました」
私はスッと顔を上げ、懐から手帳と万年筆を取り出した。
「では、その言葉、撤回なさいませんね?」
「あ、ああ。二言はない!」
「証人はここにいる全員ですね?」
私は周囲を見渡して確認する。
貴族たちは戸惑いながらも、コクコクと頷いた。
「よし」
私は手帳にサラサラとメモを書き込むと、それを破り取ってカイル王子の前に突き出した。
「念のため、ここにサインをお願いします」
「は?」
カイル王子が間の抜けた声を出す。
リリィも涙を浮かべたまま「え?」と固まっている。
「婚約破棄の同意書です。口約束だけでは、後で『やっぱりやめた』と言われたら困りますから。さあ、日付と署名を。あ、拇印でも構いませんよ?」
私は満面の笑みでペンを押し付けた。
会場の空気が、凍りつくのとはまた違う、奇妙な静寂に包まれる。
「お、おいミリオネ……何を言って……」
「聞こえませんでしたか? サインです。今すぐ、ここで。秒で終わらせましょう」
私のあまりの剣幕に、カイル王子がたじろぐ。
「き、貴様……悲しくないのか? 長年連れ添った私との婚約がなくなるのだぞ?」
「悲しい? まさか!」
私は思わず吹き出してしまった。
「嬉しいに決まっているではありませんか!」
「はあ!?」
「だって、殿下。貴方、私の誕生日に何をくださいました? 『君の瞳に乾杯』と書かれた自作の肖像画ですよ? あれの処理にどれだけ困ったと思っているのですか。屋敷の魔除けにもなりませんでしたよ」
「なっ……あれは傑作だったはずだ!」
「それに、貴方はデートのたびに遅刻をしてくるし、割り勘を要求するくせに注文は一番高いものを頼む。さらに言えば、政治の知識は五歳児並み。そんな貴方のお世話係から解放されるなんて、神に感謝したいくらいです!」
私は一気にまくし立てた。
積年の鬱憤が、ダムが決壊したように溢れ出す。
「リリィ様、貴女には感謝してもしきれません! この不良債権を……あ、失礼、王子を引き取ってくださるなんて! まさに聖女! 後光が見えますわ!」
「え、あ、あの……?」
リリィが目を白黒させている。
私は彼女の手をガシッと握りしめ、ブンブンと上下に振った。
「クーリングオフは不可ですからね! 絶対に返品しないでくださいね! お二人の幸せを、心の底から、内臓が飛び出るくらい祝福しております!」
言い切ると、私は呆然とするカイル王子の手を取り、無理やりペンを握らせて紙にサインを書かせた。
「はい、頂きました! 契約成立!」
私はその紙を大切に懐にしまうと、ドレスの裾を翻して踵を返した。
「ま、待て! ミリオネ!」
背後でカイル王子が何か叫んでいるが、もはや雑音にしか聞こえない。
「あ、そうだ」
私は一度だけ振り返り、会場にいる全員に向かって優雅にカーテシーをした。
「皆様、本日は良き日です! シャンパンを開けましょう! 私はこれから荷造りがありますので、これにて失礼いたします! ごきげんよう!」
私はスキップしそうな足取りで、出口へと向かった。
扉を開けると、そこには初夏の爽やかな夜風が吹いている。
「あー、自由って美味しい!」
私は夜空に向かって叫んだ。
さあ、忙しくなる。
王家からの正式な沙汰が下る前に、国外へ逃亡しなければ。
「追放」されるのを待つなんて三流のすることだ。
一流の悪役令嬢は、自ら「退去」するのだ。
屋敷に戻ったら、まずは金目の物を全て鞄に詰め込まなくては。
ドレス? いらない。
宝石? 現金化しやすいものだけ選別。
思い出の品? 燃えるゴミへ直行。
私の頭の中は、これからの輝かしい逃亡計画で埋め尽くされていた。
背後の会場から、遅れてどよめきが爆発するのが聞こえたが、私は二度と振り返らなかった。
王立学園の卒業パーティー会場。
その中央で、金髪碧眼の第一王子カイルが高らかに叫んだ。
広間に響き渡る声は、まるで演劇のクライマックスのように劇的で、そして恐ろしく空気が読めていなかった。
音楽は不自然に止まり、ダンスを踊っていた令息令嬢たちは、何事かとその場に凍りつく。
衆人環視の中、カイル王子の腕には、愛らしいピンク色の髪をした小柄な少女がしがみついていた。
男爵令嬢であり、最近「聖女」認定されたばかりのリリィだ。
彼女は怯えたように震えながら、上目遣いで王子を見上げている。
対して、その正面に立つ私――ミリオネは、手にした扇子をパチンと閉じた。
「……殿下。今、なんと仰いましたか?」
静まり返った会場に、私の冷静な声が響く。
カイル王子は鼻を鳴らし、勝ち誇ったように胸を張った。
「聞こえなかったのか? 婚約破棄だと言ったのだ! リリィに対する数々の陰湿な嫌がらせ、もはや看過できん!」
「嫌がらせ、ですか」
「とぼけるな! 教科書を破いただろう!」
「破いておりません」
「嘘をつくな! リリィが泣きながら訴えてきたのだぞ!」
「彼女の教科書は初歩的なミスが多すぎたので、赤ペンで修正を入れて差し上げただけです。破れたとしたら、彼女がその事実に耐えきれず自分で引き裂いたのでは?」
「なっ……屁理屈を!」
カイル王子が顔を真っ赤にして怒鳴る。
隣のリリィが「ひどい……ミリオネ様は、いつもそうやって私を馬鹿にして……」と涙目で訴える。
私は溜息を噛み殺した。
ああ、時間の無駄だ。
この卒業パーティーが終われば、明日からは王太子妃としての厳しい公務修行が始まる予定だった。
予算案のチェック、外交資料の暗記、そして何より、この頭の軽い王子のお守り。
想像するだけで胃に穴が空きそうな未来が待っていたのだ。
それが、婚約破棄?
「……つまり、殿下は私との結婚を白紙に戻したいと?」
「そうだ! 貴様のような冷血で可愛げのない女は、王妃にふさわしくない! これからはリリィのような、慈愛に満ちた女性こそが国母となるべきだ!」
カイル王子の声が、会場の隅々まで響き渡る。
周囲の貴族たちがざわめき始めた。
「おい、まさか本当に……」
「公爵家との婚約を、あんな理由で?」
「しかし、あのミリオネ様の気性の激しさは有名だし……」
ヒソヒソとした囁き声が聞こえてくる。
普通なら、ここで泣き崩れるか、あるいは激昂して掴みかかるのが「悪役令嬢」の役割なのだろう。
だが、私は違った。
私の脳内で、高速の計算が行われる。
婚約破棄が成立すれば、王太子妃教育は免除される。
公爵家の実家に戻ることになるが、父は放任主義だ。
つまり、自由。
毎朝五時に起きて王宮へ通う必要もなければ、カイル王子の珍妙なポエムにつきあわされるお茶会も消滅する。
さらに言えば、慰謝料も請求できる可能性がある。
(……え、最高じゃない?)
私の口角が、意思に反して上がりそうになるのを必死で堪える。
ここで笑っては不敬罪だ。
私は努めて深刻な顔を作り、震える声(演技)で問いかけた。
「……本気、なのですか? 後悔なさいませんか?」
「ふん、後悔などするものか! せいぜい惨めに泣き叫ぶがいい!」
「そうですか……わかりました」
私はスッと顔を上げ、懐から手帳と万年筆を取り出した。
「では、その言葉、撤回なさいませんね?」
「あ、ああ。二言はない!」
「証人はここにいる全員ですね?」
私は周囲を見渡して確認する。
貴族たちは戸惑いながらも、コクコクと頷いた。
「よし」
私は手帳にサラサラとメモを書き込むと、それを破り取ってカイル王子の前に突き出した。
「念のため、ここにサインをお願いします」
「は?」
カイル王子が間の抜けた声を出す。
リリィも涙を浮かべたまま「え?」と固まっている。
「婚約破棄の同意書です。口約束だけでは、後で『やっぱりやめた』と言われたら困りますから。さあ、日付と署名を。あ、拇印でも構いませんよ?」
私は満面の笑みでペンを押し付けた。
会場の空気が、凍りつくのとはまた違う、奇妙な静寂に包まれる。
「お、おいミリオネ……何を言って……」
「聞こえませんでしたか? サインです。今すぐ、ここで。秒で終わらせましょう」
私のあまりの剣幕に、カイル王子がたじろぐ。
「き、貴様……悲しくないのか? 長年連れ添った私との婚約がなくなるのだぞ?」
「悲しい? まさか!」
私は思わず吹き出してしまった。
「嬉しいに決まっているではありませんか!」
「はあ!?」
「だって、殿下。貴方、私の誕生日に何をくださいました? 『君の瞳に乾杯』と書かれた自作の肖像画ですよ? あれの処理にどれだけ困ったと思っているのですか。屋敷の魔除けにもなりませんでしたよ」
「なっ……あれは傑作だったはずだ!」
「それに、貴方はデートのたびに遅刻をしてくるし、割り勘を要求するくせに注文は一番高いものを頼む。さらに言えば、政治の知識は五歳児並み。そんな貴方のお世話係から解放されるなんて、神に感謝したいくらいです!」
私は一気にまくし立てた。
積年の鬱憤が、ダムが決壊したように溢れ出す。
「リリィ様、貴女には感謝してもしきれません! この不良債権を……あ、失礼、王子を引き取ってくださるなんて! まさに聖女! 後光が見えますわ!」
「え、あ、あの……?」
リリィが目を白黒させている。
私は彼女の手をガシッと握りしめ、ブンブンと上下に振った。
「クーリングオフは不可ですからね! 絶対に返品しないでくださいね! お二人の幸せを、心の底から、内臓が飛び出るくらい祝福しております!」
言い切ると、私は呆然とするカイル王子の手を取り、無理やりペンを握らせて紙にサインを書かせた。
「はい、頂きました! 契約成立!」
私はその紙を大切に懐にしまうと、ドレスの裾を翻して踵を返した。
「ま、待て! ミリオネ!」
背後でカイル王子が何か叫んでいるが、もはや雑音にしか聞こえない。
「あ、そうだ」
私は一度だけ振り返り、会場にいる全員に向かって優雅にカーテシーをした。
「皆様、本日は良き日です! シャンパンを開けましょう! 私はこれから荷造りがありますので、これにて失礼いたします! ごきげんよう!」
私はスキップしそうな足取りで、出口へと向かった。
扉を開けると、そこには初夏の爽やかな夜風が吹いている。
「あー、自由って美味しい!」
私は夜空に向かって叫んだ。
さあ、忙しくなる。
王家からの正式な沙汰が下る前に、国外へ逃亡しなければ。
「追放」されるのを待つなんて三流のすることだ。
一流の悪役令嬢は、自ら「退去」するのだ。
屋敷に戻ったら、まずは金目の物を全て鞄に詰め込まなくては。
ドレス? いらない。
宝石? 現金化しやすいものだけ選別。
思い出の品? 燃えるゴミへ直行。
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