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朔夜自身も受験勉強で忙しかったが、一真はそれ以上。以前とは違い少ない時間でも会っているからわかる。表に出さないようにしているが、明らかに疲労が溜まっている、このままだと、また限界を超えてしまう。秀にも「ほらほら、そろそろ一真止めないと大変だよ」と言われたため、朔夜も「休んで欲しい」言った。しかし、それはほとんど効果がない事にもすぐに気づいた。その時は「わかった」と返事をするのだが、予定を減らしている様子が全く見られない。
それなら、と。
「一真っ! 忙しいのはわかるけどっ。あのっ、たまには俺のことも、えっと、その……っ」
薫に言われたことを実践しようとしたが、今まで、このようなお願いをした事がない。勢いに任せて一気に言ってしまおうとしたが、恥ずかしくてうまく言葉にできない。しかし、これでも彼には伝わったようだ。
「くははっ! わかった。どこ行きたい?」
「えっ?」
「ちょっと先の話になるけれど、行こう、デートに」
軽いウインクとともに言われ、朔夜は慌てる。こう、すんなりと事が運ぶと思っていなかったのだ。
「でもっ、忙しいんじゃ……」
「んー。朔夜とデートできるって言うんだったら、予定なんて一つや二つすっぽかしたっていいくらい。俺にとっては、朔夜が最優先なんだよっ」
本当に大丈夫なのか、と思って確認すれば、それ以上の言葉が返ってきて、嬉しいのだが、どうしていいのかわからなくなる。とにかく慣れていないのだ。
「で、どうする?」
「……一真の行きたいところでいい」
「ホント? やった! じゃあ考えておく。朔夜の予定は?」
「あ、今のところ平気。模試もまだ先だし……」
そう告げると、一真は破顔し、「楽しみだなぁ」と言いながらも「あっ! ヤベっ!!」と携帯を見て焦る。次のスケジュールが迫っているのだろうと判断した朔夜は、「ほら、急いで」と先を促した。
一真は急いで佐伯の待つ車に乗り込み、すぐさま校門を出ていく。
見送りながら、朔夜は複雑な心境を抱えていた。
家に戻り、自室で問題集を開きはしたが勉強する気になれない。先ほどのことが頭を支配している。シャープペンをもったまま、心ここにあらずと言った様子で数分。どうしても乗り気になれず、問題を解くことを諦めた朔夜は、あるところに電話をかけた。
『へぇ。じゃあ、一真とデートすることになったんだ』
「デートってっ! 俺、そんなこと言ってないし」
『でも、一真が言ったんでしょ? なら、デートでいいじゃん』
朔夜の話を聞き、秀はあっさりと返す。それはそうなのだが、その単語が恥ずかしくて仕方がない。朔夜としてはデート云々より先に、少しでも休んで欲しいという気持ちの方が大きかったのだが。
『ふふっ。でも、これで一真も休むことができるね』
思っていたことがわかったのか、含んだ笑いとともに秀が言う。
「えっ? それってどういう……」
『あははっ。朔夜くん頭いいのにこう言うことは苦手なんだね。いい? 一真が一番休めるのは朔夜くんと同じ時間を過ごすこと。休憩とかそう言うんじゃないんだよ。今だって十分じゃないと思うけれど、移動中とかに仮眠を取って、倒れないようにはしてるはずだよ。前、俺にそう言ってたもん。心配かけたくないからって』
「うそ……」
『ホント。今は無理矢理にでもすべてこなそうとしてる。それが朔夜くんのためになるからって言ってたな。でも、その朔夜くん本人からデートに誘われたんだったら、一真はそっちを優先する。そのためにしっかり休むよ。だって、一真は朔夜くんのことしか考えてないし、好きな人の前でみっともない姿見せたくないって思うはず。結構格好つけるところあるからね』
秀の言葉に、妙に納得してしまう。そこで、急に薫に言われたことを思いだした。その時はただ、朔夜のもっと一緒にいたいという気持ちに対しての提案だと思っていたが、秀の言う思惑が含まれていたのだとしたら。
「そっかぁ……」
ようやく納得し、つぶやく。
『やっとわかった?』
「うん」
秀の問いに素直に返し。
「どこに連れて行ってくれるのか、楽しみにしてる」
と、答える。
『うん、それがいいよ。心配する気持ちはわかるけれど、素直に楽しむのが一番』
「だね。ありがとう」
そう言って、電話を切る。話を聞いて貰ったことにより、絡まっていた糸がほどけたように、朔夜の心はスッキリしていた。
「よしっ! やるかっ」
気合いを入れ、問題集と向き合う。一真の頑張りに負けないように。
この日、朔夜は日付が変わっても勉強を続けた。
それなら、と。
「一真っ! 忙しいのはわかるけどっ。あのっ、たまには俺のことも、えっと、その……っ」
薫に言われたことを実践しようとしたが、今まで、このようなお願いをした事がない。勢いに任せて一気に言ってしまおうとしたが、恥ずかしくてうまく言葉にできない。しかし、これでも彼には伝わったようだ。
「くははっ! わかった。どこ行きたい?」
「えっ?」
「ちょっと先の話になるけれど、行こう、デートに」
軽いウインクとともに言われ、朔夜は慌てる。こう、すんなりと事が運ぶと思っていなかったのだ。
「でもっ、忙しいんじゃ……」
「んー。朔夜とデートできるって言うんだったら、予定なんて一つや二つすっぽかしたっていいくらい。俺にとっては、朔夜が最優先なんだよっ」
本当に大丈夫なのか、と思って確認すれば、それ以上の言葉が返ってきて、嬉しいのだが、どうしていいのかわからなくなる。とにかく慣れていないのだ。
「で、どうする?」
「……一真の行きたいところでいい」
「ホント? やった! じゃあ考えておく。朔夜の予定は?」
「あ、今のところ平気。模試もまだ先だし……」
そう告げると、一真は破顔し、「楽しみだなぁ」と言いながらも「あっ! ヤベっ!!」と携帯を見て焦る。次のスケジュールが迫っているのだろうと判断した朔夜は、「ほら、急いで」と先を促した。
一真は急いで佐伯の待つ車に乗り込み、すぐさま校門を出ていく。
見送りながら、朔夜は複雑な心境を抱えていた。
家に戻り、自室で問題集を開きはしたが勉強する気になれない。先ほどのことが頭を支配している。シャープペンをもったまま、心ここにあらずと言った様子で数分。どうしても乗り気になれず、問題を解くことを諦めた朔夜は、あるところに電話をかけた。
『へぇ。じゃあ、一真とデートすることになったんだ』
「デートってっ! 俺、そんなこと言ってないし」
『でも、一真が言ったんでしょ? なら、デートでいいじゃん』
朔夜の話を聞き、秀はあっさりと返す。それはそうなのだが、その単語が恥ずかしくて仕方がない。朔夜としてはデート云々より先に、少しでも休んで欲しいという気持ちの方が大きかったのだが。
『ふふっ。でも、これで一真も休むことができるね』
思っていたことがわかったのか、含んだ笑いとともに秀が言う。
「えっ? それってどういう……」
『あははっ。朔夜くん頭いいのにこう言うことは苦手なんだね。いい? 一真が一番休めるのは朔夜くんと同じ時間を過ごすこと。休憩とかそう言うんじゃないんだよ。今だって十分じゃないと思うけれど、移動中とかに仮眠を取って、倒れないようにはしてるはずだよ。前、俺にそう言ってたもん。心配かけたくないからって』
「うそ……」
『ホント。今は無理矢理にでもすべてこなそうとしてる。それが朔夜くんのためになるからって言ってたな。でも、その朔夜くん本人からデートに誘われたんだったら、一真はそっちを優先する。そのためにしっかり休むよ。だって、一真は朔夜くんのことしか考えてないし、好きな人の前でみっともない姿見せたくないって思うはず。結構格好つけるところあるからね』
秀の言葉に、妙に納得してしまう。そこで、急に薫に言われたことを思いだした。その時はただ、朔夜のもっと一緒にいたいという気持ちに対しての提案だと思っていたが、秀の言う思惑が含まれていたのだとしたら。
「そっかぁ……」
ようやく納得し、つぶやく。
『やっとわかった?』
「うん」
秀の問いに素直に返し。
「どこに連れて行ってくれるのか、楽しみにしてる」
と、答える。
『うん、それがいいよ。心配する気持ちはわかるけれど、素直に楽しむのが一番』
「だね。ありがとう」
そう言って、電話を切る。話を聞いて貰ったことにより、絡まっていた糸がほどけたように、朔夜の心はスッキリしていた。
「よしっ! やるかっ」
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この日、朔夜は日付が変わっても勉強を続けた。
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