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Chapter1
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いくら彼が望んだからとはいえ、病院に連れて行かなかったことを後悔したが。どうやら、『熱中症の一歩手前』で手を差し伸べることができたようだ。
家に連れて帰り、衣服を緩め。常備していたスポーツドリンクを取り出し、飲ませる。これで症状が悪化するようだったらすぐにでも病院へ、と思ったが、なんとか落ち着き、今はベッドの上で眠っている。
体力の消耗は相当なものだろう。それなら、休めるときに休んで、回復してから『理由』を尋ねればいい。
に、しても。
(……っ)
目のやり場に困る。職業柄、男の身体は見慣れているはずなのに。
その、白さが。
首元を緩めたときに触れた肌の、肌理の細かさが。
何故か、妙な気分を掻き立てられる。
そして、もう一つ。先ほどから、譫言のように紡がれる途切れ途切れの言葉。
何度か耳を寄せ、頭の中で繋ぎ。纏まった単語が、『はまだ』。
……今でも目尻に浮かぶ水分は。その名を持つものが原因なのか。
「くそっ!」
彼が紡いだ名が何故か気にくわなくて、苛立ちを募らせる。それでも、様子を伺うことは怠らない。
首筋に触れる。伝える熱は高めだが、先ほどよりは穏やかに。そのことにほっ、と息をつくとほぼ同時。
「ん、あ……っ」
触れた指がくすぐったいのか、彼が発した声に。
ドキリ、と。
鼓動が一気に早くなる。
慌ててそこから指を離し、治まることを知らない脈動を確かめるように、手のひらで胸を押しつける。
彼自身も、わからない。何故、このような事態に陥っているのか。
鼓動が落ち着いたところでもう一度、彼の顔を見つめる。火照るような感じは、もう見受けられないが。
滲んでいた水分が。自然と、下に落ちていく。
その様子に胸が締めつけられるような感覚を覚え、男は表情を歪めた。
眠っているはずなのに、止まらない、涙。原因は、おそらく名前の主。
一体、何があったのか知りたい。そう思って連れてきたはずなのに。理由を簡単に聞いてしまっていいのか。そんなことを考え始めている。
もちろん、あえて聞かないというのも選択の一つ。だが。それではまた、このように灼熱の街を彷徨い、命を危険に晒すのではないか。
初めて会った相手にここまで気を使うのもおかしな話だが。何故か、このまま帰してはいけないような気がした。
……そうなると。
彼が眠っていることを確認して、スマホをタップし、コール音を聞いていると。
『はい。……どうしたの?陸ちゃん』
少し経って声が届く。
『陸ちゃん』と呼ぶのは低い声だが、相手はこれが通常。今更違和感を覚える事もなく、男は。
「あ。ママ? 確か今日、店、休みだよね。……ちょっと、相談があるんだけど」
そう切り出す。
『あら、珍しいわね。天下の間宮陸仁とあろう人があたしに相談だなんて。……何? おっきな猫でも拾った??』
「へっ?」
『んふっ。そんなところでしょ? いいわ。陸ちゃんの家でいいのよね、今から行く。……ただ、ダーリンも一緒でいいかしら?』
さすが、と言うべきか。ほとんど何も話していないというのに、相手は状況を把握し、今から来てくれるという。
間宮は快く了承し、電話を切った。
(確かに、ママが直接聞いてくれた方が良いかもしれないな……)
まだ、眠る彼を見つめ、思う。
状況は、全く掴めないままだったが。直感。今までの経験上、それはほぼ間違っていない。
家に連れて帰り、衣服を緩め。常備していたスポーツドリンクを取り出し、飲ませる。これで症状が悪化するようだったらすぐにでも病院へ、と思ったが、なんとか落ち着き、今はベッドの上で眠っている。
体力の消耗は相当なものだろう。それなら、休めるときに休んで、回復してから『理由』を尋ねればいい。
に、しても。
(……っ)
目のやり場に困る。職業柄、男の身体は見慣れているはずなのに。
その、白さが。
首元を緩めたときに触れた肌の、肌理の細かさが。
何故か、妙な気分を掻き立てられる。
そして、もう一つ。先ほどから、譫言のように紡がれる途切れ途切れの言葉。
何度か耳を寄せ、頭の中で繋ぎ。纏まった単語が、『はまだ』。
……今でも目尻に浮かぶ水分は。その名を持つものが原因なのか。
「くそっ!」
彼が紡いだ名が何故か気にくわなくて、苛立ちを募らせる。それでも、様子を伺うことは怠らない。
首筋に触れる。伝える熱は高めだが、先ほどよりは穏やかに。そのことにほっ、と息をつくとほぼ同時。
「ん、あ……っ」
触れた指がくすぐったいのか、彼が発した声に。
ドキリ、と。
鼓動が一気に早くなる。
慌ててそこから指を離し、治まることを知らない脈動を確かめるように、手のひらで胸を押しつける。
彼自身も、わからない。何故、このような事態に陥っているのか。
鼓動が落ち着いたところでもう一度、彼の顔を見つめる。火照るような感じは、もう見受けられないが。
滲んでいた水分が。自然と、下に落ちていく。
その様子に胸が締めつけられるような感覚を覚え、男は表情を歪めた。
眠っているはずなのに、止まらない、涙。原因は、おそらく名前の主。
一体、何があったのか知りたい。そう思って連れてきたはずなのに。理由を簡単に聞いてしまっていいのか。そんなことを考え始めている。
もちろん、あえて聞かないというのも選択の一つ。だが。それではまた、このように灼熱の街を彷徨い、命を危険に晒すのではないか。
初めて会った相手にここまで気を使うのもおかしな話だが。何故か、このまま帰してはいけないような気がした。
……そうなると。
彼が眠っていることを確認して、スマホをタップし、コール音を聞いていると。
『はい。……どうしたの?陸ちゃん』
少し経って声が届く。
『陸ちゃん』と呼ぶのは低い声だが、相手はこれが通常。今更違和感を覚える事もなく、男は。
「あ。ママ? 確か今日、店、休みだよね。……ちょっと、相談があるんだけど」
そう切り出す。
『あら、珍しいわね。天下の間宮陸仁とあろう人があたしに相談だなんて。……何? おっきな猫でも拾った??』
「へっ?」
『んふっ。そんなところでしょ? いいわ。陸ちゃんの家でいいのよね、今から行く。……ただ、ダーリンも一緒でいいかしら?』
さすが、と言うべきか。ほとんど何も話していないというのに、相手は状況を把握し、今から来てくれるという。
間宮は快く了承し、電話を切った。
(確かに、ママが直接聞いてくれた方が良いかもしれないな……)
まだ、眠る彼を見つめ、思う。
状況は、全く掴めないままだったが。直感。今までの経験上、それはほぼ間違っていない。
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