近未来判事「タクヤ」

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事件簿002 『縛られ地蔵』その1

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今日は立春らしい。
確かに裁判所の桜がもう満開だった。

でも子供の頃は、2月に咲くのは梅だったような気がする。
ボクの誕生日がくる3月が桜じゃなかったっけ?
そういえば、今の日本はもう亜熱帯になったと気象専門家が言っていた。

手元のスイッチを入れると、寝室の壁に朝のニュースが映し出される。

「・・・この証拠無き強盗、果たして凶器は見つかるのでしょうか?」

枕元の飲料チューブからコーヒー風ミネラルウォーターを飲みながらボクはつぶやいた。
「どっかに埋めたに決まってんじゃん」

まだ田園風景が残る閑静な郊外で真夜中に起きた強盗事件。

被害者の女性は、車で通りかかった付近住民の通報ですぐに病院に運ばれたが、首の動脈を切られていて、出血多量で亡くなった。

そして、血だらけのまま車を運転していた犯人が事件2時間後に緊急検問で逮捕された。

被害者家族の証言で、いつも身に着けていたブランド物の高級ネックレスが無くなっていることから、強盗殺人事件として捜査が開始されたが・・・

「智恵、お前ならどこに隠す?」
ボクの声が聞こえているのに知らん顔してイスに座っている。

元々返事を期待しているわけじゃないが、コイツの冷静な表情は、書記官サエを連想させてイライラさせる。

「たまには自分で考えたら?」

そう言って悠然と立ち去るサエのように智恵はイスから立ち上がってボクに背中を向けると、
隣のリビングに入りお気に入りのソファにピョンと飛び乗った。

「俺もネコになりてぇよ・・・」

ソファで毛繕いを始めたのはボクのプライベートのパートナー。

5歳のシャムネコ(♀)智恵。

膨大な量の仕事と、選択の余地がほとんど無かったとはいえ、苦労を避けて判事を択んだ自分の間抜けさと、書記官サエの冷めた視線に晒されるストレス三昧の毎日に癒しを与えてくれる・・・はず。

そう信じたボクはペット専門ネットショップの『本日までの購入者にもれなくお好きな航空会社のマイレッジポイント20倍!』の文字に、迷い無く購入ボタンを押した。

そしてボクは、めでたく6万マイルのマイレッジと更なるストレスの種を手に入れた。

男性の平均結婚年齢が35歳を越えたのが5年前。もうすぐ35歳のボクもモチロン独身。

昔は専業主婦という女性がいて、家に帰ると家庭料理なるものが待っていたらしい。
「お前が料理作って家で待ってるなら、ボクの仕事の効率も上がるかもなぁ。」

「にゃ~」

さて、仕事に行こう・・・。
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