近未来判事「タクヤ」

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事件簿004 『小間物屋』その9

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小田原で亡くなった若狭屋にはおよしという妻がいた。
男ならすれ違えば誰もが振り替える絶世の美女。
誰もがうらやむ妻だった。

およしは、予定日を過ぎても江戸に戻ってこない若狭屋を心配していた。

「誰かを途中まで様子を見に行かせたほうがいいかしら・・・。」
そんなとき、出入りの薬売りがやってきて、およしに聞いた。

「ご主人のお具合いはいかがですかな?」

「主人はまだ京都から戻っておりませんが・・・。」

「おや?そうですかぁ。実は小田原の近くでご主人にお会いしましてね。」

「えっ?!それはいつのことですか?」

薬売りは、仕入に行った伊豆から帰る途中、小田原あたりの街道で、フラフラと歩く若狭屋と会ったというのだ。

しばらく一緒に歩きながら、箱根で追い剥ぎにあった顛末を聞いたらしい。

『身ぐるみ剥がされ、商品も金も盗まれ、裸で木に縛られ逃げることも出来ず、ついには雪の中で命まで消えかけたところに、通りかかった男性が助けてくれました。あの人は神様の使いに違いありません。』
そう言って涙を流していたそうだ。

「風邪をひかれたようで、小田原で少し休んでから戻るとおっしゃってました。気にはなったんですが、わたしも急いでいたので先に行かせてもらいました。」

およしはすぐに籠を呼ぶと大急ぎで小田原に向かった。
小田原に着くと、宿屋をくまなく探したが、どこにも主人の姿は見当たらない。
「どこに行ったのかしら・・・。」
最後の宿屋でも空振りに終わってしまい、途方にくれていると、奥から出てきた仲居さんが遠慮がちに声をかけてきた。

「もしかして若狭屋さんのお身内の方ですか?」

「はい。妻です。」

「実は10日ばかり前に宿に着くや否や倒れてしまった人がいましてね。」

「えっ?!それで、その人は?!」

「その日のうちに亡くなってしまいました。数日後にお知り合いらしい方がお越しになったので、若狭屋さんのお身内かって聞いたら、違うって。」

「主人じゃなかった・・・?」

「遺体が腐るから火葬にされて、その方が遺骨をお持ち帰りになったんです。」

「・・・そうですか。」

「てっきり若狭屋さんだと思ったんだけど違ってたんだねぇ。」

「え?どうしてうちの人だと思ったんですか?」

「いつもの宿が満員だって言って、一度だけうちに泊まった人がいてね。左手の甲にある大きな亀の甲羅のようなあざが珍しくて、聞いたら長寿のしるしだって、自慢してたんだよ。珍しいあざだったから覚えてたんだよねぇ。若狭屋って聞いたことのある店の名前だったし。」

「えぇ!そうです!それは間違いなく主人です!」

「その行き倒れのご遺体にも同じあざがあったのよ。」

「!!!」
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