近未来判事「タクヤ」

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事件簿012 『火事息子』その12

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近所の火事は、数軒の家を焼いただけでなんとか鎮火した。
伊勢屋には何も被害が無かったが、火事の発生を伝え聞いた取引先や、親戚が入れ替わり立ち代り見舞いにやってきた。

取引先の紀伊国屋からは、父が風邪で臥せっているからと、息子が代理でやってきた。
その立派な立ち振る舞いを見ると、年恰好が近いこともあり、どうしても自分の息子、藤三郎と比べてしまう。

「紀伊国屋さんは、立派な息子さんをもたれて本当に羨ましい。それにひきかえ、うちの息子は・・・。はぁ~・・・。」

ため息をついている伊勢屋に、番頭の佐兵衛が遠慮がちに声をかけた。

「あ、あの~旦那様・・。」

「ああ、佐兵衛か。さっきはご苦労だったね。」

佐兵衛は何か言いたげな様子で、上を見たり横を見たり、どうにも落ち着かない。

「なんだね。何かあるならさっさと言いなさい。」

「は、はい。先ほど蔵の目塗りを手伝ってくれた、とうさぶ・・あ、いや若い衆に、旦那様から御礼を言っていただけたらと思いまして。」

「おお、そうだったね。すぐに御礼をしなければ。ここにお通ししなさい。」

「はい、まぁ、その~、そうなのですが・・。」

「佐兵衛。お前、火事騒ぎで呆けたのか?それとも蔵の屋根から落ちて頭でも打ったのか?」
 
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