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第四話 フルフル降臨

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「いいね、恨みっこなしだよ?」

他の二人に確認して、皆でフルフルスイッチの赤いボタンに人差し指を乗せる。
見れば見るほど自爆スイッチにしか見えないけど……もう後には退けない。

「「「せーーーーーの!」」」

ポチッ!

足下にあった雲が、私達の身体を通り抜けてフワフワと空に上っていく。
明るかった空が、一面の曇り空に変わる。

……気付けば私達は見覚えのある場所に立っていた。
ちょっと錆びたブランコに、シーソー。誰かが忘れて行ったスコップと、小さなバケツが転がっている砂場。
学校の近くにある、三角公園の真ん中だ。私たちの他に誰もいない、静かな公園。

「えっ……空の上だと思っていたのに、こんな近所だったの?」

私が呆然としながら呟くと、栗原さんが空を指差して叫んだ。

「あれを見て!」

私達の遥か頭上から、悪魔フルフルがゆっくりと、この公園に降りようとしている!

「貴様ら、ワシが遠くに飛ばしたはずなのに、なぜこんなところにいる」

着地したフルフルは、私達一人一人に、にらみをきかせた。

遠くで見た時は、鹿の悪魔なんて……と思ったけど、こうして間近に見ると、けっこう怖い。大きさも、たぶん三メートルくらいはある。これを封じないといけないの?



【フルフルを三角形で囲むべし】



ふと、雲の上で拾った本の内容が頭に浮かぶ。
そうだ!この三角公園なら、封印に使えるんじゃ……

「みんな!公園の角に行って、呪文を使って!」

レミナはハッとしたように右側に走りだした。
栗原さんはもう左側の角に立っている。
私も後ろ側の角に走って、大きな声を上げた。


「テイヘンカ!」


レミナも叫ぶ。


「ケルタ!」


栗原さんも。


「カサワルニ!」


一瞬、時間が止まったように感じた。
その直後、三角公園の角から真っ白な光が溢れ出して、公園の真ん中に集まった。

そして悪魔が悲鳴を上げる。

「ウガアアアアアア!!どうして人間がその呪文を……!!」

もだえ苦しむフルフルがガクリと膝をつき、続けて地面に両手をついた。光に包まれながら、少しずつその容姿は変わっていく。鹿の角は消え、黒い翼が白くなり始めた。
どこからか白い衣が現れると身体に巻きついて、頭に天使の輪を抱く、清らかで美しい姿に……



ん……?

レミナがフルフルに向かってトコトコと歩いている。
えっ?えっ?何が起こってるの?

……と思ったら、彼女は唐突に変身中の天使の背中をさすり始めた。

「ちょっと!何してるの!」

と声を掛けると、レミナはきょとんとした顔で

「えっ?だって本に書いてあったでしょ?

その姿は天使に変わり】

って」



いやいや、その「さすれば」は、そういう意味じゃないからーーー!!



天使に変わりそうだった悪魔の動きがピタリと止まる。
そして時間が巻き戻るように、角が生え始め、白い翼は黒く染まり、完全に元の鹿人間みたいな姿に戻ってしまった。

天を仰ぐフルフルがひときわ大きな雄叫びを上げると、彼を包んでいた白い光が弾き飛ばされるようにこちらに跳ね返り、私達三人に命中する。

ま、眩しい……!!
誰か、助けて……!!
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