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第十三話 天使の作戦会議&ティータイム

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私ことマユと栗原さん、レミナの三人は今、エンゼリア三階にある記憶レストランに来ている。
『川越くん救助作戦』の会議をするためだ。

普通だったら「急いで助けなきゃ!」って、あわてるところだけど……
私達は神様にお願いすれば、いつでも行きたい時間、行きたい場所に送り届けてもらえる。

だから、打ち合わせをして、しっかり作戦を立ててから、昨日、川越くんが襲われた直後の校舎裏に戻ることにしたのだ。
しかし…

「ねえ、何だか緊張感がなさすぎない?」

他の二人の前には、会議用のメモや筆記用具の他に、お菓子や飲み物が置かれている。

「せっかくここに来たんだもん、食べたいものを注文しなくちゃ!」

レミナはご機嫌だ。栗原さんも私をさとすように言う。

「食べ物屋さんに入って何も注文しないのは、むしろ失礼だと思うわよ?」

う~ん、そういうモノ、なのかな?
少し迷ったあと、私も自分の分を注文する。

私の前には、チョコクッキーと、ハチミツ入りの牛乳。
栗原さんの前には、フロランタンとカフェオレ。
レミナの前には、黒豆おかきとほうじ茶。

それぞれが出そろった。こうして並ぶと、どれも美味しそうに見える。

「マユちんのクッキー、手作り感あるねぇ」

「うん、これ、この前、料理部の実習で作ったんだ。会心の一作だったから、皆にも食べてほしいと思って」

「あ……あの、よかったら、私のも食べて。前にお土産でもらって、美味しかったの」

「じゃあ、皆でシェアしよっかぁ!じゃあ、まず、マユちんのクッキーから、いただきま~す!
…………んん、美味しい~!サックサク!」

もう、作戦会議だかなんだか分からない。
でも、栗原さんのフロランタンは甘さが上品で、表面に載ったスライスアーモンドが香ばしくてパリパリで美味しい。レミナの黒豆おかきもサクふわで、塩味と、たまに入る黒豆の固さがアクセントになっていてクセになる。

こうして、おやつ交換会を一通り楽しんだ後、私達はいよいよ作戦会議に入った。

「なんとかしてフルフルを封印しないと……でも竜巻がジャマだよね。逆回転で消しているうちに、フルフルに逃げられちゃう。どうしたらいいのかな……?」

そう私が言うと、腕を組んで、右手をあごの下に当てている栗原さんがこう答えた。

「今回は封印は諦めた方がいいと思う。たぶん今の私達では、まだ経験が足りない気がする。
天使の姿が人間に見えないのなら、川越くんを尾行して、どんなウソをついているのか、調べるといいんじゃないかな。
もし、それが実際にかなえられそうなウソなら、かなえてあげればいいし、良くないウソなら反省してもらえばいい」

「尾行だって!すごーい!なんだか探偵みたい!」

レミナは興奮している。

とりあえず、これから何をしたらいいか、方針は決まった。
『善は急げ』というし、さっそくフルフルに襲われた後の時間に戻って、川越くんを尾行することにしよう!






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