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第十八話 マルの願い事

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レミナと栗原さんが楽しそうに帰っていったあと、私は一人残って、ハナさんにたずねる。

「ハナさん、マルはどうしてるのかな?今日も仕事なの?忙しいの?」

「ええ、今日も仕事で大忙しなのナン」

「ねえ、何回か天国に来てて気が付いたんだけど……
仕事をしてる動物と、してない動物がいるのは、なぜ?マルやハナさんや、店員さんは頑張って働いてるのに、他の動物達はのんびり過ごしてるように見えるんだけど……」

それは以前からの疑問だった。
マルに会いたくて天国に来ているのに、ぜんぜん会えなくて、他の働いてない動物たちとは、何度も来るうちに顔見知りになっているくらいなのだ。

「……あのですね、働いている動物は、神様にお願いがあるのナン」

「お願い?」

「そうナン。……ここに来ている動物は、皆、長くても短くても精一杯頑張って、一生を終えているから、本当は働かなくていいし、ずっとここで楽しく過ごしてていいのナン。

だけど、どうしても捨てきれない願い事がある動物は、働いているのナン。仕事をすると、神様が特別に願いをかなえてくれるのナン。特に願い事が大きかったり、少しでも早くかなえて欲しい場合は、忙しくて大変な仕事を任されるし、遅刻や早退、欠勤も、よほどの事情がなければ許してもらえないのナン」

「じゃあ、マルも何か大きな願いがあるの?何を願ってるの?」

「それはハナも知らないのナン。願い事を他の誰かに言うのは禁止されてるのナン。
もしも言ったら、願い事がかなわなくなってしまうから……
だからマユさんも、マルくんの願いは聞かないであげてほしいのナン」

「そっか…うん、分かった」

事情は分かった。分かったけど、なんだか寂しくなってきた。
マルが何を願っているのか知らないけど、あんなに頑張っているんだから、ぜひともかなえて欲しいと思う。邪魔になることもしたくない。だけど、そうなると、やっぱりマルにはあまり会えないんだ。

神様が願いを一つ、かなえてくれると聞いた時、真っ先にマルとゆっくり会わせてほしいと思った。だけど、それって、マルが希望をかなえるのを、邪魔しちゃう?かなうのが遅くなったり、最悪、かなわなくなっちゃうかも……

さっきまでの浮かれた気持ちが、しおしおとしぼんでいった。
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