34 / 47
第三十二話 カラスの尾行
しおりを挟む
あれから数日。フルフルも、翼を持つ悪魔達も、最近は何も仕掛けてこない。平和な朝だ。
いつものように、ママが用意してくれた朝食を食べ、歯を磨いて、身支度をする。ちなみに今朝の朝食は、コーンスープと、外はカリカリ、中はフワフワの厚切りトーストにあんずジャム、目玉焼き一個分と、ウィンナー三本、ひよこ豆の入ったサラダ。朝ごはんはしっかり食べるのが、我が家の家訓だ。
家を出て少し歩くと、左手に見えるアパートから、小柄な女の子が出てくるのが見えた。
この間、黒い翼の悪魔に狙われた女の子、ヒマリちゃんだ。トテトテと階段を下りている。アパートの出口で、ちょうど彼女とすれ違う形になった。
「あっ!マユお姉さん、おはようございます!」
笑顔で挨拶してくるヒマリちゃんは、やっぱりカワイイ。
「おはよう、ねえ、あれから、何か変わったことはあった?」
何気に声をかけると、彼女の表情が、少し曇った。
「それが……」
急にキョロキョロし始めるヒマリちゃんが、ある一点を見つめると、その先にある電線に、カラスが一羽とまっていた。こちらが見ているのに気付いたのか、カアカア鳴きながら飛び去っていく。
「学校の行き帰り、いつも、ああやってカラスが近くに来るのが、なんか怖くて。大きいし、羽根も黒いし……」
カラス……あの時、ヒマリちゃんを襲っていた悪魔の翼は黒かった。もしかして、まだこの子を狙ってるんだろうか。
「そうなんだ……あのね、よかったら私の友達も一緒に相談に乗ってあげるから、お昼休み、給食を食べ終わったら図書室に来てもらえるかな?」
「あ、はい、じゃあ、帰る前に図書室に行きます」
レミナとアヤセちゃんの了解は取ってないけど、話せばきっと協力してくれるはず。
私達は校舎の玄関前で別れ、それぞれの教室に向かった。
***
「皆さん、こんにちは、私、ヒマリです。今日はよろしくお願いします」
「この人はアヤセちゃん、この人はレミナだよ」
「こんにちは」
「よろしくねぇ!」
二人にヒマリちゃんのことを相談すると、快くOKしてくれた。わたしたち四人は、図書室の一角にあるテーブル席に、本を読むふりをしながら座っている。屋上に集まることも考えたけど、外にいるとカラスが来るかもしれないし、今は危険だ。
アヤセちゃんは、さっそくヒマリちゃんに、事情を聞いて、考え込む。
「なるほど……カラスにつけ狙われてるのね」
その横でレミナが、ノンキな調子で胸をポンと叩いた。
「大丈夫だよ! あたしたちが守ってあげる!」
「しー……、レミナ、声が大きいよ」
ここは大声禁止の図書室、あわててレミナをたしなめる私。
「これからしばらくは、私が一緒に登校しようと思うんだ。だけど帰りが問題なんだよね。二年生と四年生じゃ、下校時間が違うから……」
「そうだ、うちのお父様の運転手に送ってもらえないか、頼んでみようかしら」
「えっ! アヤセちんの家、お抱え運転手さん、いるの!?」
私も驚いた。彼女の家がお金持ちなのは知ってたけど、アヤセちゃん本人はいつも徒歩で通学していたからだ。
「だって、歩いて五分もかからない場所だもの。それより、ねえ、ヒマリちゃん、どうかな?」
「それはいいですけど…でも、いいんですか? ウチ、小さいアパートだし……わざわざ車で送ってもらうとか……」
うつむくヒマリちゃん。どうも気おくれしているみたい。
「遠慮しなくて大丈夫よ。それにずっとじゃないから。大人の人に相談して、なるべく早くカラスが来ないようにしてもらうからね」
そう言うと、アヤセちゃんはスマホを取り出し、自宅に電話した。しばらくすると、校門の横に高級そうな車が停まり、ヒマリちゃんを乗せて走り去っていった。手際が良すぎて、庶民の私とレミナは、ぼんやりとその様子を見守るだけだった。
*****
近況ボードにも書きましたが、今日で第一回きずな児童書大賞の投票期間が終了しますね。でも、全然期間内に書き終われませんでした。本当にすみません。
ですが、お気に入りに入れて下さった方、投票して下さった方、エールを送って下さる方、しおりを挟んで下さる方、何より本作を読んで下さっている方がいらっしゃって、毎日救われる気持ちになった8月でした。その方々の為にも、絶対にエタることはしません。最後まで書ききります。
しばらく時間がかかりますが、もしよろしければ、最後まで見届けて頂けると、とても嬉しいです。
いつものように、ママが用意してくれた朝食を食べ、歯を磨いて、身支度をする。ちなみに今朝の朝食は、コーンスープと、外はカリカリ、中はフワフワの厚切りトーストにあんずジャム、目玉焼き一個分と、ウィンナー三本、ひよこ豆の入ったサラダ。朝ごはんはしっかり食べるのが、我が家の家訓だ。
家を出て少し歩くと、左手に見えるアパートから、小柄な女の子が出てくるのが見えた。
この間、黒い翼の悪魔に狙われた女の子、ヒマリちゃんだ。トテトテと階段を下りている。アパートの出口で、ちょうど彼女とすれ違う形になった。
「あっ!マユお姉さん、おはようございます!」
笑顔で挨拶してくるヒマリちゃんは、やっぱりカワイイ。
「おはよう、ねえ、あれから、何か変わったことはあった?」
何気に声をかけると、彼女の表情が、少し曇った。
「それが……」
急にキョロキョロし始めるヒマリちゃんが、ある一点を見つめると、その先にある電線に、カラスが一羽とまっていた。こちらが見ているのに気付いたのか、カアカア鳴きながら飛び去っていく。
「学校の行き帰り、いつも、ああやってカラスが近くに来るのが、なんか怖くて。大きいし、羽根も黒いし……」
カラス……あの時、ヒマリちゃんを襲っていた悪魔の翼は黒かった。もしかして、まだこの子を狙ってるんだろうか。
「そうなんだ……あのね、よかったら私の友達も一緒に相談に乗ってあげるから、お昼休み、給食を食べ終わったら図書室に来てもらえるかな?」
「あ、はい、じゃあ、帰る前に図書室に行きます」
レミナとアヤセちゃんの了解は取ってないけど、話せばきっと協力してくれるはず。
私達は校舎の玄関前で別れ、それぞれの教室に向かった。
***
「皆さん、こんにちは、私、ヒマリです。今日はよろしくお願いします」
「この人はアヤセちゃん、この人はレミナだよ」
「こんにちは」
「よろしくねぇ!」
二人にヒマリちゃんのことを相談すると、快くOKしてくれた。わたしたち四人は、図書室の一角にあるテーブル席に、本を読むふりをしながら座っている。屋上に集まることも考えたけど、外にいるとカラスが来るかもしれないし、今は危険だ。
アヤセちゃんは、さっそくヒマリちゃんに、事情を聞いて、考え込む。
「なるほど……カラスにつけ狙われてるのね」
その横でレミナが、ノンキな調子で胸をポンと叩いた。
「大丈夫だよ! あたしたちが守ってあげる!」
「しー……、レミナ、声が大きいよ」
ここは大声禁止の図書室、あわててレミナをたしなめる私。
「これからしばらくは、私が一緒に登校しようと思うんだ。だけど帰りが問題なんだよね。二年生と四年生じゃ、下校時間が違うから……」
「そうだ、うちのお父様の運転手に送ってもらえないか、頼んでみようかしら」
「えっ! アヤセちんの家、お抱え運転手さん、いるの!?」
私も驚いた。彼女の家がお金持ちなのは知ってたけど、アヤセちゃん本人はいつも徒歩で通学していたからだ。
「だって、歩いて五分もかからない場所だもの。それより、ねえ、ヒマリちゃん、どうかな?」
「それはいいですけど…でも、いいんですか? ウチ、小さいアパートだし……わざわざ車で送ってもらうとか……」
うつむくヒマリちゃん。どうも気おくれしているみたい。
「遠慮しなくて大丈夫よ。それにずっとじゃないから。大人の人に相談して、なるべく早くカラスが来ないようにしてもらうからね」
そう言うと、アヤセちゃんはスマホを取り出し、自宅に電話した。しばらくすると、校門の横に高級そうな車が停まり、ヒマリちゃんを乗せて走り去っていった。手際が良すぎて、庶民の私とレミナは、ぼんやりとその様子を見守るだけだった。
*****
近況ボードにも書きましたが、今日で第一回きずな児童書大賞の投票期間が終了しますね。でも、全然期間内に書き終われませんでした。本当にすみません。
ですが、お気に入りに入れて下さった方、投票して下さった方、エールを送って下さる方、しおりを挟んで下さる方、何より本作を読んで下さっている方がいらっしゃって、毎日救われる気持ちになった8月でした。その方々の為にも、絶対にエタることはしません。最後まで書ききります。
しばらく時間がかかりますが、もしよろしければ、最後まで見届けて頂けると、とても嬉しいです。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる