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6話、弟。
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玄関のドアを開けると、リビングに明かりがついている。「ただいま」と声をかける。
バイトがある日は、たいてい姉ちゃんのほうが先に寝室で寝ているのだけど、今夜はまだ眠っていないのだろうか。
玄関の左側はトイレと浴室。右手側に、キッチンダイニング。その奥の洋間がリビング、その左側に寝室がある。2DKのアパートの一室が、俺と姉ちゃんの城だ。通勤と通学に便利だからと、実家を出て二人暮らしをしている。
そろりとリビングに入っていくと、ソファに仰向けになって寝ている姉ちゃんの姿がある。今日はタンクトップに短パンでほっとする。たまに下着だけのときがあるから、油断ならない。
テレビを消して、バスタオルをかぶっている姉ちゃんに声をかける。
「姉ちゃん、ベッドで寝なよ」
「……うん」
ドライヤーで乾かさなかったのか、まだ濡れている髪がバスタオルの中でぐしゃぐしゃになっている。明日、もう一回セットしないと大変なことになりそうだ。
「姉ちゃん」
生返事で起きる気配のない姉ちゃんを尻目に、寝室で手早くジャージに着替える。明日の講義のテキストを鞄に詰めて、準備完了。
ソファから動こうとしない姉ちゃんの匂いをかぐ。やっぱり、お酒の匂いがする。
「誰と飲んできたの?」
「……かわぐち」
「佐藤先輩のことで?」
川口さん、という人が会社の同僚だということは知っている。姉ちゃんと仲が良いことも、いろんなことをよく相談していることも知っている。
「……怒られた」
「まぁ、そうだろうね。でも、先輩は怒ってなかったから安心して」
「……どうしよう、私、明日会社行きたくない」
「え、何かあったの?」
そんなにひどい怒られ方をしたのかと、びっくりする。
一体、何があったの?
姉ちゃんはバスタオルで顔を覆って肩を震わせる。
「姉ちゃん?」
「どうしよう、私……友達が一人、いなくなっちゃう」
「姉ちゃん、どうしたの?」
バスタオルをはぎ取ると、目を真っ赤にした姉ちゃんが抱きついてきた。
顔を見られたくないのだと悟って、好きにさせておく。
冷たい頭を撫でてあげる。
柔らかい体にぎゅうぎゅうと抱きしめられる感触は、悪くない。
「泣いてたら、わかんないよ」
「川口は、大事な、友達なのに」
「うん?」
耳元で聞こえる姉ちゃんの声は、嗚咽混じりでか細くて、とてもくすぐったい。
川口さんの転勤でも決まったのか?なんて俺は気楽に考えたけれど、事態はもっと深刻だった。
「私……川口に、好きだって、言われた」
……あぁ、川口さん、男だったんだね。知らなかったよ、姉ちゃん。
バイトがある日は、たいてい姉ちゃんのほうが先に寝室で寝ているのだけど、今夜はまだ眠っていないのだろうか。
玄関の左側はトイレと浴室。右手側に、キッチンダイニング。その奥の洋間がリビング、その左側に寝室がある。2DKのアパートの一室が、俺と姉ちゃんの城だ。通勤と通学に便利だからと、実家を出て二人暮らしをしている。
そろりとリビングに入っていくと、ソファに仰向けになって寝ている姉ちゃんの姿がある。今日はタンクトップに短パンでほっとする。たまに下着だけのときがあるから、油断ならない。
テレビを消して、バスタオルをかぶっている姉ちゃんに声をかける。
「姉ちゃん、ベッドで寝なよ」
「……うん」
ドライヤーで乾かさなかったのか、まだ濡れている髪がバスタオルの中でぐしゃぐしゃになっている。明日、もう一回セットしないと大変なことになりそうだ。
「姉ちゃん」
生返事で起きる気配のない姉ちゃんを尻目に、寝室で手早くジャージに着替える。明日の講義のテキストを鞄に詰めて、準備完了。
ソファから動こうとしない姉ちゃんの匂いをかぐ。やっぱり、お酒の匂いがする。
「誰と飲んできたの?」
「……かわぐち」
「佐藤先輩のことで?」
川口さん、という人が会社の同僚だということは知っている。姉ちゃんと仲が良いことも、いろんなことをよく相談していることも知っている。
「……怒られた」
「まぁ、そうだろうね。でも、先輩は怒ってなかったから安心して」
「……どうしよう、私、明日会社行きたくない」
「え、何かあったの?」
そんなにひどい怒られ方をしたのかと、びっくりする。
一体、何があったの?
姉ちゃんはバスタオルで顔を覆って肩を震わせる。
「姉ちゃん?」
「どうしよう、私……友達が一人、いなくなっちゃう」
「姉ちゃん、どうしたの?」
バスタオルをはぎ取ると、目を真っ赤にした姉ちゃんが抱きついてきた。
顔を見られたくないのだと悟って、好きにさせておく。
冷たい頭を撫でてあげる。
柔らかい体にぎゅうぎゅうと抱きしめられる感触は、悪くない。
「泣いてたら、わかんないよ」
「川口は、大事な、友達なのに」
「うん?」
耳元で聞こえる姉ちゃんの声は、嗚咽混じりでか細くて、とてもくすぐったい。
川口さんの転勤でも決まったのか?なんて俺は気楽に考えたけれど、事態はもっと深刻だった。
「私……川口に、好きだって、言われた」
……あぁ、川口さん、男だったんだね。知らなかったよ、姉ちゃん。
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