【R18】サキュバスちゃんの純情

千咲

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04.情事と事情(四)

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「どうしたの、あかり。急に会いたいだなんて。今日は講義が昼までだったし、健吾もいないから良かったけど――っ、わ」

 玄関を開けてくれた翔吾くんに抱きついて、唇を重ねる。海の名前のついた香水がほのかに香る。パンプスをポイと落として、翔吾くんに体を預ける。

「わ、わ、倒れる、倒れるよ、あかり」
「今すぐここでして」
「あかり?」
「翔吾くん、今すぐ私を抱いて」

 今すぐここで咥えさせて、とはさすがに言えない。
 翔吾くんは「わかった、わかったから」と私をなだめながら、廊下を上手に歩いて部屋へと導いてくれる。私は彼にぶら下がったままだ。

「何かあったの?」
「イヤなことがあって」
「そっか。それで俺のとこに来てくれたの?」
「迷惑だった?」
「まさか」

 部屋のドアを閉め、翔吾くんはぎゅうと私を抱きしめる。何度もキスをしながら、少しずつベッドに近づいていく。

 翔吾くんの部屋は高層マンションの一室にある。お父様が会社の社長、お母様が資産家の娘、翔吾くんはお金持ちのボンボンだ。御曹司と言ったほうが良いだろうか。愛情よりお金を与えられて成長したのが、翔吾くんだ。
 私の給料ではとうてい住むことができない部屋で、翔吾くんは双子の弟さんと暮らしている。弟さんと鉢合わせたくなかったから、翔吾くんの部屋で会いたくはなかったのだけれど……今日は、今日だけは、見逃して欲しい。

「あかりから誘ってくれるなんて、嬉しい」

 ベッドに倒れ込んで、翔吾くんを組み敷く。期待に満ちた目がかわいい。私の太腿の下で、太さと硬さを主張してくる彼が愛しい。

「あかり、その格好かわいい。どうしたの、それ」
「ホテルのケーキバイキングに行ってきたの」
「そんなにおしゃれして、一人で?」
「……一人で」

 一人で行って一人で帰ってきたのだから、一人で間違いない。あの失礼な人を、「相手」だとは思いたくない。

「だから、カロリー消費に付き合って」

 そんなもの私と彼の間に必要ないのに、嘘をつく。イヤなことがあったから、カロリー消費に付き合えだなんて、いろいろおかしい。
 きっと、翔吾くんにはそんな矛盾なんてバレているだろうけれど、彼は何も言わない。優しい人だ。

 シャツのボタンを外しながら、お互いの唇と舌を求めて深いキスをする。唾液が零れそうになっても構わない。舐め取ればいいだけだ。
 ワンピースの裾から翔吾くんの手が入ってきて、ストッキング越しに太腿を優しく撫でてくれる。暖かくて気持ちがいい。
 勝手に背中のファスナーを下ろそうとすると、翔吾くんにやんわりと止められた。

「ごめん、翔吾くんの役目だった?」
「いや、着たまましてみない? あかりがかわいいから」
「汚れちゃうよ」
「汚れたら代わりの服買ってきてあげるよ」

 これだから、お金持ちってやつは!
 何でもお金で解決しようとするあたりには全く共感できないけれど、恩恵が受けられるなら断る理由はない。
 翔吾くんは脱がして、私は脱がない。そういうプレイも悪くない。彼が興奮してくれるなら、それでいい。

「あかりのキス、甘いね」
「ケーキ食べたあとだからね」

 上半身をあらわにした翔吾くんを見下ろして、さて、と思案する。
 小学生から始めたというサッカーを、彼は大学生になってからも続けている。顔や手足は日に焼けているけれど、胸や腹は白い。コントラストが眩しいのは、春まで。夏になったら海へ行き、さらに日焼けするのだと言っていた。
 太い首も、厚い胸元も、筋の入ったお腹も、美味しそうだ。どこから先に口をつけようかな。

「あかりが前につけてくれたキスマーク、消えてるでしょ」
「消えてるねぇ。つけて欲しい?」
「うん」

 翔吾くんは赤い痕をつけられるのが好きだ。いつも胸元や脇腹にキスマークをつけて欲しいとねだられる。所有の証が欲しいのだと説明されたけれど、その気持ちはいまいちよくわからない。私という存在が、誰のものでもあり、誰のものでもないからなのかもしれない。
 爽やかな匂いのする首筋をペロリと舐め上げて、胸元にキスを落としながら、たまに強く吸い上げて、白い肌に痕を残す。我ながら、上手につけることができた。満足してから、胸の柔らかいところに舌を這わせる。

「……っ、ふ」

 翔吾くんは乳首が弱い。立ち上がってきた右の突起を舌で舐りながら、左も唾液で濡らした指を這わせる。ビクビクと軽く震えながら、目を閉じて快感を享受している翔吾くんがかわいい。
 太腿の下で脈打つ肉棒も、触ってもらいたくて仕方がないみたいにいやらしく動く。ボクサーパンツは既に濡れてヌルヌルだ。

「っ、あ!」

 肉棒に私の陰部を宛てがい、ゆっくり腰を動かす。ボクサーパンツ、ストッキング、そしてショーツ、邪魔なものが幾重にも重なっている。
 けれど。
 こんなにも、熱い。
 ヨダレが出そう。

「あかり」

 唾液をわざと首筋に落として、ゆっくり舐め取る。荒い息が翔吾くんの唇から漏れ出る。
 かわいい。
 潤んだ目が私を見上げてくる。切なそうに喘いで、腰を動かして、本当にかわいい。ルックスのいい男の子を組み敷くのはたまらない。

「なぁに?」

 ストッキングをするりと脱いで、ベッドの下に放り投げる。仕事先にははいていかない、ラインストーンが入った高いストッキングだ。破られてはかなわない。

「挿れたい」
「もう?」
「俺が何日我慢したと思ってるの」

 我慢なんかしなくても、女の子なんてよりどりみどりでしょ、翔吾くんは。そのあたりで適当な子に声をかけても、すぐにセックスに持ち込めるだけのルックスとお金があるのに。
 私なんか、待たなくても。

「我慢したの?」
「した。ご褒美、早くちょうだい」

 ボクサーパンツをするりとずらして、足でポイとベッドの下に落とす。カチコチになった肉棒の上に座り、ぐりぐりと腰を動かす。ショーツ越しのヌルリとした感触に、舌なめずりをしたくなる気持ちを抑える。

「挿れさせて、あかり」

 私は男なら精液さえ出してもらえれば誰でもよくて、セックスに愛や情なんてほとんど持ち込まないけれど。
 それでも。
 男から「求められる」瞬間は、気持ちがいい。

「おいで、翔吾くん」

 ショーツのクロッチ部分をずらして、屹立した熱い楔を迎え入れる。既に濡れている秘所へ、太くて硬い肉棒の先がゆっくり侵入してくる。
 まずは亀頭を飲み込んで、息を吐き出す。指で解さなかったから、少しキツかった。

「っは……硬い」
「若いからね」

 二十歳は確かに若い。湯川先生の一回り以上若い。硬さも量も回復力も、若い人が一番。それはよく知っている。

「……妬いてる?」
「もちろん。あかりの相手が俺だけならいいのに」

 いじらしい。かわいいじゃないの。
 意地悪な笑みを浮かべて、ぐ、と腰を沈めていく。ビクリと腰を震わせながら、翔吾くんは荒く喘ぐ。たまに腰を引いて様子を見ながら、翔吾くんを奥へ奥へと導いていく。

「っ、は」

 膣内に満たされた彼の熱は、とても気持ちが良い。ぐ、と根元まで飲み込んで、息を吐き出す。
 一度そこで翔吾くんとキスをして、子宮口に亀頭を押し当てるように腰を深く動かす。くぐもった声が、翔吾くんから漏れ出る。

「……奥、ダメ。気持ち良くてすぐ出そう」
「いいよ、出しても」
「やだ。もう少し、あかりの中を楽しみたい」

 私が動いたら、そんなこと、言っていられなくなるのに。
 ふふ、と笑って、翔吾くんを見下ろす。恍惚とした表情で私を見上げてくる翔吾くんがかわいすぎるので、その両手をベッドに押し付ける。これで、逃げられない。

「じゃあ、耐えてね」

 ズルリと膣口近くまで肉棒を引き抜いて、翔吾くんが切なく喘ぎ声を漏らしたところで、ぐいと奥へと肉棒を迎え入れる。ショーツの端が擦れるけど、気にしない。一度交わった体液は潤滑油となって、深く繋がるための手助けをしてくれる。

「あっ、あかりっ」
「ダメ、まだイカないで」
「そん、なっ、あっ」

 深く深く腰を動かしながら、翔吾くんの限界を見極める。せっかくなら、量は欲しい。たくさん出してほしい。
 鎖骨に噛み付いて、強く吸って痕を残す。いくつキスマークを残したか、わからない。
 乳首を舐めると、翔吾くんの腰が逃げる。ぐりぐりと舌で強くいじめると、翔吾くんはひときわ大きく声を上げた。

「あかり、ダメ!」
「ん、我慢して」
「でも!」
「我慢して」

 目をギュッと閉じて射精を我慢している翔吾くんがかわいらしい。膣内を締めて腰を上下に動かす。硬さを増した肉棒が、私の中で爆ぜたいと主張している。わかっているけど、まだ、ダメ。

「まだ」
「でも、もうっ」
「もう?」
「げんか……っ!」

 もう限界、かぁ。仕方ないなぁ。

「じゃあ、翔吾」

 柔らかい唇をペロリと舐め、舌を口内に侵入させてから。

「一番奥に、おいで」
「っ!」

 翔吾くんの体が震えて、膣内に何度も何度も精が吐き出される。膣内が脈打つのは不思議な感覚だ。我慢していたというのは本当だったのか、量が多い。ありがたいことだ。
 じんわりと熱が体に広がっていき、空腹が満たされていく。
 キスをしたまま果てた翔吾くんは、肩で息をしながら、私の体をぎゅうと抱きしめてくる。

「気持ち、良かった……」
「なら、良かった」
「ごめん、俺ばかり気持ち良くなって」
「いいよ、気にしないで」

 セックスは食事。気持ち良さはあまり関係ない。気持ちいいならいいに越したことはないけれど、私にとってはあまり重要ではない。
 膣内で肉棒が少しずつ小さくなっていく。たくさん出したから、すぐには回復しないだろう。まぁ、それでもいつの間にか硬くなるのが、若さというやつだ。ステキだ。

「ワンピース、汚れた?」
「んー、大丈夫、かな。ショーツはダメっぽいけど」

 精液は搾り取ったので外に溢れたりはしないけれど、ショーツは私の体液がついて酷いことになっているはずだ。早く脱ぎたい。

「買ってこようか?」
「コンビニのやつで十分だから、帰りに買っていくよ」
「……ノーパンで?」
「ノーパンで」

 翔吾くんは一瞬目を見開いて、笑った。

「俺、あかりのそういうとこ好き」
「ありがと?」

 昔はコンビニのショーツなんてなかった。そもそもショーツなんて便利なものなかった。いい時代だと思う。体液で衣服が汚れない、いい時代だ。

「まだいられるでしょ? 買ってくるよ。プレゼントさせて」
「いや、ほんと、ノーパンで」

 ちゅ、と頬に軽くキスをして、翔吾くんは意地悪く微笑んだ。

「そのワンピース、他の男からのプレゼントでしょ。だったら、俺からのも受け取ってくれるよね?」

 しまった。翔吾くんは結構なヤキモチ焼きだってこと、忘れてた。
 すぐに「私が買ったの」と言えるほど私は服にお金は使わないし、ブランドにだって無頓着だ。翔吾くんはよく知っている。私が買うわけがないワンピースだと、最初から知っていたのだ。

「……高くないやつで」
「かわいいの、買ってきてあげる」

 翔吾くんの満面の笑みに、私は両手を挙げて降参するしかなかった。

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