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29.花火と火花(五)
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しとどに濡れた膣口が亀頭を飲み込む。肉棒が膣壁を割って挿入ってくる。腰をゆっくりゆっくり落としながら、その圧迫感を楽しむ。
眉間にシワを寄せて、健吾くんは快感に耐えている。時折、小さく甘い声を漏らすけれど、耐えるだけで精一杯のようだ。
「っ、あかり、さ……あっ」
「根元まで、挿入ったよ」
「奥、に?」
「うん、当たってる。わかる?」
ぐいと腰を深く揺らすと、亀頭が子宮口に当たっている感触がある。健吾くんは慌てて私の腰をつかんで止めようとする。
「だ、ダメ! 我慢できなくなるっ!」
「いいよ。初めてだから、我慢しなくても」
白い肌に吸い付いて、キスマークを残す。舌を出してキスを誘うと、健吾くんはそっと上体を起こして唇を重ねてくる。
「繋がってるの、見える?」
「見える……エロい」
「今から動くけど、イキたくなったら我慢しなくていいからね」
素直に頷いて、健吾くんは私を見つめた。
さて、と。スマートフォンに手をかけ、健吾くんを見下ろす。
さぁ、どこまで、耐えられるかな?
画面をタップして、私は腰を浮かせた。
「えっ、ちょっ、まっ、っ!? あっ! んっ!? んーーー!?」
奥に精液が吐き出されるのを感じてから、スマートフォンの画面をタップする。
普通に腰を振っただけで――いやまぁ少し速かったかもしれないけど、健吾くんはすぐに果てた。特別なことは何もしていない。普通だ。
「……七秒」
顔を手で覆って「反則だ……」と嘆いている健吾くんがかわいい。
セックスには反則も何もありません。
未だに中でびくびくと脈打つ肉棒がかわいい。搾り取れた、かな。
「ご馳走さま。たくさん出したねぇ」
「あかりさっ! なんて、ことをっ!」
「騎乗位?」
「ちがっ!」
唇を塞いで、舌を捩じ込む。途端に健吾くんはおとなしくなる。まだいい具合の硬さを保っている肉棒を感じながら、このまま二回戦を目論む。
「何なんだよ、もう……!」
「気持ち良かった?」
「……良すぎ」
素直で良いことです。
童貞は健吾くんが初めてではないけど、七秒は最速だったかなぁ。
何秒でイカせられるかを計るのは、結構楽しい。まぁ、最速は挿れた瞬間に出ちゃう湯川先生だけど……あれ? じゃあ、湯川先生が最速か。彼は私とするまで勃起不全だったから、童貞だったということだ。
「あかりさん」
ぎゅうと優しく抱きしめられる。裸で抱き合うのは気持ちいい。冷房も心地よい。
何度も何度もキスをして、お互いの味を求め合う。そのたびに、中に留まっている肉棒が硬さを増してくる。
「……どう、動けば、いい?」
「どう動いてみたい?」
「普通、がいい」
騎乗位から正常位……一番楽なのは、対面座位からの体位変換、かな。慣れている男の人なら、自分から上体を起こして、少しずつ足の位置を変えていくのだけど、健吾くんはそれができない。一つずつ教えていくしかない。
「体、起こせる?」
「ん……あかりさん、キス……」
上体を起こした瞬間にキスをねだらなくても。笑いながら健吾くんを抱きしめて応じる。初めてのキス、楽しいみたいで何よりだ。
「……あかりさん」
「ん?」
「好き」
セフレとして、ね?
キスをしながら、健吾くんは胸を揉んでくる。彼がおっぱい星人だとは知らなかった。乳首が指で弾かれると、中がキュッと切なく締まる。それに気づいて、健吾くんは執拗に突起を捏ね始める。
「っ、ん、あ……やっ」
「あかりさん、気持ちいい?」
「ん、きもち、い……あぁっ」
いきなり乳首に吸い付かれると、気持ちいいに決まっている。嬌声を上げながら、腰を動かしたくなる衝動を抑える。健吾くんは正常位がいいと言っていたのだから、ここで果てさせるわけには……わけには。
「だ、ダメ、動かしたくなっちゃう」
「もう動いてるじゃん、あかりさん」
溢れる蜜がぐちゅぐちゅと卑猥な音を立て、繋がりに潤いを与えてくれる。健吾くんの肩に寄りかかりながら、腰を動かす。ゆっくりだったのに、少しずつ、速くなる。
……あ、ダメ、欲しい。
「ダメ、あかりさん、止めて。イキそ……」
「ん、正常位でイキたい?」
「……うん」
さすがに座位から体位を変えるのは健吾くんには難しかったようで、一回抜いてもらう。寝そべって、足を開いて、健吾くんを見上げる。
「自分のを持って、ここに、あ、もう少し下」
「……あ、ここ?」
位置がわからないのはお約束。けれど、すぐにわかったようで、健吾くんは蜜口に亀頭を宛てがい、ゆっくりと中に楔を押し進めてくる。濡れた膣壁を割り、進んでくる圧迫感に、甘い声が零れる。
「あ、ん……」
根元まで肉棒を挿れたあと、最奥に到達した瞬間に、健吾くんの体がふるりと震えた。そうだね、一番奥まで、来たよ。
「どう動いたらいいんだ?」
「好きなようにしていいよ」
「その『好き』がわかんないんだけど」
見つめ合って、笑う。そうだね、好きも何も、初めてだもんね。初めてばっかりだもんね。
「健吾、キスできる?」
「ん、ちょっと待って」
上体を倒して、腕で体を支えて、健吾くんはキスをしてくれる。舌を挿れる深いキスにも慣れたみたい。
「そのまま動ける?」
「やってみる。でも、その前に、あかりさん、もっかい、今の言って」
健吾くんの首に手を回し、額をくっつけ合って、笑う。
「健吾?」
「……あかり」
初々しいカップルみたいに名前を呼び合って、再度唇を、舌を求め合う。それに合わせて、健吾くんが、ぎこちなく腰を振る。やっぱり、リズミカルに、とはいかないみたいだ。けれど、それすらかわいい。
「んっ、ん、ふ、ん」
あぁ、気持ちいい。
健吾くん自身が初めてだから、快楽に溺れてしまいそうなほどのセックスではない。じっくり、じわりと熱を高め合う、穏やかなセックス。悪くない。
「……あかり、イキそ」
「いいよ、おいで」
「奥に?」
「うん。奥に来て、健吾」
荒い息の健吾くんの体を抱きしめる。律動が速くなり、お互いの体が揺れる。健吾くんは目を閉じて、高まってくる射精感に耐えている。
「あかり、好きっ」
愛の告白とともに最奥に吐き出された精液が、広がっていく。キスをしながらそれを搾り取って、空腹を満たしていく。
膣壁のうねりに、健吾くんは何度も肉棒と体を震わせる。
「……こんなに、気持ちいいもの、なのか?」
「そう、だね。気持ち良かった?」
「……俺、猿になる自信がある」
「気持ち良かったんだね」
イッたあともしばらく繋がり、キスをする。健吾くんはだいぶキスが気に入ったようだ。
「キス、好き?」
「好き。あかりとなら何時間でもできる」
「唇腫れちゃうよ」
腫れてもいい、いやよくないよ、と笑い合ったあと、健吾くんが柔らかくなった陰茎を抜く。
ティッシュで後処理をして、抱き合ってベッドに倒れ込む。
「俺、セックス好きかも」
「将来有望だね」
「あかりとのセックスがいい」
私の視線に気づいて、健吾くんは苦笑する。そして、言い直す。
「今は、あかりとのセックスがいい」
「彼女、作っていいんだよ?」
「まぁ、いつか、だな」
私は彼女ではない。セフレ。セックスをするだけのオトモダチ。
「あかり、ごめん」
「何が?」
「翔吾となら、その……イケるんだろ? 俺、頑張るから。あかりをイカせられるよう、頑張るから」
私自身はオーガズムを感じるか感じないかは関係ないんだけどなぁ。ただ、精液が欲しいだけであって。
「じゃあ、一緒に頑張ろうか?」
同じセリフを、健吾くんの先輩にも言ったんだよなぁ、私。懐かしい。
「ゆっくり、頑張ろう?」
その一言は、彼との関係の長期化を示すもの。何ヶ月、何年……健吾くんに、彼女ができるまでの、セックスフレンド。
「ありがとう、あかり」
唇に、首筋に、鎖骨に、胸に、唇を落としながら、健吾くんは笑う。切なげに。何かを求めるように。
「背中にもキスしたい」
彼が求めているものに、気づかないほど鈍感ではない。私が煽ったのだ。裸にしてみろ、と。
キスをして、くるりと反転した私の髪をそっとよけて、彼は、十年ぶりに、それにたどり着いた。
「……あかり」
「見つけた?」
左肩の下あたり、ほくろが一つ。
溺れた健吾くんを背負って、岸までたどり着いたのだ。彼が背中のほくろに気づいても、それだけ覚えていても、おかしくはない。
「あかり、俺……」
背中から私を抱きしめて、健吾くんはそっとほくろにキスをした。
「あかりに、ずっと、言いたかったことが……」
健吾くんの腕をぽんぽんと軽く叩いて、撫でる。
私、この腕を、掴んだんだよ。あのときはまだ細くて頼りなかったけど、もう、大丈夫だよね。
「俺を、助けてくれて、ありがとう」
震える声に、応えるべきか、白を切るべきか。認めるか、誤魔化すか。
「ありがとう、あかり。本当に、ありがとう……」
素直な健吾くんの気持ちを、無下にできるわけ、ないじゃないの。私にはできない。
「どう、いたしまして」
認めたとしても、藍川に「ロリコン」や「児童買春」のレッテルが貼られるだけだ。
今私は二十五歳。十年前は十五歳……まぁ、何とか誤魔化せるギリギリかな。ギリギリだなぁ。
「あかり、本当に、ありがとう。あかりは命の恩人だ」
健吾くんの手の甲にキスをして、思う。
……今、あのとき助けた男の子の腕の中にいるなんて、男の子の童貞をもらってしまうなんて、本当に想像すらしていなかった。
奇妙な巡り合わせも、あるんだなぁ。
あぁ、そうか。
これこそ、佐々木先輩の言う「抗いようのない運命」なのかもしれないなぁ。
眉間にシワを寄せて、健吾くんは快感に耐えている。時折、小さく甘い声を漏らすけれど、耐えるだけで精一杯のようだ。
「っ、あかり、さ……あっ」
「根元まで、挿入ったよ」
「奥、に?」
「うん、当たってる。わかる?」
ぐいと腰を深く揺らすと、亀頭が子宮口に当たっている感触がある。健吾くんは慌てて私の腰をつかんで止めようとする。
「だ、ダメ! 我慢できなくなるっ!」
「いいよ。初めてだから、我慢しなくても」
白い肌に吸い付いて、キスマークを残す。舌を出してキスを誘うと、健吾くんはそっと上体を起こして唇を重ねてくる。
「繋がってるの、見える?」
「見える……エロい」
「今から動くけど、イキたくなったら我慢しなくていいからね」
素直に頷いて、健吾くんは私を見つめた。
さて、と。スマートフォンに手をかけ、健吾くんを見下ろす。
さぁ、どこまで、耐えられるかな?
画面をタップして、私は腰を浮かせた。
「えっ、ちょっ、まっ、っ!? あっ! んっ!? んーーー!?」
奥に精液が吐き出されるのを感じてから、スマートフォンの画面をタップする。
普通に腰を振っただけで――いやまぁ少し速かったかもしれないけど、健吾くんはすぐに果てた。特別なことは何もしていない。普通だ。
「……七秒」
顔を手で覆って「反則だ……」と嘆いている健吾くんがかわいい。
セックスには反則も何もありません。
未だに中でびくびくと脈打つ肉棒がかわいい。搾り取れた、かな。
「ご馳走さま。たくさん出したねぇ」
「あかりさっ! なんて、ことをっ!」
「騎乗位?」
「ちがっ!」
唇を塞いで、舌を捩じ込む。途端に健吾くんはおとなしくなる。まだいい具合の硬さを保っている肉棒を感じながら、このまま二回戦を目論む。
「何なんだよ、もう……!」
「気持ち良かった?」
「……良すぎ」
素直で良いことです。
童貞は健吾くんが初めてではないけど、七秒は最速だったかなぁ。
何秒でイカせられるかを計るのは、結構楽しい。まぁ、最速は挿れた瞬間に出ちゃう湯川先生だけど……あれ? じゃあ、湯川先生が最速か。彼は私とするまで勃起不全だったから、童貞だったということだ。
「あかりさん」
ぎゅうと優しく抱きしめられる。裸で抱き合うのは気持ちいい。冷房も心地よい。
何度も何度もキスをして、お互いの味を求め合う。そのたびに、中に留まっている肉棒が硬さを増してくる。
「……どう、動けば、いい?」
「どう動いてみたい?」
「普通、がいい」
騎乗位から正常位……一番楽なのは、対面座位からの体位変換、かな。慣れている男の人なら、自分から上体を起こして、少しずつ足の位置を変えていくのだけど、健吾くんはそれができない。一つずつ教えていくしかない。
「体、起こせる?」
「ん……あかりさん、キス……」
上体を起こした瞬間にキスをねだらなくても。笑いながら健吾くんを抱きしめて応じる。初めてのキス、楽しいみたいで何よりだ。
「……あかりさん」
「ん?」
「好き」
セフレとして、ね?
キスをしながら、健吾くんは胸を揉んでくる。彼がおっぱい星人だとは知らなかった。乳首が指で弾かれると、中がキュッと切なく締まる。それに気づいて、健吾くんは執拗に突起を捏ね始める。
「っ、ん、あ……やっ」
「あかりさん、気持ちいい?」
「ん、きもち、い……あぁっ」
いきなり乳首に吸い付かれると、気持ちいいに決まっている。嬌声を上げながら、腰を動かしたくなる衝動を抑える。健吾くんは正常位がいいと言っていたのだから、ここで果てさせるわけには……わけには。
「だ、ダメ、動かしたくなっちゃう」
「もう動いてるじゃん、あかりさん」
溢れる蜜がぐちゅぐちゅと卑猥な音を立て、繋がりに潤いを与えてくれる。健吾くんの肩に寄りかかりながら、腰を動かす。ゆっくりだったのに、少しずつ、速くなる。
……あ、ダメ、欲しい。
「ダメ、あかりさん、止めて。イキそ……」
「ん、正常位でイキたい?」
「……うん」
さすがに座位から体位を変えるのは健吾くんには難しかったようで、一回抜いてもらう。寝そべって、足を開いて、健吾くんを見上げる。
「自分のを持って、ここに、あ、もう少し下」
「……あ、ここ?」
位置がわからないのはお約束。けれど、すぐにわかったようで、健吾くんは蜜口に亀頭を宛てがい、ゆっくりと中に楔を押し進めてくる。濡れた膣壁を割り、進んでくる圧迫感に、甘い声が零れる。
「あ、ん……」
根元まで肉棒を挿れたあと、最奥に到達した瞬間に、健吾くんの体がふるりと震えた。そうだね、一番奥まで、来たよ。
「どう動いたらいいんだ?」
「好きなようにしていいよ」
「その『好き』がわかんないんだけど」
見つめ合って、笑う。そうだね、好きも何も、初めてだもんね。初めてばっかりだもんね。
「健吾、キスできる?」
「ん、ちょっと待って」
上体を倒して、腕で体を支えて、健吾くんはキスをしてくれる。舌を挿れる深いキスにも慣れたみたい。
「そのまま動ける?」
「やってみる。でも、その前に、あかりさん、もっかい、今の言って」
健吾くんの首に手を回し、額をくっつけ合って、笑う。
「健吾?」
「……あかり」
初々しいカップルみたいに名前を呼び合って、再度唇を、舌を求め合う。それに合わせて、健吾くんが、ぎこちなく腰を振る。やっぱり、リズミカルに、とはいかないみたいだ。けれど、それすらかわいい。
「んっ、ん、ふ、ん」
あぁ、気持ちいい。
健吾くん自身が初めてだから、快楽に溺れてしまいそうなほどのセックスではない。じっくり、じわりと熱を高め合う、穏やかなセックス。悪くない。
「……あかり、イキそ」
「いいよ、おいで」
「奥に?」
「うん。奥に来て、健吾」
荒い息の健吾くんの体を抱きしめる。律動が速くなり、お互いの体が揺れる。健吾くんは目を閉じて、高まってくる射精感に耐えている。
「あかり、好きっ」
愛の告白とともに最奥に吐き出された精液が、広がっていく。キスをしながらそれを搾り取って、空腹を満たしていく。
膣壁のうねりに、健吾くんは何度も肉棒と体を震わせる。
「……こんなに、気持ちいいもの、なのか?」
「そう、だね。気持ち良かった?」
「……俺、猿になる自信がある」
「気持ち良かったんだね」
イッたあともしばらく繋がり、キスをする。健吾くんはだいぶキスが気に入ったようだ。
「キス、好き?」
「好き。あかりとなら何時間でもできる」
「唇腫れちゃうよ」
腫れてもいい、いやよくないよ、と笑い合ったあと、健吾くんが柔らかくなった陰茎を抜く。
ティッシュで後処理をして、抱き合ってベッドに倒れ込む。
「俺、セックス好きかも」
「将来有望だね」
「あかりとのセックスがいい」
私の視線に気づいて、健吾くんは苦笑する。そして、言い直す。
「今は、あかりとのセックスがいい」
「彼女、作っていいんだよ?」
「まぁ、いつか、だな」
私は彼女ではない。セフレ。セックスをするだけのオトモダチ。
「あかり、ごめん」
「何が?」
「翔吾となら、その……イケるんだろ? 俺、頑張るから。あかりをイカせられるよう、頑張るから」
私自身はオーガズムを感じるか感じないかは関係ないんだけどなぁ。ただ、精液が欲しいだけであって。
「じゃあ、一緒に頑張ろうか?」
同じセリフを、健吾くんの先輩にも言ったんだよなぁ、私。懐かしい。
「ゆっくり、頑張ろう?」
その一言は、彼との関係の長期化を示すもの。何ヶ月、何年……健吾くんに、彼女ができるまでの、セックスフレンド。
「ありがとう、あかり」
唇に、首筋に、鎖骨に、胸に、唇を落としながら、健吾くんは笑う。切なげに。何かを求めるように。
「背中にもキスしたい」
彼が求めているものに、気づかないほど鈍感ではない。私が煽ったのだ。裸にしてみろ、と。
キスをして、くるりと反転した私の髪をそっとよけて、彼は、十年ぶりに、それにたどり着いた。
「……あかり」
「見つけた?」
左肩の下あたり、ほくろが一つ。
溺れた健吾くんを背負って、岸までたどり着いたのだ。彼が背中のほくろに気づいても、それだけ覚えていても、おかしくはない。
「あかり、俺……」
背中から私を抱きしめて、健吾くんはそっとほくろにキスをした。
「あかりに、ずっと、言いたかったことが……」
健吾くんの腕をぽんぽんと軽く叩いて、撫でる。
私、この腕を、掴んだんだよ。あのときはまだ細くて頼りなかったけど、もう、大丈夫だよね。
「俺を、助けてくれて、ありがとう」
震える声に、応えるべきか、白を切るべきか。認めるか、誤魔化すか。
「ありがとう、あかり。本当に、ありがとう……」
素直な健吾くんの気持ちを、無下にできるわけ、ないじゃないの。私にはできない。
「どう、いたしまして」
認めたとしても、藍川に「ロリコン」や「児童買春」のレッテルが貼られるだけだ。
今私は二十五歳。十年前は十五歳……まぁ、何とか誤魔化せるギリギリかな。ギリギリだなぁ。
「あかり、本当に、ありがとう。あかりは命の恩人だ」
健吾くんの手の甲にキスをして、思う。
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奇妙な巡り合わせも、あるんだなぁ。
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