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第八章 再びリアン魔国へ
第百四十五話 心配
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(戻っ、た……?)
何だかぼんやりとした感覚に、私はしばし、呆然とする。
(あれは、いったい……)
話の辻褄を合わせようと思えば、あのリュカとヒイラという二人は、世界の管理者、神と呼ばれる存在だと定義した方が納得しやすい。ただ、そもそもこの世界の神のことなどこれっぽっちも知らないため、それが確実だとは言えないけれど……。
(少なくとも、リアン魔国がどうして建国されたのかは、分かった)
リアン魔国は、鍵の保管に必要な場所だったのだ。ヴァイラン魔国から譲り受けたとされる『宝鍵』は、きっとあの二人が話していた鍵のことなのだろう。
(というか、もしかして、あれが『建国神話』だったりして……?)
もう一度手元の本に目を移すと、剥がれたページには、複雑な魔法陣が描かれていた。きっと、これが先ほどの光景を見せるための魔法陣なのだろう。
(……こういう時は、ジークさん達に聞いてみる方が良いよね?)
そう考えていると、タイミング良く扉がノックされる。
「ユーカお嬢様。ハミル坊っちゃんが参られましたよ」
マーサらしきその声に、すぐに私は入室の許可を出す。
「ユーカ、本は色々と揃えてみたけど、良いのはあったかい?」
「はい、とっても重要そうな本がありました」
ニコニコと笑いかけてくるハミルさんに、私は手に持っているそれを差し出してみる。
「うん? これは……何だろう? 僕でも分からない魔法陣……?」
すぐに魔法陣へと目を向けたハミルさんは、真剣な表情でその内容を読み取ろうとするものの、どうやら分からないらしい。
「ユーカ、まさか、これを発動させたとか言わないよね?」
「それが、その……」
恐ろしいほどに真剣なハミルさんの様子に、私が言い淀むと、ハミルさんは自分の表情が怖くなっていることに気づいたのか、慌てて言葉を重ねる。
「あぁっ、怒ってるわけじゃないよっ! ただ、何かも分からない魔法を起動させて、ユーカに何かあったらと思うと心配なだけでっ」
「いえ、大丈夫です。その、開いたら勝手に発動しちゃって、それで色々とびっくりするようなものを見たと言いますか……」
しどろもどろになりながら魔法が発動したことを告げると、ハミルさんはみるみるうちに真っ青になる。
「っ、発動した!? ユーカ、どこか、痛いとか、気分悪いとかないっ!? あぁぁっ、ちょっと待ってて、すぐに医者を、いや、それだけじゃなくて、呪いなんかの専門家も呼んで「わーっ、何ともないですからっ!」……本当に?」
そのままにしていたら、とんでもないことになりそうだと判断した私は、ハミルさんの言葉を遮って止める。
「はい、大丈夫です。何ともないですっ」
「……でも、今はまだ分からないだけかもしれないから、一応検査はしてもらうよ」
「えっ? いや、だから、本当に何でもなくて、ですね。それに、その魔法陣は、多分、情報を伝えるだけの魔法みたいで、何か仕掛けてあるとは思えないんですけれど……」
早口で一生懸命説明してみるものの、ハミルさんは一向に私の意見に耳を貸してはくれない。それでも少し落ち着いた様子のハミルさんは、自分で医者や呪いの専門家を呼ぶようなことはせずに、マーサへと指示を出している。
(……説得は無理そうかも……)
何せ、得体の知れない魔法陣を私が発動させてしまったのだ。何か影響があるかもしれないと心配になる気持ちは分からないでもなかった。
「良い? ユーカ。すぐに医者や呪いの専門家が来るから、しっかり診てもらうんだよ? それと、何か不調を感じたら、すぐに言うことっ」
「はい……。あの、ジークさんにはこのことは……?」
何となく、ジークさんにまで伝わったら、ハミルさん並みに色々と心配されてしまう気がして、できれば報告しないでほしいと思ってそのトパーズの目に問いかける。
「もちろん伝えるよ。ごめんね、ユーカ。安全な本を選んだつもりが、こんなことになって……」
「い、いえ、ハミルさんの責任じゃありません。元々、捲れないようになっていたページを剥がした私が悪いんですっ」
「ううん、こんなわけの分からない魔法陣が書かれてる本を選んでしまったこと自体が問題なんだ。ごめんね、ユーカ。本当に、ごめん」
何を言っても聞いてくれそうにないハミルさんは、その後もずっとシュンとうなだれていて、私は慰めるために必死になるのだった。
何だかぼんやりとした感覚に、私はしばし、呆然とする。
(あれは、いったい……)
話の辻褄を合わせようと思えば、あのリュカとヒイラという二人は、世界の管理者、神と呼ばれる存在だと定義した方が納得しやすい。ただ、そもそもこの世界の神のことなどこれっぽっちも知らないため、それが確実だとは言えないけれど……。
(少なくとも、リアン魔国がどうして建国されたのかは、分かった)
リアン魔国は、鍵の保管に必要な場所だったのだ。ヴァイラン魔国から譲り受けたとされる『宝鍵』は、きっとあの二人が話していた鍵のことなのだろう。
(というか、もしかして、あれが『建国神話』だったりして……?)
もう一度手元の本に目を移すと、剥がれたページには、複雑な魔法陣が描かれていた。きっと、これが先ほどの光景を見せるための魔法陣なのだろう。
(……こういう時は、ジークさん達に聞いてみる方が良いよね?)
そう考えていると、タイミング良く扉がノックされる。
「ユーカお嬢様。ハミル坊っちゃんが参られましたよ」
マーサらしきその声に、すぐに私は入室の許可を出す。
「ユーカ、本は色々と揃えてみたけど、良いのはあったかい?」
「はい、とっても重要そうな本がありました」
ニコニコと笑いかけてくるハミルさんに、私は手に持っているそれを差し出してみる。
「うん? これは……何だろう? 僕でも分からない魔法陣……?」
すぐに魔法陣へと目を向けたハミルさんは、真剣な表情でその内容を読み取ろうとするものの、どうやら分からないらしい。
「ユーカ、まさか、これを発動させたとか言わないよね?」
「それが、その……」
恐ろしいほどに真剣なハミルさんの様子に、私が言い淀むと、ハミルさんは自分の表情が怖くなっていることに気づいたのか、慌てて言葉を重ねる。
「あぁっ、怒ってるわけじゃないよっ! ただ、何かも分からない魔法を起動させて、ユーカに何かあったらと思うと心配なだけでっ」
「いえ、大丈夫です。その、開いたら勝手に発動しちゃって、それで色々とびっくりするようなものを見たと言いますか……」
しどろもどろになりながら魔法が発動したことを告げると、ハミルさんはみるみるうちに真っ青になる。
「っ、発動した!? ユーカ、どこか、痛いとか、気分悪いとかないっ!? あぁぁっ、ちょっと待ってて、すぐに医者を、いや、それだけじゃなくて、呪いなんかの専門家も呼んで「わーっ、何ともないですからっ!」……本当に?」
そのままにしていたら、とんでもないことになりそうだと判断した私は、ハミルさんの言葉を遮って止める。
「はい、大丈夫です。何ともないですっ」
「……でも、今はまだ分からないだけかもしれないから、一応検査はしてもらうよ」
「えっ? いや、だから、本当に何でもなくて、ですね。それに、その魔法陣は、多分、情報を伝えるだけの魔法みたいで、何か仕掛けてあるとは思えないんですけれど……」
早口で一生懸命説明してみるものの、ハミルさんは一向に私の意見に耳を貸してはくれない。それでも少し落ち着いた様子のハミルさんは、自分で医者や呪いの専門家を呼ぶようなことはせずに、マーサへと指示を出している。
(……説得は無理そうかも……)
何せ、得体の知れない魔法陣を私が発動させてしまったのだ。何か影響があるかもしれないと心配になる気持ちは分からないでもなかった。
「良い? ユーカ。すぐに医者や呪いの専門家が来るから、しっかり診てもらうんだよ? それと、何か不調を感じたら、すぐに言うことっ」
「はい……。あの、ジークさんにはこのことは……?」
何となく、ジークさんにまで伝わったら、ハミルさん並みに色々と心配されてしまう気がして、できれば報告しないでほしいと思ってそのトパーズの目に問いかける。
「もちろん伝えるよ。ごめんね、ユーカ。安全な本を選んだつもりが、こんなことになって……」
「い、いえ、ハミルさんの責任じゃありません。元々、捲れないようになっていたページを剥がした私が悪いんですっ」
「ううん、こんなわけの分からない魔法陣が書かれてる本を選んでしまったこと自体が問題なんだ。ごめんね、ユーカ。本当に、ごめん」
何を言っても聞いてくれそうにないハミルさんは、その後もずっとシュンとうなだれていて、私は慰めるために必死になるのだった。
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