片翼シリーズ番外編

星宮歌

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私、異世界で監禁されました!?の番外編

『閑話 リドルの悲劇』より 試練(リドル視点)

 野宿している最中に一回。馬車で移動中に二回。合計三回、盗賊に襲われて、ことごとくを撃退したワタシは、あまりの盗賊の多さに首をかしげる。レティのことであまり回らない頭でも、これが異常事態であることは分かった。


「帰ったら報告しなきゃね」


 そう判断を下しながら、黙々と進むと、ようやく、目的の場所へと辿り着く。

 リュシー霊国。そこは、深く広大な森そのものを国とする、精霊達の楽園。普通の森と違い、幻想的に光輝く森を、馬車から降りたワタシはズンズンと進む。すると、ワタシという侵入者を感知したのか、三十センチくらいの人型の者が、ヒラヒラとした服を纏ってワラワラと木の中から飛び出してきた。


「わぁ、リドだぁ」

「リド、久しぶりー」

「リド、でかいー」

「リド、レティ姉、泣いてるよー?」

「レティが泣いてる!?」


 纏わりつくようにして飛行したり走ったりしながらやってくる彼ら、下級精霊を無視していたワタシだったけれど、最後の最後で聞き捨てならない言葉が飛び出して目を剥く。


「レティ姉、泣いてるー」

「悲しいー」

「裏切られたー」

「裏切ってなんかないわっ」


 やはり、何かとんでもない誤解が生まれている。それを確信したワタシは、下級精霊達にレティの居場所を尋ねる。


「ダメー」

「内緒ー」

「レティ姉、かくれんぼー」


 キャッキャと無邪気に笑う下級精霊達に、余裕のないワタシは苛立ちを隠すことなく叫ぶ。


「レティ! どこだっ!」


 精霊の協力が得られないのであれば、自力で探すしかない。口調が男のそれに戻っていることにも気づかずに、ワタシは夢中で走り回る。


「レティっ! レティっ! 頼むっ、返事をしてくれっ!」


 ワタシは森を必死に分け入り、レティの気配を探るものの、どうやら意図的に気配を隠しているらしく、ちっともその姿は見当たらない。


「何があったか知らないが、全部誤解だっ! だから、頼むからっ。出てきてくれっ!」


 声が嗄れても良い。ワタシが傷つくことは一向に構わない。だから、どうか、愛しいレティに帰ってきてほしい。

 そんな願いを込めながら叫び続けていると、ふいに、森が大きく振動する。


「よくも、よーくーもっ、私のレティをいじめてくれたなぁっ」


 そして、地の底から響くような声にハッと顔を上げると、そこには、レティの父親にして、精霊の王、オルフィーが居た。飴色の髪に、飴色の瞳を持つ、貴公子然としたオルフィーは、上級精霊らしく高い身長を持ち、三メートル近い身長でワタシを睨みつけてくる。


「誤解よっ。ワタシは、何一つレティをいじめるようなことはしていないわっ」

「ならっ、なぜレティは泣いている! 貴様がっ、泣かせたのだろうっ」


 ただ、この言動からも分かる通り、オルフィーは重度の娘ラブな状態だった。レティと結婚する際にも、このオルフィーには随分と苦労をさせられた。


「……確かに、ワタシの行動が誤解を招いたことは認めるわ」


 恐らくは、ユーカちゃんとのことが原因だろうと当たりをつけていたワタシは、そこだけは認める。悔しいけれど、それは事実なのだから。


「はっ、それみたことかっ! やはり、レティに貴様は相応しくないっ!!」


 見下すように言い放ったオルフィー。けれど、ワタシにだって言い分はあるし、何より、レティへの愛情は誰にも負けない。


「ワタシが悪かったことは認めるわ。でも、だからといってレティを諦めるなんてことはできないし、しないわっ」

「ほぅっ、ならば再戦といこうではないかっ! 着いてこいっ!」


 再戦と聞き、ギクリとはしたものの、すでに戦うつもりのオルフィーには、きっと何を言っても無駄だろう。すぐにでもレティ捜しに戻りたいところではあったものの、この広大な森を宛もなく捜すのは無謀だ。ここは、オルフィーに勝って、レティの居場所に関する情報を聞き出すべきだろう。
 そうして、覚悟を決めたワタシは、オルフィーに着いていく。
 しばらく森の中を歩き、それを興味本位で眺める下級精霊達に見守られていると、ふいに、拓けた場所へと辿り着いた。


「さぁ、ここなら戦えるだろう。皆の者! 武器を用意せよっ!」

「はぁい」

「王様ー」

「戦い戦いー」


 各々に様々なことを言いながら散っていった下級精霊達は、すぐにワタシやオルフィーが使えるサイズの木剣を『エッホッ、エッホッ』という掛け声とともに数人がかりで運んでくる。


「さぁ、剣を取れっ! 今度という今度は容赦せぬぞ!」

「……分かったわ」


 もはや、戦い以外に道はない。後からレティには呆れられそうだったけれど、ワタシは下級精霊達が捧げ持つ木剣を受け取るのだった。
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