4 / 41
私、異世界で監禁されました!?の番外編
『閑話 リドルの悲劇』より 再会(リドル視点)
精霊を甘く見ていた。それに気づいたのは、レティの居場所近くへ案内してくれるという下級精霊達に着いていくこと、五時間が経過する頃だった。
(そうよ。精霊は疲れ知らずだったのよね)
一定の速度を全く緩めることなく進む精霊達に着いていくのは、地味にきつい。けれど、こんなところでレティを諦めるわけにはいかないワタシは、必死に精霊達を見失わないように足を前に踏み出す。
そして、十時間後。魔族といえど、さすがに疲労で足がどうにかなりそうな状態になってきたところで、ようやく、精霊達が振り返る。
「このあたりー」
「レティ、ちかいー」
「きっといるー」
(きっとじゃなくて、絶対、居てもらわなきゃ困るわっ)
これだけ歩かされて、全て徒労に終わったとなれば、ショックどころの話ではない。けれど、精霊というだけで、そのくらいのいたずらは仕掛けてきそうなところが怖かった。
「ほ、んと…なの、ね?」
「ほんとー」
「しんじつー」
「だいじょーぶー」
座り込めばしばらく立てなくなるであろう自信がある状態で、ワタシは気合いを入れる。携帯していた水を口に含み、喉を潤すと、その状態のまま、呼び掛ける。
「レティ、どこだっ、レティ」
フラフラと歩きながら、ワタシはとにかく呼び掛けることしかできない。
「レティっ、レティっ」
何度も何度も、声が嗄れてきては、水を飲み、声を張り上げる。
すでに、明るかった森は、暗闇に包まれて、空には満点の星が輝いている。叫び続けた声は、もう水ではどうにもならないほどに嗄れてきていた。
「レティ、レティっ!」
と、その時、足も限界だったのか、木の根に足を取られて、盛大に転ぶ。
「うっ……レティ、レティ……」
森に来るまでは、ほとんど喉を通らないながらも飲み食いしていたものの、今日は森に入ってから、ほとんど何も口にしていない。魔族は、そこそこ体力のある種族ではあるものの、さすがに丸一日叫びながら森をさまよって、無事なわけがなかった。
「レティ……どこに、居るんだ……?」
見つからない愛しい人を思って、ワタシは立ち上がることもできずにうなだれる。すると……。
「リド……」
「っ、レティ!?」
愛しい人の声に顔を上げると、そこには、飴色のウェーブがかった長髪に、同じく飴色の瞳をした可愛らしい女性がいた。その服は、精霊らしく、ヒラヒラとした白いドレスで、体の大きさが百七十センチあることから、彼女が上級精霊であることが伺える。
「レティっ、誤解だっ! いえ、誤解なのよっ」
レティに話しかけた直後、口調が男のものに戻っていることに気づき、慌てて修正しながら、どうにか力を振り絞って、フラフラと立ち上がる。
「……商会のお仕事の後、どこに向かってらしたの?」
唇を震わせて、緊張気味に尋ねるレティに、ワタシは即座に答える。
「ジーク達のところよ。極秘の頼み事をされていて、毎日通う必要があったのよ」
「……それは、わたくしにも言えないこと?」
「そうね、こんな事態にならなければ、話す許可はもらえなかったわ。……簡単に言えば、ジークとその片翼の子との間を取り持つために動いていたのよ」
周りに誰の気配もないことを確認して、ワタシはあっさりと事実を明かす。ただ、こんな事態にならなければ、ジークもユーカちゃんのことを隠したかったであろうことは確実だ。
「では、リドが女性もののドレスを注文していたというのは……?」
飴色の瞳を不安で大きく揺らせたレティのその言葉に、事の発端は、ジークやハミルに頼まれてドレスを注文したことだったのだろうと理解する。まさか、その情報がレティの元に届くとは思っていなかったため、これは完全なるワタシの失態だ。
「どこまで知ってるかは知らないけれど、あれはジーク達に頼まれて、用意したドレスよ。ワタシが贈るものじゃないわ」
そう言えば、レティは体当たりする勢いでワタシに抱きつき、ポロポロと涙を溢す。
「では、ではっ、わたくしは、リドに嫌われたわけではないのですねっ?」
「えぇ、もちろんよ。ワタシにとってはレティが全てなのよ」
もう、立っているのもつらい状態ではあったものの、ここでふらつくわけにはいかない。心を痛めたレティを慰める役は、誰にも譲るつもりはない。
「良かった。本当に、良かった……」
ワタシの胸に顔を押しつけて、くぐもった声で安心したということを告げてくるレティ。その様子に、ワタシは愛しさが溢れて止まらなくなりそうだ。
「レティ、帰りましょう。帰ったら、詳しい話もしたいし、たくさん愛し合いたいわ」
「はぃ……帰ります」
『愛し合う』という言葉に頬を染めたレティに、ワタシは思わずギュッと抱き締めて、その柔らかな体を堪能する。
「リ、リド? 恥ずかしいですっ」
「もうちょっとだけ」
そうして、誤解が解けたワタシ達は、しばらくお互いを堪能して……結局、疲労には勝てず、そのまま気絶してしまい、レティを慌てさせるなんて一幕もあったものの、仲良くヴァイラン魔国へと戻るのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回予告です。
次回は、リドルとレティの出会い編になるかと思います。
しばらく準備をして、本編でレティが出てくる頃に更新しようかと企んでおりますので、よろしくお願いします。
それでは、また!
(そうよ。精霊は疲れ知らずだったのよね)
一定の速度を全く緩めることなく進む精霊達に着いていくのは、地味にきつい。けれど、こんなところでレティを諦めるわけにはいかないワタシは、必死に精霊達を見失わないように足を前に踏み出す。
そして、十時間後。魔族といえど、さすがに疲労で足がどうにかなりそうな状態になってきたところで、ようやく、精霊達が振り返る。
「このあたりー」
「レティ、ちかいー」
「きっといるー」
(きっとじゃなくて、絶対、居てもらわなきゃ困るわっ)
これだけ歩かされて、全て徒労に終わったとなれば、ショックどころの話ではない。けれど、精霊というだけで、そのくらいのいたずらは仕掛けてきそうなところが怖かった。
「ほ、んと…なの、ね?」
「ほんとー」
「しんじつー」
「だいじょーぶー」
座り込めばしばらく立てなくなるであろう自信がある状態で、ワタシは気合いを入れる。携帯していた水を口に含み、喉を潤すと、その状態のまま、呼び掛ける。
「レティ、どこだっ、レティ」
フラフラと歩きながら、ワタシはとにかく呼び掛けることしかできない。
「レティっ、レティっ」
何度も何度も、声が嗄れてきては、水を飲み、声を張り上げる。
すでに、明るかった森は、暗闇に包まれて、空には満点の星が輝いている。叫び続けた声は、もう水ではどうにもならないほどに嗄れてきていた。
「レティ、レティっ!」
と、その時、足も限界だったのか、木の根に足を取られて、盛大に転ぶ。
「うっ……レティ、レティ……」
森に来るまでは、ほとんど喉を通らないながらも飲み食いしていたものの、今日は森に入ってから、ほとんど何も口にしていない。魔族は、そこそこ体力のある種族ではあるものの、さすがに丸一日叫びながら森をさまよって、無事なわけがなかった。
「レティ……どこに、居るんだ……?」
見つからない愛しい人を思って、ワタシは立ち上がることもできずにうなだれる。すると……。
「リド……」
「っ、レティ!?」
愛しい人の声に顔を上げると、そこには、飴色のウェーブがかった長髪に、同じく飴色の瞳をした可愛らしい女性がいた。その服は、精霊らしく、ヒラヒラとした白いドレスで、体の大きさが百七十センチあることから、彼女が上級精霊であることが伺える。
「レティっ、誤解だっ! いえ、誤解なのよっ」
レティに話しかけた直後、口調が男のものに戻っていることに気づき、慌てて修正しながら、どうにか力を振り絞って、フラフラと立ち上がる。
「……商会のお仕事の後、どこに向かってらしたの?」
唇を震わせて、緊張気味に尋ねるレティに、ワタシは即座に答える。
「ジーク達のところよ。極秘の頼み事をされていて、毎日通う必要があったのよ」
「……それは、わたくしにも言えないこと?」
「そうね、こんな事態にならなければ、話す許可はもらえなかったわ。……簡単に言えば、ジークとその片翼の子との間を取り持つために動いていたのよ」
周りに誰の気配もないことを確認して、ワタシはあっさりと事実を明かす。ただ、こんな事態にならなければ、ジークもユーカちゃんのことを隠したかったであろうことは確実だ。
「では、リドが女性もののドレスを注文していたというのは……?」
飴色の瞳を不安で大きく揺らせたレティのその言葉に、事の発端は、ジークやハミルに頼まれてドレスを注文したことだったのだろうと理解する。まさか、その情報がレティの元に届くとは思っていなかったため、これは完全なるワタシの失態だ。
「どこまで知ってるかは知らないけれど、あれはジーク達に頼まれて、用意したドレスよ。ワタシが贈るものじゃないわ」
そう言えば、レティは体当たりする勢いでワタシに抱きつき、ポロポロと涙を溢す。
「では、ではっ、わたくしは、リドに嫌われたわけではないのですねっ?」
「えぇ、もちろんよ。ワタシにとってはレティが全てなのよ」
もう、立っているのもつらい状態ではあったものの、ここでふらつくわけにはいかない。心を痛めたレティを慰める役は、誰にも譲るつもりはない。
「良かった。本当に、良かった……」
ワタシの胸に顔を押しつけて、くぐもった声で安心したということを告げてくるレティ。その様子に、ワタシは愛しさが溢れて止まらなくなりそうだ。
「レティ、帰りましょう。帰ったら、詳しい話もしたいし、たくさん愛し合いたいわ」
「はぃ……帰ります」
『愛し合う』という言葉に頬を染めたレティに、ワタシは思わずギュッと抱き締めて、その柔らかな体を堪能する。
「リ、リド? 恥ずかしいですっ」
「もうちょっとだけ」
そうして、誤解が解けたワタシ達は、しばらくお互いを堪能して……結局、疲労には勝てず、そのまま気絶してしまい、レティを慌てさせるなんて一幕もあったものの、仲良くヴァイラン魔国へと戻るのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回予告です。
次回は、リドルとレティの出会い編になるかと思います。
しばらく準備をして、本編でレティが出てくる頃に更新しようかと企んでおりますので、よろしくお願いします。
それでは、また!
あなたにおすすめの小説
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。
再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。
妻を一途に想い続ける夫と、
その想いを一ミリも知らない妻。
――攻防戦の幕が、いま上がる。
想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…
宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。
いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。
しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。
だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。
不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。
差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、
彼女は“自分のための人生”を選び初める。
これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!