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わたくし、異世界で婚約破棄されました!?の番外編
恵方巻き(ルティアス視点)
「リリス、今日が何の日か知ってる?」
「今日、ですか? 二月三日……分かりませんわね」
しばらく悩んだ末、そう答えるリリスに、僕は笑みを浮かべる。
「ふふっ、今日は、節分という日なんだよ」
「節分!?」
なぜか驚いている様子のリリスに、僕は、魔国独自の文化である節分について、リリスには知識があったのだろうかと考える。そして、本題に入る。
「と、いうわけで、恵方巻きを作ろう!」
「っ、素晴らしい提案ですわっ!」
恵方巻きも知っていたらしいリリスは、輝かんばかりの笑みを浮かべる。しかし……。
「っ、ルティは、手伝ってくれるのですわよね?」
途端に不安そうになったリリスに、僕は苦笑しそうになるのを何とか堪えて、もちろんとうなずく。すると、ホッとした表情を見せたのも束の間、今度は恥ずかしくなったのか、僕から目を逸らす。
「そのっ、不安だったなんてことはありませんのよ? ただ、料理をするからにはルティが居なければと思っただけですのっ」
その心情を全て、ひねくれながらも暴露してしまう愛しい片翼に、僕は、恵方巻きなんて放っておいて、今すぐリリスをベッドに引き込みたい衝動に駆られる。
(ダメだ。リリスはこんなに楽しみにしてくれてるんだから、今さらやめることなんてできないっ)
どうにか煩悩を追いやって、僕は準備を始めるべく、台の上に材料を出していく。マグロにサーモンにイカにエビにイクラにカニにツナに玉子焼きにキュウリにレタスに大葉にマヨネーズにかんぴょうに高野豆腐におぼろに味付け椎茸に海苔に寿司飯に……それなりに広かった台が満杯になるくらい、様々な材料を出していく。
「ル、ルティ? 本当に、これを使って恵方巻きを作るんですの?」
「うん、好きな具材を挟めるようにしたいからね」
そう言いながら、他にも明太子やらサンドイッチに使うような潰したゆで卵とマヨネーズを和えたようなものやらも出しておく。
「シェイラとアルムも誘ってるから、そろそろ来るはずだよ」
「いつの間に……」
呆然とするリリスに、僕はニッコリ笑って、ちょうど着いたらしい噂の二人の気配に、さらに笑みを深める。
「お姉様っ!」
「久しぶりだ。『絶対者』」
「シェイラにアルム……」
「それじゃあ、皆、手を洗って……巻き簾は人数分あるし、本来は一本丸々だけど、半分に切るものがあっても良いと思って包丁の数も問題ないよう用意したからね。好きなだけ巻くと良いよ」
具材はすでに、すぐに挟める状態にしてある。だから、後は楽しむだけだ。
「もちろん、リリスには僕が教えるから、ね?」
「待ってください。私達も初心者なので、最低限のレクチャーは頼みたいです」
「……頼む」
シェイラは素直に頼み、アルムは多少苦々しい様子で頼んでくる。まぁ、ここで意地悪するほど僕の性格は破綻していないため、快く引き受ける。
「それじゃあ、全員でやってみようか」
巻き寿司の巻き方を教えて、少しすれば、シェイラとアルムは綺麗に巻けるようになっていた。問題は……。
「わたくしのだけ、どうして……」
何度やっても真ん中に巻けないリリスだった。
「うーん、寿司飯を広げる時に問題があると思うんだけど……リリス、綺麗に広げた?」
「……その、ちょっと、適当だったかもしれませんわ」
そっと目を逸らすリリスに、僕は優しく教えてあげようとして……ふいに、シェイラの呟きが聞こえる。
「お姉様って、案外不器用……」
その言葉に、リリスはズーンと沈み込む。そして……。
「ふ、ふふふふふ……」
なぜか、おもむろに笑い出すリリス。
「ならば、わたくしは斬る方に専念しますわっ! さぁっ、覚悟!」
「えっ、ちょっ、リリス! それはまだっ」
言い終える前に、リリスは僕が作った、新しく巻けたばかりだったそれを掴んで、真ん中に包丁を振り下ろす。すると……。
「あっ」
「……だから言ったのに……」
まだ海苔が馴染んでいない巻き寿司を切ると、海苔が剥がれてしまう。それをリリスは目の当たりにして、ショックを受けたように固まる。
「リリス?」
「わ、わたくし……役立たず……」
「っ、ち、違うからねっ!? ただ、巻き寿司を馴染ませる時間がないままに切ったせいで起こった悲劇だからねっ!?」
「そ、そうですよ! そもそも、それを説明していなかったルティアスが悪いんですっ」
「『絶対者』……だ、大丈夫だ。ちょっと海苔が剥がれただけだろう?」
見たこともないくらいに落ち込むリリスに、僕達は全員でリリスを慰める。
そうこうしながら、何とか、全員が巻き寿司を巻き終わり、しっかりと海苔が馴染んだものを、包丁を水で濡らしながら切るという手法も教えて、どうにか料理の時間を終える。そして……。
「んーっ、美味しいですわっ」
恵方巻きを無言で食べ終えた後、満面の笑顔で告げるリリスを前に、僕は来年も絶対、リリスと一緒に恵方巻きを作ろうと決意するのだった。
「今日、ですか? 二月三日……分かりませんわね」
しばらく悩んだ末、そう答えるリリスに、僕は笑みを浮かべる。
「ふふっ、今日は、節分という日なんだよ」
「節分!?」
なぜか驚いている様子のリリスに、僕は、魔国独自の文化である節分について、リリスには知識があったのだろうかと考える。そして、本題に入る。
「と、いうわけで、恵方巻きを作ろう!」
「っ、素晴らしい提案ですわっ!」
恵方巻きも知っていたらしいリリスは、輝かんばかりの笑みを浮かべる。しかし……。
「っ、ルティは、手伝ってくれるのですわよね?」
途端に不安そうになったリリスに、僕は苦笑しそうになるのを何とか堪えて、もちろんとうなずく。すると、ホッとした表情を見せたのも束の間、今度は恥ずかしくなったのか、僕から目を逸らす。
「そのっ、不安だったなんてことはありませんのよ? ただ、料理をするからにはルティが居なければと思っただけですのっ」
その心情を全て、ひねくれながらも暴露してしまう愛しい片翼に、僕は、恵方巻きなんて放っておいて、今すぐリリスをベッドに引き込みたい衝動に駆られる。
(ダメだ。リリスはこんなに楽しみにしてくれてるんだから、今さらやめることなんてできないっ)
どうにか煩悩を追いやって、僕は準備を始めるべく、台の上に材料を出していく。マグロにサーモンにイカにエビにイクラにカニにツナに玉子焼きにキュウリにレタスに大葉にマヨネーズにかんぴょうに高野豆腐におぼろに味付け椎茸に海苔に寿司飯に……それなりに広かった台が満杯になるくらい、様々な材料を出していく。
「ル、ルティ? 本当に、これを使って恵方巻きを作るんですの?」
「うん、好きな具材を挟めるようにしたいからね」
そう言いながら、他にも明太子やらサンドイッチに使うような潰したゆで卵とマヨネーズを和えたようなものやらも出しておく。
「シェイラとアルムも誘ってるから、そろそろ来るはずだよ」
「いつの間に……」
呆然とするリリスに、僕はニッコリ笑って、ちょうど着いたらしい噂の二人の気配に、さらに笑みを深める。
「お姉様っ!」
「久しぶりだ。『絶対者』」
「シェイラにアルム……」
「それじゃあ、皆、手を洗って……巻き簾は人数分あるし、本来は一本丸々だけど、半分に切るものがあっても良いと思って包丁の数も問題ないよう用意したからね。好きなだけ巻くと良いよ」
具材はすでに、すぐに挟める状態にしてある。だから、後は楽しむだけだ。
「もちろん、リリスには僕が教えるから、ね?」
「待ってください。私達も初心者なので、最低限のレクチャーは頼みたいです」
「……頼む」
シェイラは素直に頼み、アルムは多少苦々しい様子で頼んでくる。まぁ、ここで意地悪するほど僕の性格は破綻していないため、快く引き受ける。
「それじゃあ、全員でやってみようか」
巻き寿司の巻き方を教えて、少しすれば、シェイラとアルムは綺麗に巻けるようになっていた。問題は……。
「わたくしのだけ、どうして……」
何度やっても真ん中に巻けないリリスだった。
「うーん、寿司飯を広げる時に問題があると思うんだけど……リリス、綺麗に広げた?」
「……その、ちょっと、適当だったかもしれませんわ」
そっと目を逸らすリリスに、僕は優しく教えてあげようとして……ふいに、シェイラの呟きが聞こえる。
「お姉様って、案外不器用……」
その言葉に、リリスはズーンと沈み込む。そして……。
「ふ、ふふふふふ……」
なぜか、おもむろに笑い出すリリス。
「ならば、わたくしは斬る方に専念しますわっ! さぁっ、覚悟!」
「えっ、ちょっ、リリス! それはまだっ」
言い終える前に、リリスは僕が作った、新しく巻けたばかりだったそれを掴んで、真ん中に包丁を振り下ろす。すると……。
「あっ」
「……だから言ったのに……」
まだ海苔が馴染んでいない巻き寿司を切ると、海苔が剥がれてしまう。それをリリスは目の当たりにして、ショックを受けたように固まる。
「リリス?」
「わ、わたくし……役立たず……」
「っ、ち、違うからねっ!? ただ、巻き寿司を馴染ませる時間がないままに切ったせいで起こった悲劇だからねっ!?」
「そ、そうですよ! そもそも、それを説明していなかったルティアスが悪いんですっ」
「『絶対者』……だ、大丈夫だ。ちょっと海苔が剥がれただけだろう?」
見たこともないくらいに落ち込むリリスに、僕達は全員でリリスを慰める。
そうこうしながら、何とか、全員が巻き寿司を巻き終わり、しっかりと海苔が馴染んだものを、包丁を水で濡らしながら切るという手法も教えて、どうにか料理の時間を終える。そして……。
「んーっ、美味しいですわっ」
恵方巻きを無言で食べ終えた後、満面の笑顔で告げるリリスを前に、僕は来年も絶対、リリスと一緒に恵方巻きを作ろうと決意するのだった。
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