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俺、異世界で置き去りにされました!?の番外編
前世と片翼(一) (ローレル視点)
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えー、私は、前世の記憶があります。それも、日本と呼ばれる異世界で、女子大生として暮らしていた記憶です。……なーんてこと、この世界で転生してから、私は一言も言えなかった。と、いうより、忙し過ぎて、そんな事実は忘却の彼方だった。
何せ、転生した私の種族は魔族。片翼のために必死に勉強、戦闘、家事などなどを極めようとする、ハイスペック集団の一員として生まれたのだ。
もちろん、全ての魔族がハイスペックかと聞かれると、そんなことはない。特に、片翼への本能がまだはっきりしていない二百歳以下の魔族は、片翼のために努力する年長の魔族の行動がよく分からないまま、ダラダラと過ごすこともざらにある。
私は、魔族の平民として生まれて、この設定、前世でプレイした恋愛シミュレーションゲーム『夢と愛のラビリンスロード2』に出てくる魔族のものと同じだなぁと思いながら、のほほんと過ごして……は、いられなかった。勉強、鍛練、勉強、鍛練、勉強、鍛練の日々が、言葉を話せるようになった年齢から課せられて、私は必死にそれについていくこととなる。
勉強は、剣と魔法の世界ということで、特に魔法へ興味を引かれて、いつの間にかそちらの分野に特化していた。そして、鍛練に関しても、魔法を使えることが嬉しくて嬉しくて……いつの間にか、魔法局で働くことにまでなっていた。両親は、まだ成人前なのだから働く必要なんてないと力説し、寮に入って働こうとする私を必死に止めてきたものの……前世の感覚で、四十にもなって親元から離れないなんていうのは、考えられなかった。私は、両親の制止を振り切り、最年少で魔法局へ勤めることとなったのだ。
それから、約百六十年。
「んーっ、終わったぁ!」
「お疲れ。飴ちゃんいる?」
「もうっ、子供扱いしないでくださいっ! 今日から私も立派な成人なんですからね!?」
「あー、うん、そうだねぇ。こーんな小さかったローレルちゃんが成人だなんて……おっちゃん、寂しいっ!」
日々の書類業務を終わらせた私は、刈り上げた銀髪と紺の瞳、黒の角を持つ上司、ガイルさんに冷たい視線を送る。
「おぉうっ、ローレルちゃんの視線はやっぱり堪えるなぁ」
「……スイさんに言い付けますよ?」
「すまなかったぁっ!!」
ニタニタと笑うガイルさんに、そのガイルさんの片翼である奥さんの名前を出せば、土下座をして謝罪してくる。
私は、とりあえずそれを無視して、さっさと部屋から出る。今日は、久々に家に帰ってこいと両親から手紙が来ていたため、しっかりと帰省するつもりだった。
(それにしても、成人したら片翼への本能が強くなるって聞いてたけど……そうでもないかも?)
今現在、片翼がほしいという感情がないわけではない。しかし、それは聞いていたほど強いものとは思えず、首をかしげる。
(まぁ、片翼だから結婚するっていうのは違和感ありまくりだし、普通に恋愛できれば良いかなぁ?)
そう、思っていた私は、帰ってきた実家で、運命の出会いを果たす。
「ただいまー」
「お帰りなさい。ローレル。お仕事は大変じゃない? 体調崩したりしてない? 休みはちゃんともらってる?」
カラカラと横開きの扉を開けて声を上げれば、マッハの速度で母親である、私と同じ紫色の瞳の、前世の感覚からすれば二十代にしか見えない魔族の女性が現れる。
「ローラ、速いよ。あぁ、お帰り、ローレル」
「ただいま。母さん、父さん」
そう言いながら、私は玄関に見慣れない靴があることに気づく。
(? 何か、高そうな靴だけど、誰が来てるんだろう?)
そう思って問いかけようとすれば、その前に母が口を開く。
「そうだわっ! ローレルっ、貴女に良いお話を持ってきたのよっ!」
「良い話?」
何やら嫌な予感がするものの、とりあえず靴を脱いで家にあがる。
「えぇ、何でも、お城でお見合いパーティーがあるらしくって、今日はその使者さんがいらっしゃってるのよっ!」
母に先導されるまま歩けば、何やら花の香りのようなとても、とても良い匂いがしてくる。そして、母がその障子戸を開けた瞬間、それはブワリと広がり、頭がクラクラとした。
「っ、僕の片翼! どうか、結婚してくださいっ!」
そして、そんな言葉が頭の片隅で認識できた直後、私は、あまりの匂いの強さに、意識を失うのだった。
何せ、転生した私の種族は魔族。片翼のために必死に勉強、戦闘、家事などなどを極めようとする、ハイスペック集団の一員として生まれたのだ。
もちろん、全ての魔族がハイスペックかと聞かれると、そんなことはない。特に、片翼への本能がまだはっきりしていない二百歳以下の魔族は、片翼のために努力する年長の魔族の行動がよく分からないまま、ダラダラと過ごすこともざらにある。
私は、魔族の平民として生まれて、この設定、前世でプレイした恋愛シミュレーションゲーム『夢と愛のラビリンスロード2』に出てくる魔族のものと同じだなぁと思いながら、のほほんと過ごして……は、いられなかった。勉強、鍛練、勉強、鍛練、勉強、鍛練の日々が、言葉を話せるようになった年齢から課せられて、私は必死にそれについていくこととなる。
勉強は、剣と魔法の世界ということで、特に魔法へ興味を引かれて、いつの間にかそちらの分野に特化していた。そして、鍛練に関しても、魔法を使えることが嬉しくて嬉しくて……いつの間にか、魔法局で働くことにまでなっていた。両親は、まだ成人前なのだから働く必要なんてないと力説し、寮に入って働こうとする私を必死に止めてきたものの……前世の感覚で、四十にもなって親元から離れないなんていうのは、考えられなかった。私は、両親の制止を振り切り、最年少で魔法局へ勤めることとなったのだ。
それから、約百六十年。
「んーっ、終わったぁ!」
「お疲れ。飴ちゃんいる?」
「もうっ、子供扱いしないでくださいっ! 今日から私も立派な成人なんですからね!?」
「あー、うん、そうだねぇ。こーんな小さかったローレルちゃんが成人だなんて……おっちゃん、寂しいっ!」
日々の書類業務を終わらせた私は、刈り上げた銀髪と紺の瞳、黒の角を持つ上司、ガイルさんに冷たい視線を送る。
「おぉうっ、ローレルちゃんの視線はやっぱり堪えるなぁ」
「……スイさんに言い付けますよ?」
「すまなかったぁっ!!」
ニタニタと笑うガイルさんに、そのガイルさんの片翼である奥さんの名前を出せば、土下座をして謝罪してくる。
私は、とりあえずそれを無視して、さっさと部屋から出る。今日は、久々に家に帰ってこいと両親から手紙が来ていたため、しっかりと帰省するつもりだった。
(それにしても、成人したら片翼への本能が強くなるって聞いてたけど……そうでもないかも?)
今現在、片翼がほしいという感情がないわけではない。しかし、それは聞いていたほど強いものとは思えず、首をかしげる。
(まぁ、片翼だから結婚するっていうのは違和感ありまくりだし、普通に恋愛できれば良いかなぁ?)
そう、思っていた私は、帰ってきた実家で、運命の出会いを果たす。
「ただいまー」
「お帰りなさい。ローレル。お仕事は大変じゃない? 体調崩したりしてない? 休みはちゃんともらってる?」
カラカラと横開きの扉を開けて声を上げれば、マッハの速度で母親である、私と同じ紫色の瞳の、前世の感覚からすれば二十代にしか見えない魔族の女性が現れる。
「ローラ、速いよ。あぁ、お帰り、ローレル」
「ただいま。母さん、父さん」
そう言いながら、私は玄関に見慣れない靴があることに気づく。
(? 何か、高そうな靴だけど、誰が来てるんだろう?)
そう思って問いかけようとすれば、その前に母が口を開く。
「そうだわっ! ローレルっ、貴女に良いお話を持ってきたのよっ!」
「良い話?」
何やら嫌な予感がするものの、とりあえず靴を脱いで家にあがる。
「えぇ、何でも、お城でお見合いパーティーがあるらしくって、今日はその使者さんがいらっしゃってるのよっ!」
母に先導されるまま歩けば、何やら花の香りのようなとても、とても良い匂いがしてくる。そして、母がその障子戸を開けた瞬間、それはブワリと広がり、頭がクラクラとした。
「っ、僕の片翼! どうか、結婚してくださいっ!」
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