片翼シリーズ番外編

星宮歌

文字の大きさ
16 / 41
私、異世界で監禁されました!?の番外編

バレンタイン ジーク&ハミル編(ハミルトン視点)

 今日はバレンタインということで、僕はウキウキしながらヴァイラン魔国へと転移する。ユーカから、今日は仕事を完璧に終わらせて、おやつ時に来てほしいと言われていたため、今はその時間だ。


「ユーカ、来たよ」


 ユーカが僕達のために、チョコを手作りしてくれるらしいという話で、僕は側にジークフリートが居ないことを気にかけることなく、テラスに居たユーカへと声をかける。


「ハミル、ようこそっ」


 可愛らしい笑顔を浮かべるユーカに、僕は内心悶絶する。


「今日は、特別なチョコを作ってみました。ジークには先程あげたばかりなんです」

「そう……」


 僕が最初にもらえなかったことは残念だったが、ジークフリートがここに居ないということは、きっと、今の時間は僕のものだ。ユーカに招かれるまま、僕はユーカの対面に腰かけて、ユーカのどこか嬉しそうな表情を眺める。


「チョコは、これです」


 そう言ってユーカが差し出してきたのは、ハート型のプックリした可愛らしいチョコ。


「はい、あーん」

「っ、ユ、ユーカ!?」


 いつもは、僕達が求めない限りこんなことはしてくれないユーカが、今日は嬉々としてチョコを差し出してくる。


「ほら、あーん、です」

(これは、夢? いやっ、現実だっ!)


 ユーカが積極的に差し出してくるという事実に困惑しながらも、思いがけないご褒美に僕は天にも昇る気持ちになって、それを食べる。


「ん、美味しい。お酒入りなんだね」

「はい、特別なお酒です」


 そうして、ユーカが微笑んだ姿が、最後に見た光景だった。








「……あれ?」


 なぜか、意識がそこで途切れていることに気づいた僕は、起き上がりながらそう声を出して……その声が、思いの外高いことに首をかしげる。


「あっ、ハミルも目を覚ましたんですねっ」


 そう言うのは愛しい愛しいユーカの声で……そちらを見ると、ユーカが幼い子供らしきものを抱き締めているのを見てしまう。


「っ、ユーカ、そいつ、誰?」


 僕から見えるのは、翡翠色の髪のみ。僕は、大人げなくそいつに殺気を向けて……。


「落ち着け、ハミル」


 どこか、随分昔に聞いた覚えのある声に、そちらをじっと注視して……。


「まさか、ジーク?」


 そこに居たのは、五歳くらいの姿となったジークフリートで、彼は、なんだか死んだ魚のような目をしていた。


「お前も同じ状態だ、ハミル」

「えっ?」


 そう言われて、先程から違和感を感じる声に加えて、体が、どうにも小さいような気がして、なぜか近くに用意されていた姿見を見て、絶句する。


「……これ、僕も幼くなってる?」


 そこに映っていたのは、やはり五歳くらいの頃の僕の姿。


「はいっ、チョコの中に、年齢退行の薬を入れさせてもらいました」

「えっ? ユーカ? えっ?」


 混乱する僕に、ジークはため息を一つ吐くと、説明をしてくれる。


「ユーカは、子供の俺達の姿をしっかりと愛でたいらしい」


 その、端的な説明に、僕は思わず固まる。


(いや、ユーカに愛でてもらえるのは嬉しいよ? 嬉しいけど……この姿じゃあ、生殺しじゃないかっ!)


 そこでようやく、僕はジークが死んだ魚のような目をしていた理由に思い至る。


「ハミル、ハミル」


 ユーカから、おいでおいでと手招きをされては、僕はそちらに行かざるを得ない。


「ふわわぁ、二人とも可愛いですっ!」


 そんな褒め言葉は、あまり嬉しくない。しかし、それを言うわけにもいかず、僕達はその日は一日中ユーカに愛でられることとなる。


(仕事を完璧に終わらせてって……このためだったんだね)


 ユーカが嬉しいのであれば、少しくらいこんなことに付き合うのはやぶさかではないものの……ある意味拷問の一時だったため、僕とジークは、来年以降のバレンタインは、混ぜ物がないかしっかり警戒しようと話し合うことになるのだった。
感想 13

あなたにおすすめの小説

オマケなのに溺愛されてます

浅葱
恋愛
聖女召喚に巻き込まれ、異世界トリップしてしまった平凡OLが 異世界にて一目惚れされたり、溺愛されるお話

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。 再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。 妻を一途に想い続ける夫と、 その想いを一ミリも知らない妻。 ――攻防戦の幕が、いま上がる。

想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…

宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。 いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。 しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。 だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。 不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。 差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、 彼女は“自分のための人生”を選び初める。 これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!