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第四章 遠い二人
第六十五話 状況整理(アルム視点)
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それにしても、と、ボクはあらかた片付いた書類の小山を前に、ペンを止める。
ギースは恐らく、悪魔に乗っ取られたのだろう。それがいつのことなのかは不明だが、ギースと共に行動していた影の何人かは、行方知れずとなっている。どうにも、ギース自身のことをかぎまわったらしい形跡はあるのだが、ここまで捜して見つからないとなると、彼らは帰らぬ人となったのだろう。
そして、最も重要なのは、ギースの抜けた穴を埋める人材が居ないということだった。
(よりにもよって、行方不明の影は実力者揃い。こんなことなら、シェイラに影の育成を頼んでおくべきだったか……)
シェイラのために、悪魔騒動を何とかしたい気持ちは強いものの、そのための情報収集がままならない状態では、苦労することは必須。ギースの居場所を割り出すことも、バルファ商会に迫ることも、今は難しかった。
(バルファ商会は、見事に蜥蜴の尻尾切りをしてきたからな)
あの倉庫の持ち主であったバルファ商会は、悪魔召喚に関して、知らぬ存ぜぬを貫いた。倉庫には、確かに悪魔召喚を行った形跡はあったものの、召喚主については不明で、強制的にバルファ商会の面々を調査してみたものの、召喚主を割り出すことは叶わなかった。完全に、手詰まり。それが、今の状況だ。
「ディーク、お前は、誰が、何の目的で悪魔召喚を行ったと思う?」
ちょうど、書類、ではなく、二人分のお茶を持ってきたディークは、ボクの前に一つ、そして、書類を挟んだ反対側に椅子を持ってきて、そのまま机に一つお茶を置いて、我が物顔でそれを啜っている。暇なのかと問いたい気持ちを抑えて問えば、ディークは、顎に手を当てて考え込む。
「そうですね。陛下を殺そうとしたことから考えるに、私怨か、もしくは王位簒奪目的か、といったところでしょうか? 誰が、となると、さすがに分かりかねますがね」
「それなら、シェイラが狙われたのは、ボクにダメージを与えるためか?」
そうであるならば、これほど効果的なものは中々ないだろう。しかし、ディークの考えは違うらしく、ティーカップを置くと、ゆっくり首を横に振る。
「そちらに関しては、本当に悪魔に興味を持たれてしまった可能性が高いかと」
「悪魔が、興味?」
悪魔というのは、所詮魔法でできた存在だ。そんなものが興味を持つとは何事かと訝しめば、ディークは伊達眼鏡の奥で目をキラリと光らせる。
「悪魔は、高位のものであるほど、強い感情を持つとされます。そして、過去には悪魔が対価に自身の花嫁を望んだという例も確認されております」
「……つまりは、シェイラは悪魔に花嫁認定されたかもしれない、と?」
「シェイラ様のお話が正しいのであれば、そう考えるのが自然かと」
ディークは淡々と応えるが、ボクの腸は煮えくり返そうだ。自然と殺気が吹き出すものの、ディークは平然と受け流して「さっさとその殺気を収めなければ、斬りますよ?」……本気の目で脅されたため、とりあえず何とか鎮まる。
「陛下は、まずはギースの代わりを立てて、早急に調査すべきかと存じます」
「いや、しかしだな。そもそもギースの代わりなど……」
「居るではありませんか」
「……どこにだ?」
平然と告げたディークに、ボクは思いっきり眉を寄せて尋ねる。
「あぁ、ちょうど来たようですよ?」
そして、ボクの執務室に、ノックの音が響いた。
ギースは恐らく、悪魔に乗っ取られたのだろう。それがいつのことなのかは不明だが、ギースと共に行動していた影の何人かは、行方知れずとなっている。どうにも、ギース自身のことをかぎまわったらしい形跡はあるのだが、ここまで捜して見つからないとなると、彼らは帰らぬ人となったのだろう。
そして、最も重要なのは、ギースの抜けた穴を埋める人材が居ないということだった。
(よりにもよって、行方不明の影は実力者揃い。こんなことなら、シェイラに影の育成を頼んでおくべきだったか……)
シェイラのために、悪魔騒動を何とかしたい気持ちは強いものの、そのための情報収集がままならない状態では、苦労することは必須。ギースの居場所を割り出すことも、バルファ商会に迫ることも、今は難しかった。
(バルファ商会は、見事に蜥蜴の尻尾切りをしてきたからな)
あの倉庫の持ち主であったバルファ商会は、悪魔召喚に関して、知らぬ存ぜぬを貫いた。倉庫には、確かに悪魔召喚を行った形跡はあったものの、召喚主については不明で、強制的にバルファ商会の面々を調査してみたものの、召喚主を割り出すことは叶わなかった。完全に、手詰まり。それが、今の状況だ。
「ディーク、お前は、誰が、何の目的で悪魔召喚を行ったと思う?」
ちょうど、書類、ではなく、二人分のお茶を持ってきたディークは、ボクの前に一つ、そして、書類を挟んだ反対側に椅子を持ってきて、そのまま机に一つお茶を置いて、我が物顔でそれを啜っている。暇なのかと問いたい気持ちを抑えて問えば、ディークは、顎に手を当てて考え込む。
「そうですね。陛下を殺そうとしたことから考えるに、私怨か、もしくは王位簒奪目的か、といったところでしょうか? 誰が、となると、さすがに分かりかねますがね」
「それなら、シェイラが狙われたのは、ボクにダメージを与えるためか?」
そうであるならば、これほど効果的なものは中々ないだろう。しかし、ディークの考えは違うらしく、ティーカップを置くと、ゆっくり首を横に振る。
「そちらに関しては、本当に悪魔に興味を持たれてしまった可能性が高いかと」
「悪魔が、興味?」
悪魔というのは、所詮魔法でできた存在だ。そんなものが興味を持つとは何事かと訝しめば、ディークは伊達眼鏡の奥で目をキラリと光らせる。
「悪魔は、高位のものであるほど、強い感情を持つとされます。そして、過去には悪魔が対価に自身の花嫁を望んだという例も確認されております」
「……つまりは、シェイラは悪魔に花嫁認定されたかもしれない、と?」
「シェイラ様のお話が正しいのであれば、そう考えるのが自然かと」
ディークは淡々と応えるが、ボクの腸は煮えくり返そうだ。自然と殺気が吹き出すものの、ディークは平然と受け流して「さっさとその殺気を収めなければ、斬りますよ?」……本気の目で脅されたため、とりあえず何とか鎮まる。
「陛下は、まずはギースの代わりを立てて、早急に調査すべきかと存じます」
「いや、しかしだな。そもそもギースの代わりなど……」
「居るではありませんか」
「……どこにだ?」
平然と告げたディークに、ボクは思いっきり眉を寄せて尋ねる。
「あぁ、ちょうど来たようですよ?」
そして、ボクの執務室に、ノックの音が響いた。
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