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第四章 遠い二人
第六十九話 足りない情報
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(助っ人の方に、会えませんでした……)
疲れが溜まっていたのか、眠り込んでしまった私は、助っ人として呼んでいた方が帰ってしまったことを聞かされて、少しばかり落ち込む。何でも、その人は私の診察をして、解決策を提示してくれたらしい。そして、お姉様は、その解決策を実行するために必要な媒体を取りに、今はどこかへ行ってしまっている。
「私は、役立たず、ですね」
この国では、蜘蛛を放ったところで、言葉が分からないため、情報収集もできない。ついでに、ドラグニル竜国まではさすがに遠すぎて、置いてある蜘蛛まで魔力が届かず使えない。本格的に、私は何もできなかった。
「どうしましょう?」
やることが何もない。いや、お姉様の気遣いで、この部屋には様々なジャンルの本が本棚に納められてはいるものの、それを読む気にもなれない。心を占めるのは、忘れようと努力している相手、アルムのことばかりだ。
「今頃、どうしているのでしょう?」
気になるのは、アルムのことばかり。悪魔の件もまだ解決していない。悪魔の召喚主は、恐らくバルファ商会の者達ではないか、というところまでは調べていたものの、どうもその背後に何かが居るような気がして、それがアルムの脅威にならないかが心配だった。
(ドライムに関しても、おかしなところは多かったですし……本当は、自分で調べ上げたいところなのですが、ね……)
残念ながら、それをすることは不可能な状態だ。悪魔という大きな脅威と、周囲を取り巻く不穏の芽。それらを考えれば、アルムの側を離れるべきではないのではないかと思えてしまう。
(……ですが、所詮、私は情報を集めることしかできませんし……それくらいなら、ギース以外の影達がカバーできますものね)
「……そういえば、ギースはなぜ、私を連れてもっと遠い場所へ向かわなかったのでしょう?」
ギースに誘拐された時のことを思い出した私は、ふと、そのことに疑問を抱く。
ギースには……いや、ギースを乗っ取った悪魔には、十分な時間があった。私を遠くに連れ去って人質にでもしておけば、もしかしたら、アルムに少しは効果があったかもしれないのに、それをせず、アルムを待っているような節さえ見られた。
「いったい、何が目て……き…………」
思考の海に沈んでいた私は、ふいに、その思考がぼやける感覚に襲われる。
(こ、れは……まさか、また)
また、私が私でなくなる。その危機感に、何とかして、異常を知らせようと立ち上がりかけるものの、すでに、体は動かなくなっていた。
(い、や……)
また、私ではない私が表に出てくる。それを予感して、心が悲鳴を上げた直後……意識は、闇に呑まれるのだった。
疲れが溜まっていたのか、眠り込んでしまった私は、助っ人として呼んでいた方が帰ってしまったことを聞かされて、少しばかり落ち込む。何でも、その人は私の診察をして、解決策を提示してくれたらしい。そして、お姉様は、その解決策を実行するために必要な媒体を取りに、今はどこかへ行ってしまっている。
「私は、役立たず、ですね」
この国では、蜘蛛を放ったところで、言葉が分からないため、情報収集もできない。ついでに、ドラグニル竜国まではさすがに遠すぎて、置いてある蜘蛛まで魔力が届かず使えない。本格的に、私は何もできなかった。
「どうしましょう?」
やることが何もない。いや、お姉様の気遣いで、この部屋には様々なジャンルの本が本棚に納められてはいるものの、それを読む気にもなれない。心を占めるのは、忘れようと努力している相手、アルムのことばかりだ。
「今頃、どうしているのでしょう?」
気になるのは、アルムのことばかり。悪魔の件もまだ解決していない。悪魔の召喚主は、恐らくバルファ商会の者達ではないか、というところまでは調べていたものの、どうもその背後に何かが居るような気がして、それがアルムの脅威にならないかが心配だった。
(ドライムに関しても、おかしなところは多かったですし……本当は、自分で調べ上げたいところなのですが、ね……)
残念ながら、それをすることは不可能な状態だ。悪魔という大きな脅威と、周囲を取り巻く不穏の芽。それらを考えれば、アルムの側を離れるべきではないのではないかと思えてしまう。
(……ですが、所詮、私は情報を集めることしかできませんし……それくらいなら、ギース以外の影達がカバーできますものね)
「……そういえば、ギースはなぜ、私を連れてもっと遠い場所へ向かわなかったのでしょう?」
ギースに誘拐された時のことを思い出した私は、ふと、そのことに疑問を抱く。
ギースには……いや、ギースを乗っ取った悪魔には、十分な時間があった。私を遠くに連れ去って人質にでもしておけば、もしかしたら、アルムに少しは効果があったかもしれないのに、それをせず、アルムを待っているような節さえ見られた。
「いったい、何が目て……き…………」
思考の海に沈んでいた私は、ふいに、その思考がぼやける感覚に襲われる。
(こ、れは……まさか、また)
また、私が私でなくなる。その危機感に、何とかして、異常を知らせようと立ち上がりかけるものの、すでに、体は動かなくなっていた。
(い、や……)
また、私ではない私が表に出てくる。それを予感して、心が悲鳴を上げた直後……意識は、闇に呑まれるのだった。
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