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第四章 遠い二人
第八十三話 宣戦布告(アルム視点)
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(シェイラが可愛い、シェイラが可愛い、シェイラが可愛い、シェイラが可愛い――――)
赤くなって逃げ出したシェイラの姿が、何度も何度も頭の中を巡って、ボクは人化を解いて、遠慮なくビッタンビッタンと尻尾を床に打ち付ける。きっと今は、瞳孔も開いていることだろう。
この胸の内の衝動をどうにかするべく、体を動かしたいところではあるが、そんな理由で暴れることはできない。騎士達の訓練に乱入することも考えたが、最近新規の騎士が入隊したばかりで、さすがにボクが邪魔をしては可哀想だと思い止まる。
(くっ、この衝動を、どうすればっ!)
このままでは、書類仕事にも身が入らない。いっそのこと、滝行と呼ばれる魔国ならではの精神統一方法を試してみようかとも考えたところで、扉がノックされる。
「セルグです。シェイラお嬢様のことでお話があって参りました」
「入れ」
シェイラのこと、という言葉に、即座に入室の許可を出したのだが……。
(な、何だ? なぜ、殺気立っている?)
セルグは、入室した瞬間、殺気を放ち始めた。いや、先程までは隠していただけなのだろう。
思わず戦闘体勢に入って身構えたボクに、セルグはニコリと笑う。
「シェイラお嬢様よりお聞きしました。陛下は、シェイラお嬢様を想っているのだと。そして、シェイラお嬢様も憎からず想っているのだと」
殺気立ったまま、いきなりそんなことを言われたボクは、少しばかり混乱する。
(シェイラが、ボクをっ!? っ、ではなくて、なぜ、セルグはこんな状態なんだ!?)
「ですが、我々は、シェイラお嬢様を守る使命があります。と、いうわけで、陛下には、我々、シェイラお嬢様親衛隊と戦っていただければと」
「……シェイラが欲しいなら、実力を示せ、と?」
問えば、セルグは殺気をさらに膨らませて、ニコニコと笑みを増す。もう、その姿はホラー以外の何者でもない。
「我々にとって、シェイラお嬢様は娘も同然。もちろん、逃げるなどということはしませんよね?」
確実にただ者ではない気配に呑まれそうになりながら、ボクはどうにか竜王としての威厳を保ってうなずく。
「もちろんだ」
「では、それぞれの勝負内容を書いた資料をお渡しします。ただし、戦いはシェイラお嬢様に告白をした後といたしますので、そこはご安心ください」
言外に、『告白したら殺るぞ?』との宣言を受けたボクは、とんでもない保護者が居たものだと思いながら、セルグが書類の束を差し出すのを見て……目を見張る。
「こ、これは……」
「では、失礼しました」
手渡された書類には、確かに勝負の方法が事細かに書いてあった。『千メートル雑巾がけ競争』だとか、『キレイキレイにピッカピカ、お部屋片付け競争』だとか、『最上級のおもてなしを、フルコースを作れ』だとか、『洗濯物捌きの達人!』だとか……八割方が、家事の関係。それ以外は、『ドキドキっ、護衛任務を達成しろ』だの『忍びの極意』だの、『打倒使用人ズ』だの……シェイラを手に入れるためには、これらを全てこなさねばならないと考えると、少しばかり気が遠くなる。
(頑張らねば、な……)
シェイラへの告白は、まだしばらく先になりそうだった。
赤くなって逃げ出したシェイラの姿が、何度も何度も頭の中を巡って、ボクは人化を解いて、遠慮なくビッタンビッタンと尻尾を床に打ち付ける。きっと今は、瞳孔も開いていることだろう。
この胸の内の衝動をどうにかするべく、体を動かしたいところではあるが、そんな理由で暴れることはできない。騎士達の訓練に乱入することも考えたが、最近新規の騎士が入隊したばかりで、さすがにボクが邪魔をしては可哀想だと思い止まる。
(くっ、この衝動を、どうすればっ!)
このままでは、書類仕事にも身が入らない。いっそのこと、滝行と呼ばれる魔国ならではの精神統一方法を試してみようかとも考えたところで、扉がノックされる。
「セルグです。シェイラお嬢様のことでお話があって参りました」
「入れ」
シェイラのこと、という言葉に、即座に入室の許可を出したのだが……。
(な、何だ? なぜ、殺気立っている?)
セルグは、入室した瞬間、殺気を放ち始めた。いや、先程までは隠していただけなのだろう。
思わず戦闘体勢に入って身構えたボクに、セルグはニコリと笑う。
「シェイラお嬢様よりお聞きしました。陛下は、シェイラお嬢様を想っているのだと。そして、シェイラお嬢様も憎からず想っているのだと」
殺気立ったまま、いきなりそんなことを言われたボクは、少しばかり混乱する。
(シェイラが、ボクをっ!? っ、ではなくて、なぜ、セルグはこんな状態なんだ!?)
「ですが、我々は、シェイラお嬢様を守る使命があります。と、いうわけで、陛下には、我々、シェイラお嬢様親衛隊と戦っていただければと」
「……シェイラが欲しいなら、実力を示せ、と?」
問えば、セルグは殺気をさらに膨らませて、ニコニコと笑みを増す。もう、その姿はホラー以外の何者でもない。
「我々にとって、シェイラお嬢様は娘も同然。もちろん、逃げるなどということはしませんよね?」
確実にただ者ではない気配に呑まれそうになりながら、ボクはどうにか竜王としての威厳を保ってうなずく。
「もちろんだ」
「では、それぞれの勝負内容を書いた資料をお渡しします。ただし、戦いはシェイラお嬢様に告白をした後といたしますので、そこはご安心ください」
言外に、『告白したら殺るぞ?』との宣言を受けたボクは、とんでもない保護者が居たものだと思いながら、セルグが書類の束を差し出すのを見て……目を見張る。
「こ、これは……」
「では、失礼しました」
手渡された書類には、確かに勝負の方法が事細かに書いてあった。『千メートル雑巾がけ競争』だとか、『キレイキレイにピッカピカ、お部屋片付け競争』だとか、『最上級のおもてなしを、フルコースを作れ』だとか、『洗濯物捌きの達人!』だとか……八割方が、家事の関係。それ以外は、『ドキドキっ、護衛任務を達成しろ』だの『忍びの極意』だの、『打倒使用人ズ』だの……シェイラを手に入れるためには、これらを全てこなさねばならないと考えると、少しばかり気が遠くなる。
(頑張らねば、な……)
シェイラへの告白は、まだしばらく先になりそうだった。
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