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本編
第二話 精霊の試練
『おやまぁ、今度はどんなクズかと思うたが、今回は何も見えぬ愚か者というわけか』
急に世界が真っ白な光に包まれ、誰もが目を閉じる中に響いた老婆のような声。
「っ、精霊、か?」
誰もがその異常事態に取り乱す中、ジークだけが正確にその現象の答えを把握していた。
『そう呼ぶ者もおるのぉ。じゃが、真実の見えぬ究極の愚か者がそう呼ぶとは思ってもみなかったが……』
「真実? いや、私が有責者であることに間違いはない。どのような試練なのか知らないが、必ず乗り越えてみせよう」
あまりの眩しさに目を閉じながらではあるものの、ジークは自ら、精霊の試練を受けるべきは自分だと宣言する。
『そうかそうか。かつてのクズどもと違って、多少は分別があるようじゃが、まずは必要な者を揃えようではないか』
かつて、婚約破棄を宣言した王族が居たことも、そこから精霊の試練に発展したことも、全て記録には残っているものの、具体的なことは何も記されてはいない。
それが、何かしらの意図が働いた結果であることは明らかだったが、すでに数百年も昔となった情報を求めるのは簡単なことではなかった。ゆえに、ジークは知らない。精霊の試練が課されるということがどういうことなのか。
「な、何だ!」
「っ、あら?」
その場に転移という形で呼び出されたのは、トトッコ王国の国王と、レイン・マーシャル。急な目潰しに慌てふためく国王とは違い、レインの方はいたって冷静だった。
「? 父上と……?」
「ふむ、状況が分かりませんが、ひとまず、わたくしはレイン・マーシャルと申しますわ」
「ジーク、それにマーシャル嬢? これは、一体何が起こっている?」
それに対して、ジークは説明しようと口を開くが、その前に精霊が宣言する。
『今しばらく口を利くことを禁ずる。また、この先の内容の他言を禁ずる』
その瞬間、誰もが口を開くことができなくなった。
『さて、場は整った。まずは、ジーク・ド・トトッコが受けるべき試練の内容を説明しようかのぉ』
試練、という言葉に、ジークはその表情を引き締める。しかし、その試練の内容は、あまりにもジークの予想とは違った。
『ジーク・ド・トトッコは、そこの令嬢、レイン・マーシャルと婚約し、それを両者納得の上で破棄すること。それが、大まかな試練の内容じゃ』
新たな婚約と、その破棄がどうすれば試練になるのか。この内容だけでは誰も理解できないだろう。そのため、精霊の説明は続く。
『期間は今より一年。そして、ジーク・ド・トトッコはレイン・マーシャルを心身ともに害することを禁ずる。レイン・マーシャルは、己が裁量で己の知る真実をジーク・ド・トトッコにのみ伝えることが可能じゃ』
ここでもまた『真実』という言葉が出てきたが、今のジークには何一つ分からない。それが、知らないことが、いかに幸せなことなのかも知らずに。
『そうそう、隣国の姫との婚約じゃったか? そちらは心配いらんよ。きっと、そちらはそちらで、一年を期限とした試練が課されることじゃろうしのぉ』
その言葉に、ジークは表情を変える。少なくとも、ジーク自身はこの精霊の試練をトトッコ王国特有のものだと認識しており、隣国の姫には何もないと信じていたのだから。
『二人ともに試練を乗り越えられたなら、絆も深まろうというものじゃ』
どこか嘲りを含んだその声音に、ジークは悩む素振りを見せたものの、今は考えても仕方がないと思ったのか首を横に振った。
急に世界が真っ白な光に包まれ、誰もが目を閉じる中に響いた老婆のような声。
「っ、精霊、か?」
誰もがその異常事態に取り乱す中、ジークだけが正確にその現象の答えを把握していた。
『そう呼ぶ者もおるのぉ。じゃが、真実の見えぬ究極の愚か者がそう呼ぶとは思ってもみなかったが……』
「真実? いや、私が有責者であることに間違いはない。どのような試練なのか知らないが、必ず乗り越えてみせよう」
あまりの眩しさに目を閉じながらではあるものの、ジークは自ら、精霊の試練を受けるべきは自分だと宣言する。
『そうかそうか。かつてのクズどもと違って、多少は分別があるようじゃが、まずは必要な者を揃えようではないか』
かつて、婚約破棄を宣言した王族が居たことも、そこから精霊の試練に発展したことも、全て記録には残っているものの、具体的なことは何も記されてはいない。
それが、何かしらの意図が働いた結果であることは明らかだったが、すでに数百年も昔となった情報を求めるのは簡単なことではなかった。ゆえに、ジークは知らない。精霊の試練が課されるということがどういうことなのか。
「な、何だ!」
「っ、あら?」
その場に転移という形で呼び出されたのは、トトッコ王国の国王と、レイン・マーシャル。急な目潰しに慌てふためく国王とは違い、レインの方はいたって冷静だった。
「? 父上と……?」
「ふむ、状況が分かりませんが、ひとまず、わたくしはレイン・マーシャルと申しますわ」
「ジーク、それにマーシャル嬢? これは、一体何が起こっている?」
それに対して、ジークは説明しようと口を開くが、その前に精霊が宣言する。
『今しばらく口を利くことを禁ずる。また、この先の内容の他言を禁ずる』
その瞬間、誰もが口を開くことができなくなった。
『さて、場は整った。まずは、ジーク・ド・トトッコが受けるべき試練の内容を説明しようかのぉ』
試練、という言葉に、ジークはその表情を引き締める。しかし、その試練の内容は、あまりにもジークの予想とは違った。
『ジーク・ド・トトッコは、そこの令嬢、レイン・マーシャルと婚約し、それを両者納得の上で破棄すること。それが、大まかな試練の内容じゃ』
新たな婚約と、その破棄がどうすれば試練になるのか。この内容だけでは誰も理解できないだろう。そのため、精霊の説明は続く。
『期間は今より一年。そして、ジーク・ド・トトッコはレイン・マーシャルを心身ともに害することを禁ずる。レイン・マーシャルは、己が裁量で己の知る真実をジーク・ド・トトッコにのみ伝えることが可能じゃ』
ここでもまた『真実』という言葉が出てきたが、今のジークには何一つ分からない。それが、知らないことが、いかに幸せなことなのかも知らずに。
『そうそう、隣国の姫との婚約じゃったか? そちらは心配いらんよ。きっと、そちらはそちらで、一年を期限とした試練が課されることじゃろうしのぉ』
その言葉に、ジークは表情を変える。少なくとも、ジーク自身はこの精霊の試練をトトッコ王国特有のものだと認識しており、隣国の姫には何もないと信じていたのだから。
『二人ともに試練を乗り越えられたなら、絆も深まろうというものじゃ』
どこか嘲りを含んだその声音に、ジークは悩む素振りを見せたものの、今は考えても仕方がないと思ったのか首を横に振った。
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