婚約破棄ですか? 無理ですよ?3

星宮歌

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本編

第六話 婚約発表の行方1

 レインの言葉通り、婚約の発表を行わなければならないことがトトッコ王国の法律書で判明した。そのため、急遽婚約発表の場を整えるということになったのだが、それはどんなに急いでも一月後のことになってしまうと言われてしまったのだった。
 精霊の試練の期間は一年。この間に、婚約して、破棄までしなければならない。
 普通に考えて、そのようなことが実現してしまえばレインにとってもジークにとっても打撃になってしまう。今後の縁談という意味では、一年以内の婚約破棄など避けるべきではある。


「結局、マーシャル嬢の思惑は分からずじまいか……」


 レインと婚約破棄について話し合うつもりだったが、思いがけず婚約の公表が必要なことを知り、有耶無耶になってしまった。
 精霊の言によれば、レインはジークのことを『深く愛している』とのこと。それが真実なのか、それとも精霊の戯言なのか、その辺も確認しなければならなかった。


「っ、また、真実、か……」


 精霊の試練を課されてから、やたらと『真実』という言葉に反応してしまう自分に苦笑しながら、ジークは前を見据える。

 この場所は、婚約破棄をリーリエに要求し、精霊の試練が課された応接室。そして、昨日、レインと話し合おうとして有耶無耶になってしまった場所でもあった。
 王宮の応接室らしく、そこには高級な調度品が並び、品良く美しい輝きを放っている。そんな中、応接室の扉をノックする音が聞こえ、レインの来訪が告げられる。


「ようこそ、マーシャル嬢」

「お招きいただき、ありがとう存じますわ。トトッコ王国の小さき光にご挨拶申し上げます」


 昨日の今日でレインを呼んだ理由。それはもちろん、今後のことについての話もあったが、中途半端に聞いた真実の続きが気になったというのもある。


「昨日はあまり話せなかったから、今後のことについて話そうと思う」


 そう伝えれば、レインは嬉しそうに笑う。


「えぇ、殿下とわたくしの婚約発表ですわね。我がマーシャル家の威信にかけましても、盛大なものにしてみせましょう」

「っ、いや、そのようなものではなく、小規模に行おうと考えている」


 婚約発表を盛大に行えば、その分、破棄した時のダメージも大きい。破棄をすることが前提のこの婚約で、盛大な発表にする意味はなかった。


「あら? ですが、よろしいのですか? そうなれば、アルビニア嬢がお辛い思いをされるだけでしょうに」


 しかし、レインの考えはどうも違うようだった。しかも、婚約破棄をして縁が切れたはずのリーリエを持ち出してくるあたり、レイン自身の想いとは関係が無さそうだった。


「どういう意味だ?」

「そうですわね……まず、アルビニア嬢の婚約破棄の情報は、すぐに広まるでしょう。そして、その後にわたくし達の小規模な婚約発表が行われれば、意見は二つに割れますわ。一つは、アルビニア公爵家へ配慮したという意見。もう一つは、アルビニア公爵家が圧をかけたという意見」

「っ、圧など!」

「人は、憶測でものを言いますわ。それに、アルビニア公爵家への配慮という意見も問題ですわ。それは、殿下が何かしらの不義をアルビニア嬢に対して行ったことへの謝罪として受け取られます」


 少なくとも、突然の婚約破棄に、人々は何があったのかと面白おかしく噂するのは目に見えている。そうすると、確かにこの配慮というのはジークの不義を示唆するものとなるだろう。


「しばらくはわたくしが受け皿になることもできましょう。しかし、その内、隣国の姫君とのことが露見してしまう可能性が高いですわ」


 隣国の姫との婚約については、未だに極秘事項だ。それが露見することとなれば、隣国とどのような軋轢が発生するか想像もしたくない。


「以上のことから、婚約発表は盛大に行うべきですわ」


 理路整然とした説明に、ジークは言葉を詰まらせた。
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