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本編
第八話 決定
結局、良い案が思い浮かぶこともなく、暫定的には盛大な婚約発表ということになった。とはいえ、国王や宰相にも相談してからのことになるので、まだまだ決定には遠い。しかし……。
「では、心苦しくはございますが、マーシャル嬢に悪役を務めていただきましょう」
早急に相談する必要があるということで相談した結果、そう答えたのは宰相だった。
「なっ、しかし、そうするとマーシャル嬢がっ」
「マーシャル公爵家の財力は凄まじいものがございます。多少、王家から不興を買ったとしても、その繋がりを欲する者は後を絶ちません。恐らく、マーシャル嬢本人もそれが分かった上での提案だったのでしょう」
宰相が言うには、その程度の悪評でレインの価値が下がることはあり得ないとのこと。しかも、それだけの提案ができるほどに頭が回る彼女は、きっとどこからも欲されることだろう。
「しかし、こちらの勝手で不利益を与えるわけですから、何かしらの補償は必要かと存じます」
「うむ、それはそうだ。婚約破棄が行われた暁には、彼女が最も望む相手との縁を繋げられるよう手配するとしよう」
人道的な観点で言うならば、今、ジークはレインを貶める決定の場に居るということになる。
精霊が話した通り、ジークはかつての精霊の試練を受けてきたクズとは違う。そのせいでまともに思い悩むこととなっているのだが、国政を担うにあたっては清濁併せ呑む必要も出てくる。綺麗事ばかりで動かせるほど、政治の世界は甘くはないのだ。
「それにアルビニア嬢への補償も、考えなくてはなりません」
リーリエへの補償。慰謝料とは別にリーリエが何かを要求できるようにジークも話はしていたのだが、精霊の試練のこともあって、すっかり先延ばしになっていた。
「っ、アルビニア嬢から、何か要望はなかったのでしょうか?」
そう問いかけたジークだったが、国王も宰相も、そういった話は聞いていないとしか答えなかった。
「もう一度、アルビニア嬢を呼ぶか、それとももう少し期間を空けた方が良いのか、悩みどころではあるな」
そう言って、国王は宰相へと意味ありげな視線を向ける。
「……ぜひ、アルビニア嬢を呼びましょう。恐らくはその方が、アルビニア嬢にとって良いはずですので」
国王と宰相のやり取りに、ジークは少しだけ疑問を抱いたようだったが、ひとまずはリーリエと近いうちに顔を合わせることになるのだとうなずく。
そこで、宰相がどこか不安げな表情を浮かべていることなど、ジークは全く気付くことなく、その日を迎えることとなる。
「では、心苦しくはございますが、マーシャル嬢に悪役を務めていただきましょう」
早急に相談する必要があるということで相談した結果、そう答えたのは宰相だった。
「なっ、しかし、そうするとマーシャル嬢がっ」
「マーシャル公爵家の財力は凄まじいものがございます。多少、王家から不興を買ったとしても、その繋がりを欲する者は後を絶ちません。恐らく、マーシャル嬢本人もそれが分かった上での提案だったのでしょう」
宰相が言うには、その程度の悪評でレインの価値が下がることはあり得ないとのこと。しかも、それだけの提案ができるほどに頭が回る彼女は、きっとどこからも欲されることだろう。
「しかし、こちらの勝手で不利益を与えるわけですから、何かしらの補償は必要かと存じます」
「うむ、それはそうだ。婚約破棄が行われた暁には、彼女が最も望む相手との縁を繋げられるよう手配するとしよう」
人道的な観点で言うならば、今、ジークはレインを貶める決定の場に居るということになる。
精霊が話した通り、ジークはかつての精霊の試練を受けてきたクズとは違う。そのせいでまともに思い悩むこととなっているのだが、国政を担うにあたっては清濁併せ呑む必要も出てくる。綺麗事ばかりで動かせるほど、政治の世界は甘くはないのだ。
「それにアルビニア嬢への補償も、考えなくてはなりません」
リーリエへの補償。慰謝料とは別にリーリエが何かを要求できるようにジークも話はしていたのだが、精霊の試練のこともあって、すっかり先延ばしになっていた。
「っ、アルビニア嬢から、何か要望はなかったのでしょうか?」
そう問いかけたジークだったが、国王も宰相も、そういった話は聞いていないとしか答えなかった。
「もう一度、アルビニア嬢を呼ぶか、それとももう少し期間を空けた方が良いのか、悩みどころではあるな」
そう言って、国王は宰相へと意味ありげな視線を向ける。
「……ぜひ、アルビニア嬢を呼びましょう。恐らくはその方が、アルビニア嬢にとって良いはずですので」
国王と宰相のやり取りに、ジークは少しだけ疑問を抱いたようだったが、ひとまずはリーリエと近いうちに顔を合わせることになるのだとうなずく。
そこで、宰相がどこか不安げな表情を浮かべていることなど、ジークは全く気付くことなく、その日を迎えることとなる。
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