婚約破棄ですか? 無理ですよ?3

星宮歌

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本編

第十話 凶事1

 その報せが飛び込んできたのは、朝の早い時間帯。まだ、ようやく使用人達が起きて活動を始めたばかりの、日も昇りきっていない時刻のことだった。


「大変です! 殿下っ!」


 激しいノックというより、扉を叩き破ろうとするかのような音に、ジークは飛び起きる。


「な、何だ?」


 寝ぼけ目ではあったものの、何か大変なことが起きたのだと本能的に察知したのか、ジークは扉を開けた。


「何事だっ」

「た、ただいま、伝令がありまして、アルビニア公爵家が全滅した、と」

「……は?」


 アルビニア公爵家といえば、リーリエの家のことだ。それは、ジークにも理解できたが、『全滅』という言葉は聞き慣れない。いや、そもそも、そんな伝令があること自体、寝起きで頭が回っていないジークには理解ができない。


「とにかく、急ぎ大会議場へ向かうようにとのことです!」


 そんな言葉とともに、使用人達がジークの身支度を大急ぎで整えていく。

 大して情報もないまま、理由も分からず指示の通りに大会議場へと向かえば、そこには国王と宰相のみならず、国の重臣達が一堂に会していた。
 そんな彼らの顔色は、随分と悪く、その中でも一段と青ざめているのが宰相だった。


「遅くなりまして申し訳ありませんっ」


 急いで身支度を整えたものの、どうやら自分が最後だと気付き、ジークは慌てて謝罪する。


「問題ない。さぁ、すぐに始めよう」


 ジークが席に着いたのを見届けて、国王が開始を告げる。


「まずは、状況から、監視者の報告を聞こう」


 そう、監視者。精霊具を持ったリーリエには、監視者が付いていたはずなのだ。それにもかかわらず、この異常事態。一体何が起きたのかと、大会議場に居る者達の視線は国王の側に立った黒衣の男へと向けられる。


「はっ、監視対象、リーリエ・アルビニアは、精霊具を亡き母の姿を写すために使用し、そのまま就寝。しかし、その間に使用人同士のいざこざが発生したらしく、殺生沙汰へと発展。錯乱した使用人達が当主や当主夫人、ご令息まで手にかけ、異常に気付き止めようとされたアルビニア嬢もまた、その凶刃に倒れたという場面を目撃しました」


 誰かがひゅっと息を呑む。
 監視者の報告は、あまりにも残酷で、あり得ないものだった。


「……それは、止めようが無かったのか?」


 そう、監視者達は、ただ監視だけが業務ではない。時には、その身を賭して監視対象を守ることだってあるはずなのだ。それだけの力を、彼らは有している。それにもかかわらず、監視者がこのような報告をしているということは……。


「申し訳ございません。我々は、確かにその光景を目撃しましたが、実態は違うようなのです」

「? どういうことだ?」


 監視者の言葉に、国王はわけが分からないといった風に問いかける。


「……推測も混ざることになりますが、よろしいでしょうか?」


 そんな監視者の言葉に、国王は許可を与えた。
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