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本編
第十二話 二つの『真実』
「お呼びと承り、参上いたしました。トトッコ王国の小さき光にご挨拶申し上げます。レイン・マーシャルでございます」
あの後、まだ早いからと眠るかどうか問われたジークだったが、眠るにはあまりにも衝撃的なことがありすぎて、そのままじっと、本来目覚める時間まで過ごすこととなった。
そして、ふと思い至ったのが、レインの存在だった。もしかしたら、レインならば今回のアルビニア公爵家の事件について、何か知っているかもしれない。
それは、全く根拠のない思いではあったものの、そう思ってしまった瞬間には、レインを呼び出すために筆を執っていた。
「あぁ、ひとまず座ってくれ」
もはや定番となった応接室。そこで、レインは席に着き、ジークの顔をじっと見つめる。
「殿下、お顔色が悪いようですわ。やはり、アルビニア嬢のことでしょうか?」
紅茶が目の前に出される様子には見向きもせずに、ただひたすらにジークを見つめて話すレインの姿に、ジークは所在なさげにしながらも頷く。
「あぁ、それで、もし何か知っていたら教えてほしいと思ったんだ」
そう言いながらも、ジークはあまり期待してはいけないとばかりにレインからそっと目を逸らす。
「よろしいですわよ。昨日の分も含めて、本日は二つの真実をお教えしましょう」
そんな言葉に、ジークは弾かれたようにレインを見る。
「っ、知って、いるのか?」
「はい」
事も無げににこやかに肯定するレインは、出された紅茶を一口飲んで、ゆっくりと口を開く。
「では、一つ目は『リーリエ・アルビニアはアルビニア家の直系の血を引く唯一の存在』という真実を」
早速事件の核心に迫れるかと思っていたらしいジークは、肩すかしを食らう形で固まる。しかし、それでも気になる部分はあった。
「『唯一』? しかし、アルビニア公爵は……」
「アルビニア公爵は入婿ですわ。そして、リーリエ・アルビニアの母親であり、本来のアルビニア公爵は、すでに亡くなっていますわ」
そうなると、今回の事件で亡くなったアルビニア公爵は後妻を迎え、跡取りの息子を設けたということになる。
「? いや、そうなると、令息は跡取りではない、のか?」
「それでは、本日の真実を話しましょう。『アルビニア公爵は、リーリエ・アルビニアを第一王子に嫁がせることでアルビニア公爵家の乗っ取りを企んでいた』ですわ」
「なっ!? そんな話、通るわけがないだろう!」
本来、貴族家の後継者はその家を継ぐことが最優先であり、後継者となる者はそうではない貴族との婚姻を望む。だからこそ、そんなあからさまな乗っ取り計画があれば、他家に簡単に知られてしまうし、王家もそれを阻止するべく動くはずだ。
「わたくしは、真実をお話しておりますわ。この続きは、陛下に確認するも良し、明日を待ってわたくしから聞き出すも良しですわ」
そう言われて、ジークは動きを止める。
朝の会議の場で、ジークは自分一人だけが除け者にされているような、何か、周りは知っているのに自分だけ知らないことがあるような、そんな感覚に陥っていた。そして、その理由がここにあると言うのであれば、国王が簡単に話してくれるとも思えない。
「……陛下に、確認はしてみよう」
「はい、教えてくださると良いですわね」
そんな言葉に、レインがどこまで知っているのか空恐ろしく思うジークだったが、それを聞けるはずもなかった。
あの後、まだ早いからと眠るかどうか問われたジークだったが、眠るにはあまりにも衝撃的なことがありすぎて、そのままじっと、本来目覚める時間まで過ごすこととなった。
そして、ふと思い至ったのが、レインの存在だった。もしかしたら、レインならば今回のアルビニア公爵家の事件について、何か知っているかもしれない。
それは、全く根拠のない思いではあったものの、そう思ってしまった瞬間には、レインを呼び出すために筆を執っていた。
「あぁ、ひとまず座ってくれ」
もはや定番となった応接室。そこで、レインは席に着き、ジークの顔をじっと見つめる。
「殿下、お顔色が悪いようですわ。やはり、アルビニア嬢のことでしょうか?」
紅茶が目の前に出される様子には見向きもせずに、ただひたすらにジークを見つめて話すレインの姿に、ジークは所在なさげにしながらも頷く。
「あぁ、それで、もし何か知っていたら教えてほしいと思ったんだ」
そう言いながらも、ジークはあまり期待してはいけないとばかりにレインからそっと目を逸らす。
「よろしいですわよ。昨日の分も含めて、本日は二つの真実をお教えしましょう」
そんな言葉に、ジークは弾かれたようにレインを見る。
「っ、知って、いるのか?」
「はい」
事も無げににこやかに肯定するレインは、出された紅茶を一口飲んで、ゆっくりと口を開く。
「では、一つ目は『リーリエ・アルビニアはアルビニア家の直系の血を引く唯一の存在』という真実を」
早速事件の核心に迫れるかと思っていたらしいジークは、肩すかしを食らう形で固まる。しかし、それでも気になる部分はあった。
「『唯一』? しかし、アルビニア公爵は……」
「アルビニア公爵は入婿ですわ。そして、リーリエ・アルビニアの母親であり、本来のアルビニア公爵は、すでに亡くなっていますわ」
そうなると、今回の事件で亡くなったアルビニア公爵は後妻を迎え、跡取りの息子を設けたということになる。
「? いや、そうなると、令息は跡取りではない、のか?」
「それでは、本日の真実を話しましょう。『アルビニア公爵は、リーリエ・アルビニアを第一王子に嫁がせることでアルビニア公爵家の乗っ取りを企んでいた』ですわ」
「なっ!? そんな話、通るわけがないだろう!」
本来、貴族家の後継者はその家を継ぐことが最優先であり、後継者となる者はそうではない貴族との婚姻を望む。だからこそ、そんなあからさまな乗っ取り計画があれば、他家に簡単に知られてしまうし、王家もそれを阻止するべく動くはずだ。
「わたくしは、真実をお話しておりますわ。この続きは、陛下に確認するも良し、明日を待ってわたくしから聞き出すも良しですわ」
そう言われて、ジークは動きを止める。
朝の会議の場で、ジークは自分一人だけが除け者にされているような、何か、周りは知っているのに自分だけ知らないことがあるような、そんな感覚に陥っていた。そして、その理由がここにあると言うのであれば、国王が簡単に話してくれるとも思えない。
「……陛下に、確認はしてみよう」
「はい、教えてくださると良いですわね」
そんな言葉に、レインがどこまで知っているのか空恐ろしく思うジークだったが、それを聞けるはずもなかった。
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