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本編
第三十三話 並べられた『真実』
初めて、ジークの顔にレインに対する恐怖が浮かぶ。しかし、それでもレインは言葉を止めることはなかった。
「では、一週間分の『真実』から。一つ目『エヴァン・トニアはリーリエ・アルビニアのことを異性として愛してしまっていた』」
「は?」
一つ目の『真実』の段階で、ジークは衝撃のあまり思考を停止する。
「二つ目『エヴァン・トニアはリーリエ・アルビニアを本当の意味で助けられなかったわけではない』、三つ目『エヴァン・トニアは、リーリエ・アルビニアを殺した全ての者を憎んでいた』、四つ目『エヴァン・トニアの復讐には手を貸した存在が居る』、五つ目『エヴァン・トニアはその代償に死ぬこととなった』、六つ目『エヴァン・トニアは復讐の全てを見届けることはできなかった』、七つ目『エヴァン・トニアの復讐はまだ完遂されていない』」
しかも、立て続けに告げられる『真実』はどれもこれも受け入れ難かったり、疑問が残るものであったりと様々だ。
「そして、今日の『真実』は、『隣国の姫君は、試練に失敗した』ですわ」
「え……?」
ずっと、エヴァンの話ばかりで、てっきり最後までエヴァンのことだと思っていたジークは、不意打ちを食らった。
「失敗……?」
本当は、エヴァンのことでも聞きたいことは山程ある。しかし、それでも隣国の姫君のその情報は、あまりにも、ジークにとって不都合だった。
「では、姫君が、私の婚約者となることは、ない、のか……?」
いや、実際には好都合のはずだ。そもそも、強引に成されようとしていた婚約であり、国王とて本来ならば断りたかったと言っていたのだ。そういう意味では、好都合であるはずなのだが……。
「そうですわね」
レインの同意の言葉に、ジークの目の前は真っ暗になる。
「ならば、私が、今までしてきたことは……リーリエ嬢との婚約破棄は……」
「全て、無駄なことでしたわね」
そう、全てが、間違っていた。
今までは、隣国の姫君が強引にジークへ婚約の話を押し付けたせいだと、様々な悲劇の責任を隣国の姫君へ求めることができた。しかし、そのための前提条件が崩れた今、ジークがしてきたことは、ただいたずらにリーリエを傷付け、エヴァンを傷付け、それぞれを死に追いやったということになってしまう。
「そん、な……」
「お可哀想な殿下。ですが、ご安心を。わたくしは、ずーっと殿下のお傍におりますわ」
あまりにも重すぎる責任に、ジークの心は潰れそうになるが、レインはそれを支えるかのごとくそっとささやく。甘い誘惑のようなその言葉を聞きながら、ジークは疲労の限界を迎えたのか、そのまま静かに倒れた。
「では、一週間分の『真実』から。一つ目『エヴァン・トニアはリーリエ・アルビニアのことを異性として愛してしまっていた』」
「は?」
一つ目の『真実』の段階で、ジークは衝撃のあまり思考を停止する。
「二つ目『エヴァン・トニアはリーリエ・アルビニアを本当の意味で助けられなかったわけではない』、三つ目『エヴァン・トニアは、リーリエ・アルビニアを殺した全ての者を憎んでいた』、四つ目『エヴァン・トニアの復讐には手を貸した存在が居る』、五つ目『エヴァン・トニアはその代償に死ぬこととなった』、六つ目『エヴァン・トニアは復讐の全てを見届けることはできなかった』、七つ目『エヴァン・トニアの復讐はまだ完遂されていない』」
しかも、立て続けに告げられる『真実』はどれもこれも受け入れ難かったり、疑問が残るものであったりと様々だ。
「そして、今日の『真実』は、『隣国の姫君は、試練に失敗した』ですわ」
「え……?」
ずっと、エヴァンの話ばかりで、てっきり最後までエヴァンのことだと思っていたジークは、不意打ちを食らった。
「失敗……?」
本当は、エヴァンのことでも聞きたいことは山程ある。しかし、それでも隣国の姫君のその情報は、あまりにも、ジークにとって不都合だった。
「では、姫君が、私の婚約者となることは、ない、のか……?」
いや、実際には好都合のはずだ。そもそも、強引に成されようとしていた婚約であり、国王とて本来ならば断りたかったと言っていたのだ。そういう意味では、好都合であるはずなのだが……。
「そうですわね」
レインの同意の言葉に、ジークの目の前は真っ暗になる。
「ならば、私が、今までしてきたことは……リーリエ嬢との婚約破棄は……」
「全て、無駄なことでしたわね」
そう、全てが、間違っていた。
今までは、隣国の姫君が強引にジークへ婚約の話を押し付けたせいだと、様々な悲劇の責任を隣国の姫君へ求めることができた。しかし、そのための前提条件が崩れた今、ジークがしてきたことは、ただいたずらにリーリエを傷付け、エヴァンを傷付け、それぞれを死に追いやったということになってしまう。
「そん、な……」
「お可哀想な殿下。ですが、ご安心を。わたくしは、ずーっと殿下のお傍におりますわ」
あまりにも重すぎる責任に、ジークの心は潰れそうになるが、レインはそれを支えるかのごとくそっとささやく。甘い誘惑のようなその言葉を聞きながら、ジークは疲労の限界を迎えたのか、そのまま静かに倒れた。
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