黒板の怪談

星宮歌

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第一章 肝試しの夜

第二話 校舎の中へ

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「望月さん、それは、ないと思うよー」


 ガックリと肩を落として、鹿野田は呆れたように声を出す。


「いやいや、こういう時は、緩急かんきゅうというものが必要なのだよ。かのだん君!」

「……何にかけたのか、微妙に分かるような、分からないような?」

「と・に・か・く! ルール説明、いっきまーす!」


 先程までの異様な空気は完全に払拭され、今は呆れたような雰囲気が漂う中、望月は宣言通り、説明を始める。


「ルールは簡単! 二人一組に分かれて、事件があったとされる開かずの教室を探し、そこでツーショット写真を撮ること! 場所は五年生の階で、多分、皆知ってるよね?」

「むしろ、知らない人なんて居ないでしょ。組分けはどうするの?」

「スーちゃん、よくぞ聞いてくれました! じゃじゃーんっ、あみだくじーっ」


 望月は、肩にかけていたピンクの可愛らしいポシェットから、前もって用意していたらしいあみだくじを取り出す。


「ここに名前を書いて、同じ番号同士の人がペアねっ」


 しっかりとペンや懐中電灯まで用意してある様子に、まずは芦田がそのペンを取る。


「んじゃあ、さっさと決めようぜ」


 それぞれが名前を書き込んで、ペアが決まる。

 一番は芦田と杉下ペア、二番は清美と中田ペア、三番が望月と鹿野田ペアということで決まった。


「ねぇ、二番のペアはさすがに心許なくない?」

「駄目だよスーちゃんっ、あみだくじの結果なんだから!」


 怖がりな清美と、男子とはいえどこか頼りなく見える中田。さすがにこの二人で肝試しというのは無理があるのではと杉下がこっそり望月へと声をかけるものの、ばっさりと切り捨てられてしまう。


「だ、大丈夫だよ。杉下さんほど格好良く守れるとは思わないけど、僕も、しっかり、清美さんを守るから」

「そっか。じゃあ、寧子ちゃんを頼んだよ。中田君」

「! うん、頑張るよっ」


 パァッと顔を明るくさせた中田を見て、鹿野田が『青春だねぇ』と呟く。


「何言ってんの、かのだん君。私達は全員青春真っ只中よっ!」

「その呼び方、まだ続いてたのー? まぁ、優愛ちゃんはお子ちゃまだから、仕方ないかぁ」

「お子ちゃまって、かのだん君も同じじゃんっ!」

「うん、そうだねー」

「ちょっと!? 何でそんな微笑ましい幼子おさなごを見るような目を!?」

「うん、そうだねー」

「かのだん君!?」


 そんな掛け合いに、その場の雰囲気は柔らかいものへと変わる。
 しかし、そんな時間も、すぐに終わりを告げた。


「誰か居るのか?」


 そんな、自分達以外の声に、彼らは一斉いっせいに黙り込み、直ぐ側の物陰に各々で隠れる。


「声がしたと思ったんだがなぁ? 野良猫か何かだったか?」


 小学生の彼らにとっては、随分ずいぶんと遅い時間であり、夏休み中でもある。しかし、学校の職員にとっては、遅いといっても残業で残ることもあるような時間だ。夏休み中であっても部活動などは行われることもあるため、教師達の仕事が無くなることはない。
 男性教師らしき姿が遠のき、辺りが静寂せいじゃくを取り戻せば、彼らはホッと息を吐く。


「何とか、やり過ごせたな」


 周囲を確認して立ち上がった芦田は、それでもまだ周辺へと視線をめぐらせる。


「や、やっぱり、やめない? かぎも閉まってるかもしれないし……」

「まぁ、どうしても中に入れなければ諦めるが、大丈夫だろ」


 清美の懸念けねんに軽く応えた芦田は、『行くぞ』と声をかけて、校舎の中へと向かう。下駄箱へ続く扉へと手をかければ、清美の望みとは裏腹に、すんなりと扉は開いてしまう。
 下駄箱でいつもの場所へと靴を仕舞うと、持ってきておいた上履きへと履き替えて、音を立てないようにそっと動く。
 しかし、まだ職員が居るらしく、一階でウロウロしていればすぐに見つかるであろうことが見て取れた。


「とりあえず、二階に行くぞ」


 小声で話す芦田の声に、全員がそっと頷く。清美も見つかるのは怖いのか、顔色を悪くしながらも置いていかれまいと続く。


「ここなら大丈夫だろ」


 しばらく忍び足で向かえば、人気のない二階の一角へと辿り着いた。


「でも、これじゃあ開かずの教室はすぐそこになっちゃうよ?」


 そう、辿り着いたその場所は、三階へと続く階段の前であり、そのまま三階へ上ればすぐに開かずの教室へと辿り着いてしまう。
 不満そうな望月を前に、そっと手を挙げたのは、中田だった。


「な、なら、皆で行くのは、どうかな? ツーショットは、それぞれのペアで撮ることにして」


 それでは、あみだくじの意味がほとんどない。そう思ったのはもちろん望月であり、案の定、不満の声を上げかけたのだが、それより先に、杉下が『しっ』と人差し指を唇の前に立てる。

 カツン…………カツン………。

 そんな音が、三階から聞こえて、彼らは一斉いっせいに階段から離れ、手近な教室の前でしゃがみ込んだ。
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