黒板の怪談

星宮歌

文字の大きさ
32 / 39
第二章 答えを求めて

第三十一話 二手に分かれて

しおりを挟む
 地下室の骸骨とはどういうことなのか、とか、そこから導き出せた推測とは何か、とか、色々と聞かなければならないことも、話さねばならないこともたくさんあったはずだ。
 しかし、それは言葉になることはなかった。


 カツン………………。


 そう、あの音が聞こえてきたから。


「「「「「っ!?」」」」」


 ここに居る五人は、全員この音を聞いている。そして、その上で、何となく良くないものなのだということだけは理解していた。

 図書室から遠く離れた場所から聞こえていると思われるそれ。そのどこか硬質な足音が響いたことを確認するや否や、彼らはそっと音がした方向へと視線を向ける。


 カツン………………。


 まだ、そこそこ距離は遠く感じられる。しかし、それもいつこちらへ迫ってくるか分からない。


「ひとまず、その地下室が今の時代もあるかもしれないから、そこへ行ってみよう」


 小声でそう指示を出す芦田。確かに、十年前と現在では状態が違う可能性も、何か手がかりがある可能性もある。しかし、それに焦ったのは望月だった。


「待って、それって、カウンターの奥の床下収納なんだよね? それなら、全員は行かない方が良いかもしれない」

「それは……確かに、逃げ場がないものね」

「そ、そうだね。二手に分かれて、異常があればすぐに引き上げられるようにした方が、いいかも?」


 望月は、そんな二人の言葉に大きく頷く。


「そうっ。それに、鹿野田君は、少しでも動かずに休んでた方が良いと思うよ!」

「おぉーっ、優愛ちゃん、心配してくれてるのー? やっさしーっ」


 そう茶化す鹿野田だったが、望月の表情は真剣だった。


「当然っ! 怪我してるんだから、安静にしとかないとでしょっ」

「……そっかー。ありがとう、優愛ちゃん」


 面食らった顔をしながらも感謝を告げる鹿野田。望月は、その様子に大きく頷くと、芦田達の方へと向き直る。


「鹿野田君と一緒に居る人は、できれば男子が良いと思ってるけど、どうかな?」


 そう問いかければ、芦田は眉間にくっきりとシワを作る。


「……俺でも良いが、中田、頼まれてくれるか?」

「ぼ、僕!?」

「あぁ、中田は、俺よりも頭が良い。だから、何か予想外のことが起こっても、俺よりは要領よく対処できるような気がしてな」


 そう言った芦田の言葉に、中田は少しばかり呆然としていたものの、すぐに頷く。


「う、うん。なら、僕が鹿野田君の側に居るよ」


 そう、ある程度の方針が決まると、また微かに『カツン』という音が遠くから聞こえてくる。


「鹿野田と中田は待機。それ以外は、杉下の案内で行くぞ」


 そっと小声で告げた芦田の言葉に、全員が小さく頷く。
 静かに、極力音を出さずに、三人は速やかに地下室へと繋がる場所へと向かう。


「それで、どうして鹿野田君を遠ざけたの?」

「遠ざけた? どういうことだ?」


 しかし、少し進んで、声が聞こえないであろう距離まで来ると、杉下は望月へとそう問いかけていた。


「……うん、これを、見てもらいたくて、でも、鹿野田君に話すかどうかを判断できなくて……」


 言いながら、望月は先程見つけた資料を床下収納から取り出して二人に見せる。

 『願希小学校司書、鹿野田恭子』。望月が示した資料には、確かにそんな文字が書かれていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アリアさんの幽閉教室

柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。 「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」 招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。 招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。 『恋の以心伝心ゲーム』 私たちならこんなの楽勝! 夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。 アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。 心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……?? 『呪いの人形』 この人形、何度捨てても戻ってくる 体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。 人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。 陽菜にずっと付き纏う理由とは――。 『恐怖の鬼ごっこ』 アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。 突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。 仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――? 『招かれざる人』 新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。 アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。 強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。 しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。 ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。 最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

【完結】夫に穢された純愛が兄に止めを刺されるまで

猫都299
児童書・童話
タイムリープしたかもしれない。中学生に戻っている? 夫に愛されなかった惨めな人生をやり直せそうだ。彼を振り向かせたい。しかしタイムリープ前の夫には多くの愛人がいた。純愛信者で奥手で恋愛経験もほぼない喪女にはハードルが高過ぎる。まずは同じ土俵で向き合えるように修行しよう。この際、己の理想もかなぐり捨てる。逆ハーレムを作ってメンバーが集まったら告白する! 兄(血は繋がっていない)にも色々教えてもらおう。…………メンバーが夫しか集まらなかった。 ※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、Nolaノベル、Tales、ツギクルの6サイトに投稿しています。 ※ノベルアップ+にて不定期に進捗状況を報告しています。 ※文字数を調整した【応募版】は2026年1月3日より、Nolaノベル、ツギクル、ベリーズカフェ、野いちごに投稿中です。 ※2026.1.5に完結しました! 修正中です。

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1〜

おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
 お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。  とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。  最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。    先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?    推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕! ※じれじれ? ※ヒーローは第2話から登場。 ※5万字前後で完結予定。 ※1日1話更新。 ※noichigoさんに転載。 ※ブザービートからはじまる恋

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

処理中です...