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第一章 第一フロア
痕跡
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「うっわ、広っ」
扉を潜って進むと、そこは、随分と広い廊下のような場所だった。いや、廊下というよりも、これはまるで……ダンジョンだ。ゲームの中で挑むダンジョンに似ていると、どうしてかそう思ってしまう。
どこかネットリとした空気の中、僕は少し興奮気味に辺りを見回す。
もし、万が一、ここが異世界だとすれば、どこかにモンスターが居るかもしれない。
そう思ってしまえるくらいには、そこは、雰囲気満点だった。……ただ、自分の装備のこともあって、その場の雰囲気に酔っているだけかもしれないが。
「ここの光源も苔みたいだな」
ダンジョンっぽい雰囲気の中、僕は篝火が全くないことに少しだけ残念な気持ちになる。何となく、篝火があった方がもっと本格的になるように思えたからだ。
「まぁ、これはこれでありだけど」
ひとまず、この苔が全部剥がれ落ちるようなことでもない限り、光源には困らない。それを考えれば、篝火ではないことは、むしろ良いことなのかもしれない。
「よしっ、まずは探検だなっ!」
本来なら、ここはどこなんだとか、どうしてこんなところにとかいった内容で不安になっても仕方ない状況。にもかかわらず、僕は、むしろやる気に満ち溢れていた。
少なくとも、拘束はされていなかった。監視はされているようだが、動けないわけじゃない。それどころか、武器までもたされている。これならば、多少のことはどうにでもなるだろうと思えた。
コツコツと足音を立てて、僕は通路を眺めていく。変わり映えのしない通路でも、今の僕にとっては面白いものでしかなかった。
ただ……そんな風に通路を見ていたからだろうが、僕は、その時、偶然にもそれを見つけられた。
「ん? これ、何だ?」
それは、ただの引っ掻き傷にしては、少し複雑に見えた。それで、僕は不審に思って近寄ってみたわけだが……。
「……何だよ、これ……」
そこには、同じ内容が繰り返し、刻まれていた。
『助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて――――』
思わず、僕は一歩後ずさる。しかし、そこで、僕はまたしてもいらぬことに気づいてしまう。
「待てよ……これって、まさか……」
周りを良く見て、僕はようやく気づく。そこには、いくつもの引っ掻き傷があることを。そこには、いくつもの、嘆きが描かれていることを。
「……っ」
あまりに異常な、その引っ掻き傷達に、僕は言葉を失う。途端に、この場所が、薄気味悪く、恐ろしい場所のように思えて身震いする。
「なん、なんだ、これは?」
『何で、こんなことに……』
『許して許して許して許して――――』
『帰りたい、帰りたいよぉ』
それらの傷は、恐らく、全て違う人間がつけたものだ。引っ掻き傷の場合、筆跡と呼んで良いのかどうかは分からないが、それが、全て違って見えるのだ。つまりは……。
「これだけの人が、ここに、居た、のか?」
誰かがここに居た痕跡。誰かがここで絶望した痕跡が、ところ狭しと刻まれ続けている。しかし……。
「……でも、あんな高いところ、どうやって……?」
読めはしないものの、随分と高い位置にも、その引っ掻き傷はあった。高さにして、三メートルから五メートルくらいだろうか。どんなに背の高い人間でも、あんな場所にまで引っ掻き傷は残せないはずだった。
「……っ、とにかく、離れなきゃっ」
こんなものが残っている意味は分からない。しかし、こんなものが残っている場所に長く居るのは危険だということくらい、混乱した頭でも理解できた。
僕は、まともに探索もしないままに、元居た場所へと走って逃げ帰った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今回は、ちょっとしたお茶目は、なりを潜めております。
毎回お茶目が過ぎるといけませんしね?
だって、この作品のジャンルはホラーなんですからっ。
『始の書』の時にはなかった壁の文字。
これがどういうものなのかというのは、皆さんの想像にしばらくお任せしましょう。
いずれ、答えは出しますので。
それでは、また!
扉を潜って進むと、そこは、随分と広い廊下のような場所だった。いや、廊下というよりも、これはまるで……ダンジョンだ。ゲームの中で挑むダンジョンに似ていると、どうしてかそう思ってしまう。
どこかネットリとした空気の中、僕は少し興奮気味に辺りを見回す。
もし、万が一、ここが異世界だとすれば、どこかにモンスターが居るかもしれない。
そう思ってしまえるくらいには、そこは、雰囲気満点だった。……ただ、自分の装備のこともあって、その場の雰囲気に酔っているだけかもしれないが。
「ここの光源も苔みたいだな」
ダンジョンっぽい雰囲気の中、僕は篝火が全くないことに少しだけ残念な気持ちになる。何となく、篝火があった方がもっと本格的になるように思えたからだ。
「まぁ、これはこれでありだけど」
ひとまず、この苔が全部剥がれ落ちるようなことでもない限り、光源には困らない。それを考えれば、篝火ではないことは、むしろ良いことなのかもしれない。
「よしっ、まずは探検だなっ!」
本来なら、ここはどこなんだとか、どうしてこんなところにとかいった内容で不安になっても仕方ない状況。にもかかわらず、僕は、むしろやる気に満ち溢れていた。
少なくとも、拘束はされていなかった。監視はされているようだが、動けないわけじゃない。それどころか、武器までもたされている。これならば、多少のことはどうにでもなるだろうと思えた。
コツコツと足音を立てて、僕は通路を眺めていく。変わり映えのしない通路でも、今の僕にとっては面白いものでしかなかった。
ただ……そんな風に通路を見ていたからだろうが、僕は、その時、偶然にもそれを見つけられた。
「ん? これ、何だ?」
それは、ただの引っ掻き傷にしては、少し複雑に見えた。それで、僕は不審に思って近寄ってみたわけだが……。
「……何だよ、これ……」
そこには、同じ内容が繰り返し、刻まれていた。
『助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて――――』
思わず、僕は一歩後ずさる。しかし、そこで、僕はまたしてもいらぬことに気づいてしまう。
「待てよ……これって、まさか……」
周りを良く見て、僕はようやく気づく。そこには、いくつもの引っ掻き傷があることを。そこには、いくつもの、嘆きが描かれていることを。
「……っ」
あまりに異常な、その引っ掻き傷達に、僕は言葉を失う。途端に、この場所が、薄気味悪く、恐ろしい場所のように思えて身震いする。
「なん、なんだ、これは?」
『何で、こんなことに……』
『許して許して許して許して――――』
『帰りたい、帰りたいよぉ』
それらの傷は、恐らく、全て違う人間がつけたものだ。引っ掻き傷の場合、筆跡と呼んで良いのかどうかは分からないが、それが、全て違って見えるのだ。つまりは……。
「これだけの人が、ここに、居た、のか?」
誰かがここに居た痕跡。誰かがここで絶望した痕跡が、ところ狭しと刻まれ続けている。しかし……。
「……でも、あんな高いところ、どうやって……?」
読めはしないものの、随分と高い位置にも、その引っ掻き傷はあった。高さにして、三メートルから五メートルくらいだろうか。どんなに背の高い人間でも、あんな場所にまで引っ掻き傷は残せないはずだった。
「……っ、とにかく、離れなきゃっ」
こんなものが残っている意味は分からない。しかし、こんなものが残っている場所に長く居るのは危険だということくらい、混乱した頭でも理解できた。
僕は、まともに探索もしないままに、元居た場所へと走って逃げ帰った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今回は、ちょっとしたお茶目は、なりを潜めております。
毎回お茶目が過ぎるといけませんしね?
だって、この作品のジャンルはホラーなんですからっ。
『始の書』の時にはなかった壁の文字。
これがどういうものなのかというのは、皆さんの想像にしばらくお任せしましょう。
いずれ、答えは出しますので。
それでは、また!
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