13 / 21
第一章 第一フロア
安全地帯(二)
しおりを挟む
ひとまずは、『冒険の書』の確認を優先させようということで、僕達はまた、『冒険の書』へと視線を落とす。
『第一フロア 地帯区分B
滝野琴音はB地帯へ進行
これより危険地帯
ベンが現れた
滝野透がベンを斬った
ベンは攻撃をかわした
ベンは突進した
滝野琴音は攻撃した
ベンは意識を混濁させた
滝野透はベンを斬った
ベンを倒した
ドロップアイテム 濃厚な水
ベンの特性『仇討ち』発動
これより、時間計測開始
ベンの集合
警告1解除
滝野琴音は2レベルになった
ベンが現れた
ベンが現れた
ベンが現れた
ベンが現れた
――――――
ベンを倒した
滝野琴音は10レベルになった
ドロップアイテム 濃厚な水
第一フロア 地帯区分A
滝野琴音はA地帯へ退却
これより安全地帯 』
と、ここまでがベンとの戦いと今だった。その文章は、『警告1解除』というものが見慣れないだけであって、後はほとんど僕の『冒険の書』と一緒だ。
「この『警告1』って、もしかして?」
「うん、多分、この戦闘か食糧かってやつだよね。解除されて良かった」
どうやら剣で止めを刺さなくとも、戦闘に参加していると判断されたらしい。ここに書かれている『処分』が何か分からない以上、こうして警告が解除されるのはありがたかった。
「あっ、でも、もしかしてアイテム図鑑とか、モンスター図鑑は開示されてないんじゃないか?」
「えっ? ……そう、みたいだね」
特に図鑑が開示されたようなことを書いた文章がなかったため、尋ねてみると、本当に開示されていなかったようだ。もしかしたら、これは、モンスターに止めを刺さなければ開示されないのかもしれない。
「どうしよう……」
「うーん、ひとまずは琴音も剣を持って戦うしかないんじゃないかな?」
「剣……」
そうして琴音が向ける視線の先を辿ると、そこには赤い鞘に入った剣があった。恐らく、僕のものとは色違いなだけだろう。
「私も、戦わなきゃいけない?」
「? そりゃあ、僕だって琴音をずっと守れるとも限らないし、琴音自身が戦う術を身につけてくれた方がありがたいけど」
どこか青ざめているように見える琴音に、僕は自分の考えを述べる。すると……。
「私、怖い……」
琴音は、か細い声でそう呟く。
「琴音……」
そこまで言われて、僕はようやく、剣を持って戦うことが恐ろしいことだという事実を思い出す。これまで無我夢中で戦ってきたものの、本来だったら戦いとは恐ろしいものだ。特に、戦いとは無縁の生活を送ってきた僕達にとって、戦いは忌避すべきものなのだ。
「そう、だよな。怖いよな」
戦いによって高揚していた精神が落ち着くに従って、僕は、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。僕自身はあまり戦いが怖いという気持ちが表れなかったものの、琴音は違う。なら、僕は琴音を守らなければならないのだろう。
「よしっ、分かった。なら、琴音はその剣を持ってるだけで良いよ」
「えっ?」
「その剣はもしもの時の護身用にしておいて、後は僕が琴音を守れば良いだろ?」
本当は、守れる自信なんてない。しかし、そんな弱気なことを言っていてはこの先、琴音を守るなんてできないだろう。
「でも……」
「大丈夫だって、絶対に守ってみせるからさ」
守ってみせる。そう強く思えば叶うのだと、この時は本気で思っていた。
「……うん、分かった。それじゃあ、よろしくね。お兄ちゃん」
「あぁっ」
そうして僕は、地獄への第一歩を、知らず知らずのうちに踏み出すのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
さぁて、琴音ちゃんの弱気な態度に透君は見事に引っ掛かってしまいましたね。
『~始の書~』を読んでいる方は分かると思いますが、この場所は、そんなに甘い場所ではありません。
この先、二人にはそれを身をもって体感してもらうことにしましょう。
それでは、また!
『第一フロア 地帯区分B
滝野琴音はB地帯へ進行
これより危険地帯
ベンが現れた
滝野透がベンを斬った
ベンは攻撃をかわした
ベンは突進した
滝野琴音は攻撃した
ベンは意識を混濁させた
滝野透はベンを斬った
ベンを倒した
ドロップアイテム 濃厚な水
ベンの特性『仇討ち』発動
これより、時間計測開始
ベンの集合
警告1解除
滝野琴音は2レベルになった
ベンが現れた
ベンが現れた
ベンが現れた
ベンが現れた
――――――
ベンを倒した
滝野琴音は10レベルになった
ドロップアイテム 濃厚な水
第一フロア 地帯区分A
滝野琴音はA地帯へ退却
これより安全地帯 』
と、ここまでがベンとの戦いと今だった。その文章は、『警告1解除』というものが見慣れないだけであって、後はほとんど僕の『冒険の書』と一緒だ。
「この『警告1』って、もしかして?」
「うん、多分、この戦闘か食糧かってやつだよね。解除されて良かった」
どうやら剣で止めを刺さなくとも、戦闘に参加していると判断されたらしい。ここに書かれている『処分』が何か分からない以上、こうして警告が解除されるのはありがたかった。
「あっ、でも、もしかしてアイテム図鑑とか、モンスター図鑑は開示されてないんじゃないか?」
「えっ? ……そう、みたいだね」
特に図鑑が開示されたようなことを書いた文章がなかったため、尋ねてみると、本当に開示されていなかったようだ。もしかしたら、これは、モンスターに止めを刺さなければ開示されないのかもしれない。
「どうしよう……」
「うーん、ひとまずは琴音も剣を持って戦うしかないんじゃないかな?」
「剣……」
そうして琴音が向ける視線の先を辿ると、そこには赤い鞘に入った剣があった。恐らく、僕のものとは色違いなだけだろう。
「私も、戦わなきゃいけない?」
「? そりゃあ、僕だって琴音をずっと守れるとも限らないし、琴音自身が戦う術を身につけてくれた方がありがたいけど」
どこか青ざめているように見える琴音に、僕は自分の考えを述べる。すると……。
「私、怖い……」
琴音は、か細い声でそう呟く。
「琴音……」
そこまで言われて、僕はようやく、剣を持って戦うことが恐ろしいことだという事実を思い出す。これまで無我夢中で戦ってきたものの、本来だったら戦いとは恐ろしいものだ。特に、戦いとは無縁の生活を送ってきた僕達にとって、戦いは忌避すべきものなのだ。
「そう、だよな。怖いよな」
戦いによって高揚していた精神が落ち着くに従って、僕は、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。僕自身はあまり戦いが怖いという気持ちが表れなかったものの、琴音は違う。なら、僕は琴音を守らなければならないのだろう。
「よしっ、分かった。なら、琴音はその剣を持ってるだけで良いよ」
「えっ?」
「その剣はもしもの時の護身用にしておいて、後は僕が琴音を守れば良いだろ?」
本当は、守れる自信なんてない。しかし、そんな弱気なことを言っていてはこの先、琴音を守るなんてできないだろう。
「でも……」
「大丈夫だって、絶対に守ってみせるからさ」
守ってみせる。そう強く思えば叶うのだと、この時は本気で思っていた。
「……うん、分かった。それじゃあ、よろしくね。お兄ちゃん」
「あぁっ」
そうして僕は、地獄への第一歩を、知らず知らずのうちに踏み出すのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
さぁて、琴音ちゃんの弱気な態度に透君は見事に引っ掛かってしまいましたね。
『~始の書~』を読んでいる方は分かると思いますが、この場所は、そんなに甘い場所ではありません。
この先、二人にはそれを身をもって体感してもらうことにしましょう。
それでは、また!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる