冒険の書 ~続の書~

星宮歌

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第一章 第一フロア

地帯区分変更

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 僕が怪我をして、琴音が戻って来てから、三日が経った。その間に分かったことといえば、食料になるものが四つあるということ。『水蔦』、『赤い蜜』、『濃厚な水』、『何かの魚の缶詰』がそれだ。
 『赤い蜜』は、人食い花のレアドロップアイテムで、説明はこうなっていた。


『冒険の書

アイテム図鑑

食糧編

2 赤い蜜

一口舐めれば不幸の味

せいぜい悶え苦しむが良いわ!

おーほほほほっ』


 最初、僕はさすがにこれだけは不味いのではないかと思い、食べるのを躊躇った。しかし、表情を失った琴音が食べようとするのを見て、僕は自分が実験台になると申し出た。これ以上、琴音に辛い思いをさせたくない一心だった。そして、食べてみると…………不幸の味の意味が、良く分かった。


「辛ーっ!!」


 指で掬って舐めた瞬間、僕は火を吹いた。いや、もちろん比喩的な意味ではあるが……しばらく悶え苦しんで、『濃厚な水』の臭気をものともせずに三本ほど空けて、ようやく、舌が痺れる状態にまで戻った。きっと、『赤い蜜』の赤みの主成分は唐辛子だろう。

 そうして、まともな食事ができない中、『何かの魚の缶詰』だけは、唯一まともに近かった。いや、開けた瞬間の衝撃は酷かったのだが……。


「じゃあ、開けるよ?」

「うん」


 琴音に確認を取って、恐る恐るその缶詰を開けてみると、そこには…………青い魚の身があった。そう、青い・・身だ。茶色とか白ではなく、青。自然ではあり得ない魚の色。いや、確かに説明には『青魚』と書いてあった。


『アイテム図鑑

食糧編

4 何かの魚の缶詰

ワームのドロップアイテム

何の魚かって?

青魚ってくらいしか分からねぇな

一応腐ってはいないから安心しろ』


 そう、確かに、『青魚・・』で間違いない。ただ、普通は思うだろう。青魚というのは、鯖だとか秋刀魚だとかの背が青いだけの魚だと。まさか、身が青い魚だとは思わない。
 開けた瞬間、僕はエイリアンの肉かと思ったくらいに、衝撃を受けた。しかし、試しに指で摘まんで食べてみると、普通の魚の缶詰と変わらなかった。この魚が何か、という疑問を追究しない限り、おいしく食べられる食料だった。

 そうして、僕達は、『濃厚な水』と『何かの魚の缶詰』で食い繋いだ。適度に戦って体を動かし、レベルを上げながら。


『冒険の書

三日目

第一フロア 地帯区分A

これより、『嘆きの証』の影響により、地帯区分の変更開始

変更完了』


 僕のレベルが二十八、琴音のレベルが三十になったところでの地帯区分の変更。安全地帯はそのまま変更はないようだったが、扉の外はどう変化しているか分からない。ただ道が変わったくらいのものなら良いが、もし、モンスターの種類が変わっていれば、厄介極まりない。


「琴音、今日は「一緒に行く」」


 留守番していてほしいと言おうとすれば、琴音はそれを見越したかのように遮る。この先、どんな危険があるか分からないため、琴音にはこの安全地帯で待っていてほしかったのだが、そうしてくれる様子はない。


「もう二度と、あんな思いをするのはごめんだから」

「そう、か……」


 きっと、琴音は僕が怪我を負ったことを、必要以上に後悔している。琴音のせいなんかではないし、誰にも、どうにもできなかったことなのだとは思うものの、説得しても無駄なことはこの三日で良く分かっていた。無表情のまま、琴音は自分を責め続けた。だから……。


「分かった。それじゃあ、一緒に行こう」


 琴音をこんな風にした状況を変えたくとも、それをする力はない。救助も来ない。そもそも僕達以外の人間とまだ会っていない。そんな状態でできることは、きっと、琴音を不安がらせないために、一緒に居てやることなのだろう。それが、どれだけ危険なことであったとしても、それ以外の選択肢なんてない。


「うん」


 相変わらずの無表情ながらも、声に少しだけ明るさを滲ませて、琴音は返事をする。


「ただし、危険だと思ったら逃げるんだ。いいな?」

「……うん」


 少しの間があったものの、一応言質は取った。後は、危険がないように、細心の注意を払って進むのみ。この、地獄のような場所から抜け出すために、道を切り開くだけだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


今回、ちょっと短いです。

それというのも、少しばかりプロットが詰まってまして……。

設定の整理と、プロットの書き足しのために、一週間ほど更新を停止しようかと思ってます。

そのため、次回は六日の更新になりますので、すみませんが、それまでお待ちください。

それでは、また!
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