ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

文字の大きさ
105 / 342
第四章 竜騎士編

第104話 再び戦場へ

 王様からの使者が来たのは、雨が降りしきる寒い日だった。

「南部にて本格的な蛮族侵攻の兆しあり! アサギリ卿は速やかに戦支度を整え、南部ダーガン平原に向かわれたし! 以上」

 使者はそう言い残すと、雨の中を騎馬で去っていった。

「うわーん! コウがまた戦に行っちゃう!」

 ルーナが泣き崩れている。
 そんなルーナを眺めながら思うのだ。
 え、早くね?
 戦争って3ヶ月に一回じゃないのだろうか。
 前回、戦争に行ってからまだ1ヶ月半くらいしか経ってないのだが。
 夏休み半ばの登校日に嫌々来てみたら、明日から2学期がスタートしますと言われたような気分になる。
 つまり、心の準備が全然出来てない。
 まあ、王様に来いって言われたら行くしかないのだろうが。

「魔族に続いて、今度は蛮族か。いよいよ王国もきな臭くなって来たのう」

 使者が来るのを見て、俺んちに詰め掛けてきたヴァンダレイジジイがそんな事を言っていた。
 ジジイだけじゃなく、この辺に住むほぼ全ての人間が家に集まっていた。
 物凄く息苦しい。

 というか、今度の敵は魔族じゃないのだろうか。
 え、魔族だけでも手一杯っだったんじゃないの??

「王国は南部に住む蛮族とちょいちょい小競り合いをしておってのう。普通は南部国境に詰める騎士団が対応しておるんじゃが、お主にまで声がかかるということは、かなりの大攻勢があるんじゃろう」

 南部の蛮族?
 象に乗ってパオーンと攻めてくるアレだろうか。
 三国志に出てくる。
 どうしよう。
 先日、象さん滑り台を作った身としては、象さんとは戦いたくないんだけど。

「まあ最近、身体が鈍っていた所じゃ。蛮族相手にひと暴れするかのう」

 ヴァンダレイジジイが剣呑な表情を浮かべている。
 なぜ行く気まんまんなのか。
 というか。

「引退したんだし、怪我人なんだから大人しくしてろよ」

「な、なんじゃと!? 貴様ごときが儂を怪我人扱いするのか!?」

 ジジイが気色ばむ。
 本当に怒りっぽいジジイだ。
 ジジイは利き目を欠損している。
 確かに化物みたいに強いが戦場では何が起こるかわからないので不安だ。
 何よりも、もういい年なんだから大人しくしていて欲しい。

「怪我人扱いも何も、怪我人だろうが。……留守を頼みたい。ここでアンやルーナ達を守ってやってくれ」

「……むう。そういう事か。判った。貴様のいない間は、儂がこの村を守ってやるわい」

 ジジイをなんとか丸め込むことに成功した。
 ここにはセレナがいるので、ジジイなんかいなくても問題ないのだが。
 まあ、それは言わぬが花だ。
 ジジイはここで孫娘でも可愛がっている方がいい。

「俺はコウと一緒にいくぞ。子分だからな」

 ピートがそんな事を言った。
 最初からそういう約束だったな。
 弱っちいのが気になるが、ピートは連れて行くか。

「わ、わだじも行ぐ! うう、ぐすっ」

 ドサクサに紛れて、泣きじゃくるルーナが鼻声でそう言ったので、軽くデコピンしておいた。

「あう」

 ルーナは論外だ。
 あれだけ言い聞かせたのに、まだわからないのだろうか。

「アサギリ卿、うちのラッセルも連れて行ってやってくだされ」

 そう言ったのは、ラッセルだった。
 は? ラッセルはお前だろうが。
 自分の事を名前で呼んじゃう萌えキャラでも目指しているのだろうか。
 かなり方向性を見失っている気がするが。

「私はラッセルの父のダウニーです。ラッセルは今、キノコの栽培中です」

「お、おう」

 ホント紛らわしいな。
 ラッセルを連れて行く、か。
 多分ラッセルはピートより弱いので、連れていく意味があんまりない気がするが、まあお父さんがこう言うなら連れて行ってもいいかな。


 そんなわけでピートとラッセルと再び戦争に行くことになった。

 戦の準備とか言われたが、準備することは殆ど無いので、明日の朝には出発することになった。
 王様に行けと言われたダーガン平原は、ここから南に歩いて1週間くらいの距離らしい。
 水は俺の魔法でなんとかするとして、食料はセレナが携帯食料を用意してくれるそうだ。


 その日の夜は、泣きじゃくるルーナをずっと抱きしめていた。

「……ちゃんと帰ってくるから、そんなに泣くなって」

 そう声をかけてみても、ルーナは答えずに俺の胸に顔を押し付けて嗚咽を漏らすだけだった。
 なんかまた追いかけてきそうで、すげえ不安だ。
 大丈夫だろうか。



 出発の朝、皆が見送りに来てくれた。
 ルーナと、セレナにカンナさん、フィリス、ミレイ、メグ、ヴァンダレイジジイとアン、ソフィさん一家、ラッセルズ。
 こうして見ると結構な人数だ。
 確かにもう村と言ってもいいかもしれない。

「まだ全部は出来ていないのだけれど」

 セレナがそう言いながら、自分の血で作った装備を装着させてくれた。
 今回用意してくれたのは、小手、鎧、ブーツの3点だった。
 ほぼフルセットじゃないか。
 今回の装備は、相変わらず真赤だったが、キラキラと輝く鎖帷子とは違って、やや落ち着いた深みのある色合いになっている。
 装甲部分には細かな意匠もついていて、すごくかっこいい。

 鎧の固定具を付けてくれているセレナの手は震えていた。
 そのせいで、鎧の装着が遅々として進まない。

「ご、ごめんなさい。どうしたのかしら」

 声まで震えているセレナを思わず抱きしめてしまった。
 震えているセレナを見ていたら、王都で言われた告白を思い出したのだ。

「……お願い。どうか無事で帰ってきて」

 セレナはそう呟くと涙を流す。
 明るい所で泣いているセレナを見るのは初めてだったが、物凄く綺麗だ。
 そのままセレナとキスをした。

 思わずルーナの目の前なのにセレナとキスしてしまった。
 怒っているだろうか。
 そう思って、ルーナを見ると、ルーナは不安そうな顔をするだけだった。
 泣きはらした真っ赤な目で、俺をじっと見つめている。
 そんなルーナが一歩前に出た。
 そして、顔を引き締めて口を開く。

「あなた」

「お、おう」

 ルーナにあなたとか呼ばれてしまった。
 突然よそ行きルーナになってどうしたんだろうか。

「どうかご武運を。戦場での無事をお祈りしていま……ふえ……」

 結局じわじわ涙を浮かべ始めるルーナ。
 そんなルーナが可愛すぎて、思わず笑いそうになる。
 途中まですげえ妻っぽかったのに。

「ありがとう。よく頑張ったな」

 そう言いながら、ルーナを抱きしめる。

「うん。私はお前の妻だからな。ぐすっ……ちゃんと帰ってきてね」

「わかっている」

 そしてルーナにキスをする。
 よく泣く女だが、可愛くて仕方ない。
 ルーナなりにちゃんと覚悟をしていたようだ。
 今回は追ってこないで待っててくれるだろう。


 さて、他の皆との別れも済ませたし、そろそろ行くか。
 準備万端のピートと、なんかまごついているラッセルを伴って出発した。
感想 20

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
ファンタジー
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?